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ぎっくり腰と四十肩。

もう10年くらい前のことだろうか。

人生で一度だけ、ぎっくり腰になったことがある。世の中にそういうものがあることは知りながら、とくに気に留めないまま生きていた30代前半のあるとき、突如それが発症した。ぼくのそれはたいそう重症だったようで、救急車で搬送されて数日の入院を要するほどひどいぎっくり腰だった。

ぼくは主治医を問い詰めた。世間では、たくさんのひとがぎっくり腰になっていると聞く。でもこんな痛みをみんなが耐え、それをぎっくり腰のひと言で片づけているとは到底思えない。これはぎっくり腰ではないのではないか。もっと重篤な、ナントカ筋が断裂した的な、おそろしい外傷ではないのか。……主治医の診断は、あくまでもぎっくり腰だった。


さて、そのぎっくり腰が肩を襲ったとしたら、あなたはどう感じるだろうか。

四十肩である。あるいは五十肩である。

先週の木曜、目覚めとともに襲ってきたこの症状。痛みのあり方から診断への疑念まで、あのときのぎっくり腰と瓜二つなのだ。

そういうものがあるとは知っていた。しかし、こんなに痛いものだとは思いもしなかった。中年のぼやきくらいに受け止めていた。腕が上がらない。押したり引いたり持ち上げたりの動作にも激痛が走る。シャンプーしたり、服に袖を通したりするのも決死の覚悟で、日常生活に支障をきたすどころじゃない。そして鍼灸院やカイロプラクティックに行ってみても「典型的な四十肩」と診断される。おかしいじゃないか。みんなこの痛みに耐えて年老いていくなんて、あんまりにもつらいじゃないか。世間の中年たちは、もっと大騒ぎしていいんじゃないか。大騒ぎしたいぞ、おれは。この痛みには。


えー、すみません。しばらくぼくは「痛てっ!」とか「あいたたたっ!」とか絶叫しながら暮らすことになりそうですが、別にかまってほしくてやってるわけではなく、ほんとのほんとに痛いだけなんです。

ああ、年をとるって面倒だなあ。