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夜明けの香港を散歩した話

6:00am
私は香港の街に降り立った。


まだうっすらと月が残っている。
しかし空はもう薄橙色に色付いており、あと数分もすれば、夜の気配は完全に消えるだろう。

鼻腔を掠める香辛料の匂い、目に飛び込む漢字だらけの特大看板、近未来的な高層ビルに「異国にきた」と、はやる気持ちが抑えられない。

これから始まるのだ、私の10日間の旅が。

****
12時間ほど前まで、会社にいた。

仕事納めの今日は、すでに気持ちが年末モードな人と仕事が無事納められるか殺気モードな人で分かれている。私は後者だった。

それでも今日は、今日は、必ず定時で上がる、という強い意志を持って仕事に全集中する。だって今日の夜のフライトで香港に行くのですもの。

実際は1時間ほど残業し、急いで帰宅し、10日間の荷物をリュックサックに詰め込み、熱いシャワーを浴びて、家を出る。羽田空港に着き、保安検査上を抜けて出発ロビーの近くの椅子に腰かけるとなんだかや〜っと一息つけた気がする。

はぁー、無事仕事納めできてよかった…
2023年も1年頑張ったぁ…

今年1年の辛かったこと、頑張ったことが走馬灯のように走る。大体仕事関係。なんだかしみじみと溢れる何かを噛み締めながら飛行機の窓から小さくなる東京の灯りを眺める。

暫しさようなら、東京


社会人になってから自由に旅ができない。
特に私の業界職種は休みが取りづらいので、長期休みで海外に行ける機会はゴールデンウィークと年末年始だ。

社会人1年目はその事実に絶望したけど、最近はそれも悪くはないな、と思えるようになった。

【理由1】普段頑張ってるんだから、旅行のときぐらい贅沢してもいいよね。


自他共に認めるケチ女の私は日々の生活を切り詰めている。国産牛ではなく、海外牛。むしろ牛は買わずチキンと豚が食卓のメインで、果物は贅沢品。それでも、旅行のときは、せっかくの旅行なんだから!を免罪符に食べたいものを食べ、行きたい場所に行く。抑圧された分、超楽しい。

【理由2】年に2回しかない長期休み。しっかり楽しむ。めちゃくちゃ楽しむ。

そう、2回しかない!2回しかないのだ!
その限られた貴重な機会をどこ行くかすごく考える。そして予約したあとは旅行を楽しみに仕事頑張る。大学時代、ここ航空券安いから行こう、と軽い気持ちで旅先を選んでいたときより私は断然楽しんでるし、一つ一つの思い出が濃い気がする。貴重な分、超楽しい!

【理由3】つい数時間前まで仕事をしていたのに、異国にいる!と言う高揚感。

これが1番クる。今私ビーチにいるけど、あれ……数時間前まで無機質な事務所で仕事してたよね?夢…?あれこれって現実…?
労働と楽園の温度差にバグる、あの感覚が堪らない。バグって、大量のドパミンが放出されているに違いない。飛行技術発展のおかげで、私のような煩悩ありまくりの凡人でも解脱を可能にしたのだ!現実苦しい分、超楽しい!(半泣き)


前置きが長くなったが、こんな感じで私の2023年から2024年にかけて年末年始10日間の旅がはじまった。

そして今、まさに、ここ香港で私は
「あれさっきまで殺伐としたデスクにいたのに、ここはドコ?私はダレ?」的なトランス状態にいるのである。

変哲のない、人々の日常の延長線にある街が好きだ


香港に降り立つのは2度目だった。
はじめては学生時代。熱くて、煌びやかなネオンの街、香港。香港の記憶は常に夜だった。あの時はだいたい深酒していたし、あまりにも暑かったので、夜が活動のメインだった。

そのため、早朝の香港は初めて降りた地のようだ。

まず静かで人がいない。がらんとしている街と密集した高層ビルのコントラストがチグハグだ。路面店はシャッターを下ろし、鳥の鳴き声まで聞こえる。平和だ。奥運駅から旺角まで歩こうと思う。旺角は有名な女人街やショッピングモールがある繁華街。でもまだ眠っているようだ。

まだ眠りかけの香港。朝と夜で全く違う顔


リュックサックには10日分の荷物を背負っているのに身体が軽い。何故かと思ったが、日本のような突き刺すような寒さがないことに気がつく。日本の冬は外を歩くだけで身が縮こまり、肩が凝る。香港の年末は寒がりの私でもセーター1枚で歩けるほど暖かく、快適な気温だった。ああもう香港住みたい…。

それにしても香港は歩いているだけで楽しい。
元々あった建物を土台に増築…、増築と言っていいのか分からないが、全く違う建物を重ねて、上に上に高くしたような建物や細いのに高すぎる、地震大国・日本では実現し得ない建物ばかりで新鮮だ。

テトリスの終盤のように重なった建物


そろそろ朝食を食べたい。
こういう朝はお粥がいい。うんと出汁が効いてて体に染みるやつ。


もう7時になるが、意外なことにまだオープンしていない店が多い。勝手に香港の朝は早いイメージがあった。香港人は共働きが多く、朝は外食が多いと聞いたことがあったからだ。以前台湾や上海に行った時は歩いていると鹹豆漿(豆乳揚げパン)や蛋餅(もちもち卵クレープ)を至る所で見つけられた。当たり前だが、香港は中国とも台湾とも全然違う。

いくつか事前に調べていたお粥屋さんでオープンしている【妹記生滾粥品】に行くことにした。

うん、いい。市場の中に簡易的なプラスチックの椅子と銀のテーブルだけあって、気取りすぎていない。日本人観光客も行くみたいだがちょっと妖しい見たことない食材を売っているのも観光客に寄りすぎてなくていい。程よくローカル。Googleレビューに載せてある写真をみてほくそ笑む。

妹記生滾粥品は【九龍城街市及熟食中心】という市場の3階にあるようだ。

漢字でなんとなく旨いものが集まった市場なんだと想像して、足が進む。

市場に着くと、まだやっていない店も多い。不安になりながらエスカレーターで3階に上がると、すぐにお粥屋が見つかった。

まだオープンしたてだからか席もガラガラだ。
特にお店の方から声掛けや案内はないので、勝手に座って、こちらからメニューを指差し、注文する。50代ぐらいのベテランっぽい女性は無愛想に頷くと厨房に方に広東語を投げたので注文は通ったようだ。

暫く待つと、お粥が運ばれてきた。
熱々だ。器いっぱいに注がれており、大ボリューム。湯気の中から大小様々な白身魚の身が入っている。米粒が蕩けてドロっとしたスープをレンゲで掬い、ふーふーと息を吹きかけながら口に運ぶ。

うん、染みるぅー!
魚の出汁が効いており、やさしい味。生姜も入っており、温まる。

夢中になって、ふーふーとぱくぱくを繰り返す。

魚の白身は大きな骨ごと入っており、身と脂がしっかり付いている。旨い。
途中、卓上の醤油と胡椒を追加して味変。優しい味が醤油でグッと締まってこれはこれで良い。

食べ終わって周りをみるといつの間にから満席になっていた。

大満足。
ご馳走様でした。


しかし思った以上にお腹がいっぱいだ。
ワンタン麺や飲茶も食べたいし、鴛鴦茶も飲みたいのに。

ああ、時間がない。胃袋も足りない。
あと香港には6時間しか入られないのに…。

実は、今回の旅の目的地はインドだ。
私は乗り継ぎの経由地として香港にいるにすぎない.

そのため、6時間後には香港空港に戻らないと。

さあ、次はどこに行こうか。
まだまだ行きたい場所、食べたいものはたくさんある。

【次回に続く】

※肝心なお粥の写真がありません。涙
お腹が空いたときに食べ物を目にすると全てを忘れ、食にがっつくのは私の悪い癖です。でもGoogleマップレビューにたくさん食事や店の雰囲気がわかる画像が貼られています⭐︎

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