眠れない、眠れない、眠れない。

小学校の頃。
始業式で体育館に集合して、終わって並んでゾロゾロと体育館から出ようとした時でした。
担任から、いきなり腕をつかまれました。
男性の担任だったから、おそらく3~4年生の頃だったと思います。
「どうした?顔色悪いぞ」
「え?」
その後何を聞かれたのかは記憶が曖昧です。
「…昨日眠れなくて」
その言葉を、必死に喉の奥から絞り出したのを覚えています。
怒られる。
そう思って下を向いていると、案の定、担任は厳しい声で何時に寝たのかと聞いてきました。
「寝てない」
「は?」
「昨日は眠れなくて全然寝てない」
担任が息を呑む気配が伝わってきました。
怒られる事はなく、そのまま解放されてほっとしました。

始業式だったその日、私は布団の中で一睡もできずに朝を迎えました。

幼児の頃から、眠れずに明け方を迎える事が何度もありました。
夜中に家族が眠っている顔を眺めながら、羊の数をずっと数えていたのをよく覚えています。

辛かったです。

大人たちは何故か、眠れないと言うと怒りだしました。
早く寝なさい!と頭ごなしに怒鳴られたり。
だから家族が寝静まるまで布団の中でじっと目を閉じて寝たふりをしていました。
寝息が聞こえてくると、そっと起きて窓の外を眺めてみたり。
幼子の目に映る深夜の風景は、スリリングでした。
ちょっと悪いことをしている様な気分でした。

小さな頃から、眠れない事が悩みでした。
子供が眠れないと言っても、大人は信じてくれないんですね。
今思えば夜更かししていると思われていたんでしょう。
そうではなくて。
本当に、布団に入って何時間も眠りにつくことができないのです。
私は小学校の頃は活発な方で、学校でも放課後でも外で思いっきり体を動かして遊んでいました。
多動もあったので、結構な運動量だったと思います。
でも、眠れませんでした。

成長するにつれ、眠れない事が私の大きな悩みになっていきました。

眠くないわけではないのです。
むしろ、一日中ずっと眠気との闘いです。
電車の中や授業中、仕事での移動中、いつもウトウトと舟を漕いでいるような状態です。
夜になって、やっと眠れる、こんなに眠いんだから今日は眠れるはず、と布団に入って数時間。
眠れないまま。

眠れないというのは、眠れる人にとっては信じられないことなんですね。
人に言っても、まともに聞いてもらえませんでした。
同情をひこうとしているように思われていたかもしれません。
眠れないということは自己管理ができてない、という風に決めつけて、冷ややかな言葉を投げてくる人も居ました。

寝付くのには何時間もかかるのですが、一度眠るとずっと眠り続けます。
なので平日は短時間の睡眠で乗りきり、休日に昼夜問わず眠り続けて何とか体をもたしていました。

思春期の頃から大人になるまで、ありとあらゆる方法を試しました。
ハーブティー、運動、体を温める、サプリメント、アロマオイル、照明。
お酒。
お願いだから眠らせて。
祈るように試みたけれど、どれも私の願いを叶えてはくれませんでした。

日常生活にも激しく支障をきたします。
明け方まで眠れず、それから眠れば、朝起きれません。
起きたとしても、短時間の睡眠ではしんどくて動きも悪くなります。
学校は遅刻だらけでした。
就職してから遅刻はなくなりましたが、朝起きれなかったらどうしようと思うとますます眠れなくなり、悩みは深刻になっていきました。

発達障害の事を知ってから。
発達障害だと不眠傾向があることを知りました。
発達障害の診断がついてから、お医者様に眠れないことを必死に訴えて、初めて睡眠導入剤を処方されました。
睡眠導入剤を服薬して、おそらく人生で初めて、毎日寝ようと思ったら普通に眠れる日々を手にいれました。

長かったです。

薬に抵抗がなかったわけではありません。
初めて飲むときには手が震えました。
怖かったです。
毎日薬を飲むようになって、安眠を手にいれてからも。
私は、一生、薬を飲まなければ眠れないままなんだろうか、と悩みました。

でも。
眠れるんだから。

眠れない夜の辛さは私を苦しめてきました。
あんな夜はもういりません。
薬を飲んで済むことならば、それで済ませればいい。

生きてきた中で、眠れていれば手に入れられた事も、いくつかあったと思います。
ADHD のお陰で元々集中困難なのに、不眠でさらに集中力を奪われていました。
眠い。寝たい。すっきり目覚めたい。
いつもボンヤリとした頭でそんなことを思っていました。

私の不眠の原因がなんだったのかは、はっきりわかったわけではありません。
血液検査などでわかることではありませんので。
けれど睡眠導入剤がよく効いているので、発達障害が関係していたのでは、と思っています。
発達障害者は一般の人よりお薬がよく効きます。
刺激に敏感だからです。

発達障害の方が全て眠れないわけではありません。
布団に入ってあっという間に寝てしまう人も居ます。
多動で、ずっと動き回っているのにいきなりスイッチが切れる様に寝落ちしてしまうADHD 当事者も多いです。

眠れない発達障害の方がいらっしゃったら。

先ず、お酒で解決しようとしないこと。
お酒で安眠はありません。
飲めば飲むほど眠りが浅くなり、すっきりとした目覚めは程遠くなります。

耐えきれずにお薬に頼ろうとしている方がいらっしゃったら。
止めないであげてほしいと思います。
少しのお薬で得られる安眠を、安易な思い込みで奪ってはなりません。

眠れない夜の苦しさは、眠れる方にはわからないと思います。
わからない方が眠れない苦しさを抱えている方から安眠を奪わないでください。

私は、一生お薬に頼っても構わないと思っています。
眠れるのですから。

お薬に対する恐怖心はよくわかります。
何故怖いのでしょうか?
オバケと一緒です。わからないものは怖いものです。
怖ければ、徹底的に調べましょう。
納得がいくまで、お医者様や薬剤師さんに質問しましょう。
そうすればわかるはずです。
お薬は医師の処方通りに飲んでいれば、危険なものではありません。
処方箋が無いものを体にいれる方が、よほど危険です。

健康維持の為に、サプリメントを飲む方はよく居ますね。
風邪をひけば風邪薬を飲みますよね。頭が痛ければ頭痛薬を。足が痛ければ湿布を貼ります。かゆければ、かゆみ止めを塗ります。

眠れなければ、睡眠導入剤を飲みます。
それだけのことです。

眠れない夜を過ごす方が、一人でも居なくなります様に。
ひとりで淋しさを抱えながら朝を迎える長い時間が、発達障害の方からなくなります様に。
心から願います。

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