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その海老は、やがて猫になった。

あるとき、腰を高く生きようと思った。

若いころのぼくを知る人からは「ウソつけっ!」と笑われるかもしれないが、おそらくフリーになってからのぼくは一貫して腰が低かった。社会全体をおおきな体育会系の部活動に見立て、そこでの後輩として生きてきた。ことさらに威張りたい欲もなく、同年代や年少の誰かと遊ぶことより先輩たちと遊ぶほうがたのしく、みんなの後輩であることは居心地がよかった。

しかし30代の半ばに差しかかったころ、だんだん後輩一辺倒で生きることがむずかしくなってきた。年少の方々と仕事する機会も増え、立場的にも技術的にも先輩であることを求められるようになってきた。これまで海老のように腰を屈めて生きてきた俺だけれども、そろそろ少しくらい姿勢を伸ばさねばならんのかなあ。年少者たちとの接点も増やすようにし、必要とあらば助言めいたことを口にするようになった。

そして40代も半ばに差しかかろうとしている現在、ぼくはどうなったか。


猫背である。


つまり、がんばって腰を伸ばしてみたものの、首と背中までは伸びきらない、中途半端でうだつの上がらぬおじさんである。

偉そうな人はいやだし、なりたくないけれど、もうちょっと威厳というか、頼りがいというか、そういうものを持った、背筋の伸びた男になりたいなあ。