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ひさしぶりに『嫌われる勇気』のことを。

書くことが思いつかなかったときがきたら、この話をしようと思っていた。

宣伝のように聞こえもするだろうし、自慢のように聞こえもするだろう。まだその話をしているのかと笑う人だって、少なくないと思う。2013年の本、『嫌われる勇気』の話である。

いま、『嫌われる勇気』は日本国内で180万部となり、続編の『幸せになる勇気』と合わせると230万部となっている。そして海外分がシリーズ累計でたぶん250万部くらい。国内よりも海外のほうが売れている、この種の本としてはかなり異例の存在となっている。

ここにも何度か書いたし、インタビューの場でも幾度となくお話しさせていただいていることなのだけど、この本は最初から「世界」を意識してつくった。世界の人に読まれることを前提に構想を練り、スタイルを考え、原稿を書いていった。なので狙い通りといえば言えるのだけど、正直「世界」は、まったく実感がない。プロモーションで訪れた韓国と台湾については、いくらか読まれている実感があるものの、たとえば世界20カ国以上で翻訳、みたいな話を聞いたたとき、その姿をうまく理解できない自分がいる。


もうひとつ、これはすごいことだなあと他人事のように思ってしまうのが、Amazonにおけるレビュー数だ。

レビュー数が1000を超える本だってめったに見ないのに、2000というのはもう、なにがなんだかわからない(ちなみにぼくのデビュー作である『20歳の自分に受けさせたい文章講義』は現在55レビューだ)。それだけたくさんの人たちに「なにか言いたい!」と思ってもらえたということだろう。


で、思うのだ。


これも何度も書いた(しゃべった)話だと思うけれど、ぼくは岸見一郎先生が書かれた『アドラー心理学入門』という新書を読んだ1999年以来、ずっとこの方とこのテーマで本をつくりたいと思っていた。幾人もの編集者に声をかけ、何度も断られ、少なくとも30冊以上はこの本を配り歩いて、10年以上経ったのち、ようやく『嫌われる勇気』の企画が動き出した。しかも柿内芳文という最高の伴走者とともに。

あの10年間のいろいろを思い出すと、ぼくは2000人を超えるレビュアーさんをぜんぶ足したのと同じか、それ以上に切実な「伝えたい!」を抱えていたのだろうなあ、と思う。売れる売れないとかは、二の次三の次の話で。


いまもいくつか「伝えたい!」の企画というか、人やテーマがぼくのなかにはあって、それはとても幸せなことだ。