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独りで子育てしながら会社経営しているのはバケモノか

 最近、井田さんの組織論聞きかせてほしいんだよね、と言われることが多い。たいていのことは、立派な人たちがわかりやすく本にまとめてくれているし、私なんて日々もがきながら過ごしているだけで、答えを持って進んでいるわけではない。何か書いてみようとnoteを開いても、どうも筆が進まないでいた。でも、妹のような可愛い後輩たちが悩んでいる姿を見て、身近な私の声だから聴けることもあるかもしれない、と思った。そして、こうして書いてみることが自分のためにも、これからのいただきますカンパニーのためにもなる気がした。有人日本最南端の波照間島からお招きいただき、たった2時間の講演のために3泊の出張という贅沢な時間が私に与えられた。この旅の間、彼女たちに向けて語りかけるつもりで、独りで子育てしながら7年間会社経営をしてきた軌跡を、思い出しながら書き留めてみようと思う。

いただきますカンパニー
代表取締役 井田芙美子
2012年創業(2013年株式会社化)
日本で初めての農業専門ガイド業
従業員 正社員3名、アルバイト5名、契約ガイド約20名

会社ページはこちら https://www.itadakimasu-company.com/
起業の経緯はこちら http://www.agri-tourism-hokkaido.com/#!story1/c4p

独りで子育てしながら会社経営してるなんてバケモだ

 友人に言われた。
 負けず嫌いで、好奇心旺盛で、行動力はあり、意外に理論派、あとは笑顔は最強だと思っている、それが私の特徴だ。35歳までは、体力もあった。

 高校時代のあだ名は”鉄人”だった。センスはないけれど根性だけはあったので、ソフトテニス部の部長を務め全国大会に進出した。1回戦敗退だったけれど、良い思い出だ。夏休みまで朝から晩まで部活に明け暮れていたので、その後ものすごい集中力で勉強し、D判定だった第一希望の大学に現役合格した。まぁ確かに”バケモノ”の素質は充分にあると言える。

 そんな私が、打ちひしがれるほどの壁にぶち当たったのは、育児休業を明けて職場復帰した時だった。子育てしながら働くということがなぜこんなに苦しいのか、なぜ母親ばかりが負担しなければならないのか、もっと仕事がしたいし、私はもっとできるのに、それがあまりに思い通りにいかなかった。職場に対して、社会に対して、当時の夫(2012年に離婚)に対して、憤りでいっぱいだった。今思えば私にも問題はあった気がするが、初めての育児に気力体力を消耗している26歳の新米ママにそれ以上を求めるのは酷な状況だったと思う。

 ふたつめの壁が現れたのは、次女が生まれた2回目の育休中のことだ。長女の時は4か月で職場復帰して、子どもと向き合う暇もなかったから、いきなり0才と2才を抱えることになり途方に暮れたのだ。思い通りにならず、二度目に手をあげた時に、ふと我に返り、このままではいけないと、必死の思いでアドラー心理学を学んだ。

 どこかでバケモノを自負していた私だったが、独りでは何もできない人間だということを思い知らされた。

子育てを通じた挫折経験が、私の経営者としての基盤になった。

 このふたつの経験の後、私は自分で起業することにした。私が31歳、子どもは3歳と5歳だった。その時に心に決めていたことが、ふたつある。

自分がいなくても仕事が回る仕組みにする

 母親になる前の私は、”自分が一番”だった。全てのことは自分中心に回っていてほしいし、自分が一番デキると思っていた。全て自分の思い通りにならなければ気が済まなかった。なんて嫌な女だろう(笑)

 でも子育てしていると、想定外のことばかりが起こる。業務スケジュールなどお構いなしに子どもは熱を出すし、保育園や小学校の行事と仕事が重なることだってある。仕事も子どももどっちも大切だからこそ、私じゃなくても仕事が成立する仕組みを作ろうと心に決めていた。そうしたら、私は正々堂々とお迎え時間に退社し、参観日にも行けるわけだ。

 そう、何よりも自分のために。
 できるだけ、属人的なものを排除し、仕組み化できるように努力すると決めた。

誰もが働ける会社を創る

  子育てを通して学んだのは、”仕事の楽しさ”だ。2年間専業主婦をして引きこもっていた時、会話もすることなく1日が過ぎる日々にうつ状態になっていた。そんな時に、パソコン入力の内職をもらった。子どもが眠った合間にテープ起こしをしていく。単調な作業だったが、誰かの役に立っている喜び、そして少しだけれど自分で自由に使えるお金が生み出せることに、言いようのない喜びを感じた。

 それまで私は働くことは社会人として当然のことと思っていただけで、それ自体が楽しみだなんて考えたことがなかった。子育て中の女性、転勤族の家庭の女性、定年退職した人生の先輩たち…。素晴らしい能力や経験があっても、様々な事情で働けない人が、何とたくさんいることか。視点が変わって社会を見渡すと、原石がゴロゴロしているように見えた。

 働く喜びを知っている人たちと一緒に、新しい価値を作っていきたい。

 そう思っていたから、始めた当初から、地域の人を畑ガイドとして養成し活躍してもらう仕組みにするのだと思い描いていた。今では、元農協職員、元農業改良普及員、元新聞記者、元小学校の先生、料理好きな主婦、転勤族の母親…多様な人材が活き活きと働いている。

 さて、羽田空港での休憩時間もそろそろ終了。
 夏休みのウキウキした家族でいっぱいの中、ひとり楽しくPCに向かっている。さて、続きは石垣島で^^


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 飛行機に乗ったので追記。

 自分ではバケモノではなく、独りでは何もできない、ただの人間だと思っているというのが回答。何ものでもないから、どう考えても大変だということをどう実現できるか、色んな工夫をし続けている。自己分析して仮説を立てて、トライアンドエラーを繰り返しているだけだ。もしかしたら、その結果を見て、人はバケモノだと思うのかもしれない。

 それが正解かわからないのだけれど、その試行錯誤の様子が誰かの参考になると信じて、書き進めてみようと思う。

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