図星のような言葉たち。
性格診断テストの常套句に「意外と」という言葉がある。
たとえば、ぼくが性格診断テストを受けたとしよう。結果、「あなたは真面目そうに見えて、意外と能天気な人ですよね」と言われたとしよう。おそらくぼくは「いやあ、まったくそのとおりだよ」と思うだろう。けれども、別の診断テストで「あなたは能天気そうに見えて、意外と真面目な人ですよね」と言われれば、そちらに対しても「いやあ、まったくそのとおりだよ」と思ってしまうだろう。
もちろん、ここから「人間の自己認識なんて、その程度のあやふやなものなんだ」と言ってしまうこともできるけど、少し違う。たとえばの話、なんの前提もなしに「あなたは真面目な人ですね」とか「あなたは能天気な人ですね」と言われても、ぼくも含めた多くの人は反発するはずなのだ。
いったいなぜ、「意外と」に続く言葉は受け入れやすいのか。
世間の人はAだと思ってるけど、ほんとうはBですよね。
最初はAじゃないかと思ってたけど、じっさいのところはBですよね。
これらの当てずっぽうな言葉が真実であるかのように響く背景には、「誰もわたしをわかってくれない」という根深い不信感があるのかもしれない。そして「ようやくわたしをわかってくれようとする人が現れた」という喜びがあるのかもしれない。ほんとに大切なのは「わかってくれようとする態度」なのかもしれない。
あの人はAに見えて、意外とBだ。
このAとBを探す作業は、誰かのことを考えるうえでとっても大切な、一度はやってみるべき思考実験だと思う。