柿内芳文という男。

ぼくの友人に、柿内芳文という男がいる。

ぼくのデビュー作である『20歳の自分に受けさせたい文章講義』、それから『嫌われる勇気』と『幸せになる勇気』の担当編集者だ。たぶん世間的には、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の編集者としてのほうが名が通っているだろうし、ほかにも『99.9%は仮説』『武器としての決断思考』『投資家がお金よりも大切にしていること』『ゼロ』など、代表作を挙げればキリがない、掛け値なしに日本でいちばんの編集者だ。少なくともぼくにとっては。


その彼が先月末から、なんだかよくわかんないことで荒ぶっている。

なんのことだかわからないだろう。

さらになんのことだかわからない。

6月のあたま。都庁? 弁護士? はあ?

3日後。どうやら「バトル」に突入しているらしい。

また3日後。ほんとに探偵的なことやっとるぞ。

これだけ荒ぶり、粘着している理由がそれかい!



……さて、こういうモードに突入したときの柿内芳文は、絶対に敵に回したくない。そして味方につけることも、したくない。

とにかくもう、ひたすら面倒くさいし、しつこいのだ。しかもおそろしいことに彼は、本の編集中に一度はこのモードに突入する。こちらの原稿の一点に、ワケのわからない情熱で執着し、何度も何度も修正を求める。終わってみれば毎回ありがたいかぎりなのだけど、やってる最中にはほんとうに面倒くさい。


ぼくは、すぐれた編集者(おそらくライターやほかの職業でも)は、その行動原理がひと言で要約できるものだと思っている。そのときどきで取り組む対象が異なっても、初期衝動はずっと変わらないものだし、そうした核を持たない人は弱いと思っている。


たとえばぼくの場合、いつも「もったいない!」からすべてがはじまる。

こんなにおもしろいのに、全然知られていない。評価されていない。誤解されている。そうしたもろもろの「もったいない!」に触れたとき、俄然やる気が湧き起こる。これはたしか、以前にも書いた話だ。


そして彼、柿内芳文の場合は「納得いかない!」からすべてがはじまる。

まったくもって器用ではない彼だけど、おそらく現在むんむんに荒ぶっている不動産トラブルとやらも、納得いくところまでやり遂げるのだろう。そしてまた、あらたな「納得いかない!」を見つけ、そのいくつかはコンテンツになっていくのだろう。


自分の行動原理、あるいは家族や友人の行動原理を「ひと言のセリフ」にしてみるって、意外とおもしろいことですよ。

カッキーごめんね、勝手にこんなの書いちゃって。

毒を食らわばサラダで。
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古賀史健

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