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いとしのスライドギター

いわゆるところのスライドギター、つまりボトルネック奏法とかスライド奏法とか呼ばれるものの存在を知ったのは、中学3年生のことだった。まさかあんな弾き方が存在すると思わなかったぼくは、それ以前に聴いたスライドギターの音を、すべて別の奏法、または別の楽器による音だと思っていた。

たとえば、クラプトンの Motherless Children。

ここで 0:33 あたりからぎゅんぎゅんうなるスライドギターを、当初はチョーキングによるぎゅんぎゅんだと思っていて、「さすがスローハンドだぜ!」と聞きかじりの言葉で感激していた。こんな音が出せるのはクラプトンしかいない、なるほど三大ギタリストだ、と。

中学2年のとき、親からエレキギターを買ってもらった金持ちのボンボンに「ギターをやるならこれを聴け」と、ドヤ顔でクリームの「Wheels of Fire」とクラプトンの「461 Ocean Boulevard」を渡したこと、そして後者のことを堂々と「461 オーシャン・ブルーバード」と発音していたことも、いまやなつかしい思い出だ。

ところが中学3年のとき、もっとワケのわからない音に出会い、ぼくはスライドギターの存在を知ることになる。オールマン・ブラザース・バンドの「フィルモアイースト・ライブ」の冒頭を飾る、「Statesboro Blues」だ。

ここで鳴らされるデュアン・オールマンのスライドギター。最初はほんとにどんな楽器による音だかわからなかった。かろうじて思い浮かぶ楽器が、ブルースハープ。でも、それにしては音の伸びがへん。「なんなんだ、この音は!」と、YouTube世代には理解してもらえないであろう苦しみのなか、ぼくはサザン・ロックの奥深く、スワンプ・ロックの泥沼にはまりこんでいくことになる。

だからいまでもスライドの名手は大好きで、やっぱり現役でいちばん盛り上がるのはデレク・トラックスのギターだったりします。

うん、書くことが浮かばないときには音楽の話をしよう。