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お花見の似合うひとたち

「いよいよ花見シーズンの到来です」

このことばを聞いたとき、ぼくらはどんな風景を思い浮かべるだろう? 当然ながら(という前置きが入るのも不思議な話だけど)、そこで見る花は桜であり、ほとんどの場合はソメイヨシノだ。きれいに咲き誇ったコスモス畑のなかに陣取って飲食する、という話はあまり聞かないし、たぶん梅の花で花見をする人も少数だろう。

そして花見ということばからは、ふんぷんたる酒の匂いが漂う。ピクニックということばには、ほどよいファミリー感もあり、あまり酒の匂いがしない。つまり花見とは、いい年をした大人たちの娯楽であり、祭なのだろう。

さらに花見には、無礼講の空気がつきまとう。中秋の名月を愉しむ「月見」には静かで風流な響きがあるのに、花見にそうした風情はない。むしろ、頭にネクタイを巻いた中年男性が一升瓶片手に小躍りするような、「あーあ、できあがっちゃってるよ」の感が漂う。


そんな花見の光景を絵で表現するとしたら、いちばん似合うタッチは浮世絵だろうなあ、と思う。浮世絵に描かれる江戸町人の呑気さ、滑稽さ、可愛らしさは、花見客にそのまま受け継がれている気がするのだ。

ぼくが最後に花見をしたのは、たぶん10年くらい前だなあ。