無事に旅を終える、おまじない🪄
旅に出るとき、私はちょっぴり死を覚悟する。
別に治安の悪い地域に行くわけではないし、
危ないことをするつもりももちろんない。
だけど、例えば交通事故に巻き込まれるとか
変な人に突然襲われるとか
階段から転げ落ちるとか
何が起きるか分からないのが旅だ。
それはもちろん日常でも起こりうることではあるんだけど、普段から死なんて重いものと向き合っていたらぺったんこになってしまう。
だからぐっと鍵付き箱に閉じ込めていた恐怖を旅に出るときだけそっと取り出す。
今回も無事に戻ることができますように。
そうお祈りしながらバックパックに荷物を詰めていく。
それが私なりの死への向き合い方であり、この習慣がお守りのようになって、毎回無事に家に帰れている気もする。
今日、私は羽田空港発の深夜便でホーチミンに行く。
数時間後にはこんな感傷的な私は吹っ飛んでフォーを勢いよく啜っているだろう。
11月、すっかり肌寒くなった夜風を浴びながら、慣れ親しんだ街を離れていく。たった1週間にも満たないお別れなのに、なんだか感傷的すぎる気はするが、短くても別れは別れだ。
一方で帰宅する人の流れに逆行しながら深夜に大きな荷物を抱えて駅へ向かうのはなんだか夜逃げみたいでワクワクしている自分もいて、感情がどっちつかずでもある。
最寄駅で飛び乗った電車はガラガラだったけど、羽田空港に近づくにつれてスーツケースを持った同志たちが増えていく。
空港に着く頃にはこれから始まる旅へのワクワクがだいぶ強くなっていた。
羽田は深夜でも人が多く、明るい。
眠らない街よりよっぽど眠らない。朝とか夜とかの概念が薄い場所は、常に旅人たちを迎え入れ、そして送り出している。
チェックイン、入国審査と着々と進み、もう出発だ。搭乗口ゲートに着くとなんだか安心する。あとはもう飛行機に乗るだけだ。
座席に着き、家族に行ってきますと連絡して携帯を機内モードに。きっと「楽しんでね」と「無事に帰ってきてね」の返信があると思うがそれを読む頃にはきっと無事ベトナムで朝を迎えている。
小さくなっていく日本を見つめながら
機窓より祈りを込めて。行ってきます。
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