フリーランスになる前にやっておくべきこと。

フリーランスで生きるということは、どういうことか。

たぶん、いまフリーランスとして活躍されている方々の多くは、立身出世的なニュアンスでもって会社を辞め、フリーになられたのだと想像する。もう自分はフリーでも食っていける、こんなちいさな会社にいるのは御免だ、フリーになったほうが稼げるしおもしろい仕事ができる。そんな鼻息荒い、準備万端のフリーランサーが多いのだろうと邪推する。

ぼくの場合、まったく違った。会社にしがみつくつもりはなかったものの、自分から辞めようとはぜんぜん思っていなかった。なんといっても、入社からわずか10か月で辞めてしまったのだ。しかも、謹慎期間中にフジロックに行ったことを社長に咎められ、ばかやろう。おれのロックを水割りしようたぁふてえ野郎だ、と。


これは前にも書いた話だっけ。

フリーになって間もないころ、とある航空系クレジットカード会社の社長さんに取材する機会があった。ぼくの苗字から「福岡のひと?」と訊いてきた同郷出身の社長さん。取材はやたらと盛り上がった。帰り際、社長さんは「古賀さんもウチでカードつくってくださいよ。ぼく宛に書類を送ってくれれば審査もささっと通すから」と言ってくれた。おお、そいつはありがたい。貯金がないどころか、前職時代に会社から建て替えてもらっていたパソコン代が借金として残るハイパー貧乏のぼくは、さっそく必要書類を揃えて社長さん宛に送付した。

2週、3週ほど経ってからだろうか。カード会社から封書が送られてきた。

封を開け、はらり床に落ちた真っ白なA4用紙には「大変申し訳ございませんが」と書かれていた。「審査の結果、この度はご成約を見送らせていただくことに」と書かれていた。そして代わりのつもりか嫌味のつもりか、500円分のテレフォンカードが同封されていた。

500円分のテレフォンカードを握りしめ、ぼくは叫んだ。





「ありがてえっ!」



反故や冷遇に憤るよりも先に、自らの不遇を呪うよりも先に、たった500円の、金券ショップに持ち込んで400円ちょっとの粗品に、当時のぼくはよろこんだ。「これ、日本中のカード会社に送ったら、けっこうな稼ぎになるんじゃね?」とさえ思った。

鈍していた。

貧するあまり、鈍しきっていた。


えーとですね、文春オンラインのバックナンバーを読んでいたら、池上彰さんが転職希望者に向けて、

もしフリーランスになろうという人だったら、会社を辞める前にクレジットカードを作っておきましょう。フリーランスが新規にカード会員になるのは難しいことがあるからです。私も辞める直前にカード会員になっておきました

とアドバイスしていたんですよ。それで思い出した、貧鈍トークでした。

出る釘は浮かれる。
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古賀史健

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