大相撲、令和3年初場所を前に。

1月10日からの大相撲初場所が始まる。
一年の最初の本場所は毎年の様に、いや昔から、大きなインパクトを放つような出来事が起きていると感じるのは自分だけではないだろう。

振り返ると、初優勝の記憶が多い。
昨年の徳勝龍をはじめ、4年前には稀勢の里、さらにその前年には琴奨菊が初めての賜杯を手にしている。他にも鮮明に思い出すのが1992年、貴花田の初優勝も年明けの初場所だった。巨漢・曙との優勝争いとなり、ライバルとしてのストーリーの始まり、さらには大相撲の新時代の到来を確信させる場所となった。
初の幕内最高優勝だけでなく、幕尻や日本出身力士として久しぶりの優勝など、それぞれにドラマがあり、土俵上の歓喜が脳裏に焼き付いている。個人的に、毎年の様に1月の両国国技館に観戦に訪れていたこともあり、やはり初場所は思い入れが強い。真冬であることから、テレビの前に座ることが多いことも、関係しているのかもしれない。

また今回は、大関・貴景勝の綱取りが懸かるほか、番付上位陣の話題も豊富だ。
今場所の結果如何では進退が問われるのが両横綱、白鵬と鶴竜だ。昨年は休場が続き、今場所は土俵に上がり、最後まで相撲を取り切ることが求められている。共に、故障を抱え、未だ出場が不透明であるものの、果たして、万全の状態で初日の土俵に立てるのだろうか。

さらに大関陣でも大きな注目を集めるのは、こちらも休場明けでありカド番で迎える朝乃山、正代の二人。特に正代は大関最初の場所で、自身初の休場という結果に終わっている。今場所への想いは想像に難くない。期待されながらも、昨年は優勝の無かった朝乃山と共に、再び、主役の座に戻ることが出来るだろうか。

だが、2021年の初場所は土俵上以前に、ここにきて開催自体が危ぶまれている。首都圏1都3県からの緊急事態宣言発出の要請により、10日の初日を前に様々な選択が考えられる状況を迎えている。芝田山広報部長は私見として「無観客開催というやり方もあり得る」と話している他、昨年の夏場所が緊急事態宣言延長の影響で中止していたこともあり、同じく宣言発出となると、直前とはいえ同様の措置の可能性は小さくはないだろう。

さらに新型コロナウイルスの脅威は、直接、力士たちを襲った。
荒汐部屋は12人の集団感染が確認されており、幕内力士・若隆景をはじめ、感染判明の力士の出場は厳しい状況とみられている。

多くの力士の初優勝など、輝かしいドラマが生まれてきた、1月場所。困難に直面しながらも、令和3年の大相撲が無事に幕を開け、力士たちの力を込めたぶつかり合いが土俵上で繰り広げられることを願ってやまない。(佐藤文孝)

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