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あっちの数字よりも、こっちの数字を。

連休前だから、というわけでもないと思うのだけれど。

今週はどうも、ずっとドタバタしていた。会社にいる時間が少なく、あっちに行ったり、こっちに行ったり、また会社に戻ったり、やたら移動が多かった。会社でパソコンに向かうことを基本とするぼくにとって、わりとめずらしい週だったような気がする。

ひとつびとつを思い出してみれば、むずかしい打ち合わせが立て込んでいたわけではない。もっと深刻な事態を想定していたのに、思いのほかスムーズに進んだ打ち合わせがほとんどだった。それでも気忙しく感じてしまうのはやはり、自分の原稿に集中する時間があまり取れなかったことと、結果的に原稿をうまく進められなかったからなのだろう。厳密な締切を設けず、自分のペースでのんびりやっているつもりだったのに、それなりにこころが急いているのかなあ、と思う。


『嫌われる勇気』と『幸せになる勇気』の世界累計部数が、500万部に達したのだそうだ。伝聞調の他人ごとみたいな言い方になってしまうのは、国内分(累計245万部)よりも海外分(累計255万部)のほうが多いからで、超の字がつくほどベストセラー化した韓国や台湾にお招きいただいたりはしたものの、やはり500万部なる数字を前に、現実感を持てないでいる。

もちろん500万部なんてメモリアルな数字を聞くとうれしいし、読んでくださった方々には感謝のことばしかないのだけれど、これがたとえば1000万部になることよりもうれしいのは「時間」だろうなあ、と思う。

これから50年とか100年とかの時間が過ぎていって、ぼくがいなくなったあとにも、どこかの誰かがこの本に触れ、別の誰かにすすめ、熱心になにかを語り合う。確かめようのない未来だとはわかっているものの、そういうことが起こってくれたなら、ほんとうにうれしいだろうなあ。

ぼくの本棚というか、これを書いている仕事机の上にさえ、50年や100年の時間をくぐり抜けてきた本が何冊もあるんだもん。ありえない未来じゃないよ、おれ。