いちばんむつかしいコンテンツ

もの書きにとって、いちばんむつかしいコンテンツとはなにか。

ぼくは「人生相談」だと思う。はがきやらメールやらで送られてくる、どこまで本気かわからない、けれどもひょっとしたら極限のところまで思い詰めているかもしれない相談者のことばに向き合い、なんらかの解を与えていく。しかも1対1の手紙ではなく、不特定多数に開かれた場で、エンターテインメントとしてのおもしろさも保たなくてはならない。つまり、相談者の「相談してよかった」と、読者の「読んでよかった」を両立させなければならない。

そこではたぶん、名も知らぬ相談者に「寄り添う」姿勢が大切になるのだと思う。人生の大先輩としてありがたい御教訓を垂れるのではなく、まずは寄り添う。隣の席に座って、同じ方角に目をやり、そこに映る景色をともに眺める。しかるのちに「たしかに世知辛いよのなかだよなあ。ただ、おれにはこんなふうにも思うんだよ」と、しずかにことばを語り出す。上からでもない、正面からでもない、隣の席から、その声を届ける。相当な人生経験を伴った、深刻すぎない、真摯なそのことばを。

という、このうえないほど誠実な態度と律儀さ、そしてアクロバチックな技芸とを求められるコンテンツが、人生相談なのだと思う。

それで、いまいちばんすばらしい人生相談を書ける人といえば、町田康さんを置いて他にないだろう。

先月末に発売された『人生パンク道場』。げらげら笑って、腹からうなって、気がついたら泣いていましたよ、ぼくは。町田さんの人生相談には『人生を救え!』という大傑作もあるのですが、どちらもすばらしいです。

ちなみに本日から、ほぼ日で町田康さんと板尾創路さんの気仙沼大観光旅行、そのテキスト中継がはじまっています。このまじめなおかしみ、ぜひご堪能ください。

郷に入ってはひろみに従え。
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古賀史健

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