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わたしにとってのおまじない。

おまじないのようなことばには、いくつか種類がある。

たとえば、発表会や結婚式のスピーチなどの対処法としてよく語られるのは、手のひらに「人」の字を書いて、それを飲むというおまじないだ。以前、たしか高橋春男さんの4コマ漫画だったと思うが、現役時代の江川卓さんが同じことをして「相手を舐めるな!」と監督に叱られる回があった。そういうネタがネタとして通用するほど、このおまじないは一般的なものなんだろう。

人が「おまじない」を必要とするのは、たいてい弱ったときだ。

ぼくの場合でいうと、仕事が忙しくて切羽詰まったとき、プレッシャーに押しつぶされそうになったとき、それからつい愚痴をこぼしそうになったときに、おまじないを必要とする。

そこで今回、こころが弱り果てた結果、愚痴をこぼしそうになったときに絶大な効果を発揮する、つまんない愚痴なんか出てこなくなる、魔法のおまじないを紹介しよう。



目を閉じて、あのひとの笑顔を思い浮かべながら、こうつぶやくのだ。




グッチ裕三。


言う気が失せる。たははっ、と失笑にも似た声が漏れ、なんだかどうでもよくなってくる。

これまでぼくは、何度となく彼の芸名と笑顔に救われてきた。

そしてきょう、ぼくは三回ほど彼の名を唱えた。