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そんなものはない。けれどもある。

ないのだけれど、あるはずなのだ。

時間の話である。

きょうはかなり綱渡りのスケジュールで生きていて、普通に考えたらここに文章を書いている時間はない。けれどもあると言い聞かせ、いまこれを書いている。盛大に腹を壊してトイレに30分立てこもったと思えば、眠みが頂点に達して30分の仮眠をとったと思えば、しかもそこで1時間寝過ごしちゃったと思えば、いくらでも書く時間はある。

きょうの東京は、しとしと降りの雨だ。髪がくるくるになる日であり、くるくるは髪が細くなった40代男性の悩みである。ないようで、ある。だからこそ厄介なのが、薄毛の頭髪というものだ。

家系的に将来の薄毛が宿命づけられていたぼくは、少しでも薄くなったら潔く丸坊主にしようと心に誓って生きてきた。バーコードなんてぜったいに嫌だったし、わんこそばみたいな塊を載せて居直るパンチョ伊藤さんほどの根性もないように思われた。

ところが、くるくる髪が細くなってきた現在、はたして自分はいつ丸坊主にするのだろうか、と真剣に想像する機会が増えてきた。まだ大丈夫、まだ不自然じゃない、まだバレてない。そんな淡い期待のなかに生きているし、気づかれにくいスタイルを模索しているとさえ言える。たぶん、バーコードのおじさんたちはそうやって取り返しのつかないところまで行っちゃったんだろう。


丸坊主にする決意を固めたとき、ぼくはほんとの大人になれる気がする。