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わたしの本性がばれるとき。

その人の本性がばれる、とされるシチュエーションがある。

たとえば、大酒を飲んだとき。普段はおとなしくて礼儀正しい人が、大酒を食らった途端に猛虎襲来。おおきな声で騒ぎだし、きたないことばで悪態をつき、はてには脱いだり吐いたり潰れたりの大騒動を巻き起こした挙げ句、「あいつ、ほんとはこういう人間だったのか」と周囲からの信頼を一夜にして失う、若き日のぼくのようなパターンだ。

あるいはハンドルを握った途端に人が変わる、というパターンもよく見る。出過ぎることなく控えめで、無添加ポタージュスープのようにやさしかったあの人が、ハンドルを握ると同時に激辛レッドカレーと化し、舌打ちと悪態とクラクションの魔王に成り果てる、というパターンだ。

ほかにも「飲食店やタクシーで偉そうにする男とは付き合うな」みたいな話は、若いお嬢さん方への恋愛指南としてよく語られるところである。


で、もうひとつ。

これはぼく自身気をつけないといけないなあ、あんまり守れていないなあ、と思うのが「最高潮に忙しいときのふるまい」だ。

たくさんの締切を抱え、さまざまな打ち合わせが入り、諸々の些事が一刻の猶予も許さないくらいの量とスケジュールで入りまくった、つまりは昨年末から来月にかけてのぼくみたいなシチュエーション。

こういうとき人は、八つ当たりというわけでもないだろうけど、常にイライラし、ピリピリし、たとえ怒ったり大声をあげたりがなかったとしても、周囲に無用な緊張をばんばん飛ばす。沈黙ひとつをとっても、ピリピリしている人の沈黙と、のんびりしている人の沈黙は、周囲に与える緊張感がまるで違う。


あれやこれやの人生経験を重ねてきたぼくは、もうお酒で失敗する機会もほとんどなくなった。車は安全運転だし、接客業の方々にはどっちが接客してるのかわからないくらいに低姿勢だ。

でも、「忙しいときのお前が、ほんとうのお前なんだよ。それがお前の本性なんだよ」と言われたら、うーん。かなりかっこわるい人間だなあ。


今月、せっかく阿呆ほど忙しいので、「忙しいときのおれ」を鍛える月間にしてみよう。