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機嫌の悪さ、その正体。

ぷんすかぷん。ご機嫌ななめである。

ぼくの話ではない。二度目の出勤を果たした臆病すぎる三歳児、ぺだるの話である。外から漏れ聞こえる音(ドアが開く音、台車が転がる音、人びとの話し声など)にビクビク反応し、怯えるだけならまだしも、わんわんわんわん、ビーグル特有の野太い声ではげしく吠え立てる。

いったい、なにがそんなに気に食わないのか。

そしてなんなんだ、その反抗的な目は。

と、このまま犬レポートを書き綴ってもしょうがないので、ご機嫌ななめ。

考えてみれば不思議なことばである。機嫌が悪いさまを「ななめ」で表す。おそらく機嫌がよいときは、その線が水平なのだろう。横に伸びているのだろう。だったら対義語として、機嫌が悪いさまは縦線で表すべきではないのか。すなわち、ご機嫌ななめではなく「タテ」。もしくは「まっすぐ」。

しかし、たとえば「ご機嫌まっすぐ」なんてことばはすこぶる機嫌がよさそうだし、機嫌がタテ・直立というのも、のびのびとして気持ちよさそうだ。

そしてはたと気づくのである。

ご機嫌ななめの「ななめ」とは、ベクトルの問題ではなく、その不安定さを表したことばではないのか。そして機嫌の悪さとは、ひとえに不安定さのことではないのか。


いや、語源辞典みたいなものをなにもあたらず書いているだけなので適当にもほどがある気づきなのだけど、「機嫌の悪さは、不安定さ」という考え方は、うちの犬にひどくしっくりくるのである。

おちつけ、三歳児。