見出し画像

プロってなんだろう?

2014年に起きたこと、考えたことをまとめてみようと思います。

まず、やっぱり大きかったのは『嫌われる勇気』です。2013年の12月に発売して以来、ありがたいことに現在58万部まで版を重ねました。
本日2014年12月31日現在、日本のAmazonで書籍ランキング1位、韓国最大のオンライン書店「YES24」で4位、台湾最大のオンライン書店「博客来」で8位と、一年前には想像していなかったような状態です。

この本は、ただ売れてくれたというだけでなく、これから自分がどんな本をどうつくっていけばいいのか、ひとつの指針を与えてくれたような気がしています。

それとはまったく別に、今年いちばん大きな収穫だったのは「プロとはなにか?」を問いなおすきっかけに恵まれたことでした。

学生時代、たしか大橋巨泉だったと思いますが、プロとアマチュアの違いについて、こんな話をしていました。配達のアルバイトで移動中、高速道路のカーラジオで聞いたことばです。

「アマチュアってのは、好きなことをやるのにお金を払う人のことなんだな。それで、好きなことをやってお金をもらうのが、プロなんだよ。うっしっし」

もちろん、この「うっしっし」はいまテキトーに取って付けた巨泉テンプレートの笑い声ではございますが、うら若き学生時代のぼくは大いに納得し、また歯噛みしました。
以来、社会人になってからも「自分は好きなことをやってお金をもらっているだろうか?」という問い、もっと具体的には「おれは『これ=いまの仕事』が好きなのか?」という問いは頭から離れなかった気がします。

そして今年、あるアニメ映画のクランクインを祝うパーティーに参加させていただく機会がありました。外資系ホテルのきらきらした大広間でおこなわれた、数百人規模の盛大なパーティー。すごいなあ、きれいだなあ、景気いいなあ、ローストビーフだよ、と会場をぶらぶらしているうちに、ふと気がつきます。

「これって、たったひとりの『ペン』からはじまったことなんだよな」

大ヒットしたマンガを原作とするアニメ映画。そのはじまりは、ひとりの作家が、真っ白な紙にペンを落としたところにまで、さかのぼるはずです。
豪奢なシャンデリアのぶら下がる会場で、頭がぐらぐらしました。この会場にいるみんなが、たったひとりのクリエイティブから派生したものを頼りにいま、飯を食っている。酒を飲んでいる。ローストビーフを平らげ、金色の泡が舞うシャンパンをがぶ飲みしている。お給料をもらい、家賃を払っている。
何百万部とか何千万部とかいう数字よりもずっとリアルな、「プロ」の仕事がなせる迫力をそこに見た気がしたのです。

ライターという仕事でいえば、「文章でメシを食うこと」なんて、プロでもなんでもありませんでした。ほんとうのプロなら、「文章で(まわりのひとに)メシを食わすこと」ができるはず。
どれだけ売れたとか、どれだけ稼いだとかじゃなく、その成果物によってどれだけのひとにあたらしい仕事をもたらし、どれだけのひとを豊かにさせることができたか。そういう「プロ」の領域があるんだと、この歳にしてようやく気がつきました。

メシが食えるプロから、メシを食わすプロへ。
来年はちゃんとしたプロになれるよう、初心に戻ってがんばります。

今年も一年、どうもありがとうございました。