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みんなの小説講座

中高生から始める小説講座
アキツフミヤ著


 「第1回」
 小説を書いてみたい。でも、書き方がわからない。

 小説の書き方って、学校では教えてくれませんよね。だから、どう書いていいのか分からず、書くことをためらっている人も多いかと思います。
 頭の中には素晴らしいストーリーがあるのに、文章力がないので小説にできない。そんな人が大勢いるはずです。

 中には、自己流で書いている人も多いことでしょう。でも、それだと、いつまで経っても上達しないどころか、悪化するばかりです。
 最悪なのは、こんなケースです。自己流で書いた作品を『新人賞』に応募したが『一次選考』さえ通過できなかった。なので、書くことを諦めてしまった。

 今、プロとして活躍されている作家さんたちは、まず、小説を書く講座を何年も受講して、基礎から書き方を学んだはずです。その後、何度も小説雑誌の『新人賞』に応募して、ようやく受賞し、何とかデビューできたという感じでしょうか。
 さらに、新人の内は、編集者から何度も書き直しを命じられて、鍛えられたからこそ、今の地位があるのです。

 次のデータを見て下さい。
 

新人賞の応募者数

 2022年『オール読物』新人賞
 応募者数 827 名
 受賞者 1名。19歳の大学生

 2022年『江戸川乱歩賞』 
 応募者数    365名
 一次選考通過者  69名 
 二次選考通過者  21名
 最終候補者    4名
 受賞者 1名。23歳の女性

*ライトノベルの新人賞

 電撃小説大賞(第30回)
 応募者数    4467名
 一次選考通過者  190名
二次選考通過者  95名
 三次選考通過者  40名
 最終候補者    10名
 (受賞者)
 大賞  2名
 金賞  1名
 メディアワークス文庫賞 1名
 銀賞  2名
 選考委員奨励賞 3名

 小説の『新人賞』の中で最も注目を集めている「江戸川乱歩賞」ですが、応募者数に対して『一次選考』『二次選考』『最終候補』と進むにつれて、人数が極端に減っていくのが分かると思います。
 
 受賞者の年齢を見て下さい。『オール読物』の場合、19歳の大学生、『江戸川乱歩賞』の場合、23歳の女性と、どちらも若いですよね。気づいている人もいると思いますが、小説の『新人賞』には年齢制限があります。

 ライトノベルの『新人賞』だと、応募者が桁違いに多いのが見て取れます。
 こちらも『一次選考』『二次選考』『三次選考』と進むうちに通過者が激減しているのが分かります。
 この原因は、応募者の多くが若者(大半が学生)で、自己流で小説を書いているからだと考えられます。ラノベは簡単に書けると思って、見よう見まねで書いて応募している人が大多数なのでしょう。  
 これで、お分かりだと思いますが、小説の書き方を学ばずに小説を書いても『一次選考』さえ通過できないのが現状です。
      
 逆に言えば、自分には小説なんて書けないと思い込んでいる人も、ちゃんと勉強さえすれば、小説家になれる可能性は高いと思います。特に、読書やアニメ鑑賞が趣味だという人は、面白い小説・マンガ・アニメを多く読んだり観たりしているはずなので、書き方さえマスターすれば上達も早いでしょう。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  

 まあ、小説を書くのは楽しいので、勉強や仕事の合間、最初は趣味として始めてみましょう。ハマること間違いなしです。
 学生なら国語・現代国語の成績が飛躍的にアップしますので、たとえ小説家になれなくても損することはありません。

 面白いストーリーを思いつかないので小説なんて書けないよ、と思っている人も安心して下さい。この『みんなの小説講座』では『ダメな例文』(まだ小説とは呼べないような文章)を、ちゃんとした小説の文章に書き直す、という方法で学んでいきます。
 つまり、物語の設定・人物設定・あらすじは、すでに用意してあるので、それを基に『ダメな例文』の書き直しをするだけです。

 この『みんなの小説講座』は、中学生・高校生の内から小説の書き方を学んで、大学を卒業するまでに、文芸雑誌などの『新人賞』を獲ってデビューしましょうというプロジェクトです。
その理由は、学生が最も『新人賞』を獲りやすいからです。社会人になると忙し過ぎて、小説を書く余裕なんてなくなります。

 もうひとつの理由は、出版社は、なるべく若い人を採用したいと思っているからです。 
 文章が未熟で『新人賞』が獲れなくても、作者が若くてユニークな発想の持ち主ならば、編集者の目に留まる可能性があります。さらに、伸びしろがあると判断されたら、編集者がデビューに向けて指導してくれます。
 上記のように、2つの『新人賞』の受賞者は、19歳の大学生と23歳の女性です。中学生・高校生から小説を書く勉強を始めなければ、この年齢で『新人賞』を受賞するのは無理だと思います。

 皆さんの実力は、二段階に分けてみました。

 初心者
 まだ小説を書いたことがない人。または、どこかの『新人賞』に応募したが『一次選考』を通過できなかった人。
 目標は『一次選考』を突破することです。これって、かなり難しいので、まずは基礎をしっかり学びましょう。

中級者
 文芸雑誌の『新人賞』に応募すると、いつも『一次選考』は通過できるけど、どうしても『最終選考』まで辿り着けないという人。
 目標は『最終選考』に残って、編集者の指導を受けられるようになることです。

この講座での学習方法
 
 小説を書くためには『文章力』と『ストーリー力』を極限まで鍛える必要があります。
 マンガに例えると『文章力』は『画力』で、『ストーリー力』は、そのまま同じモノだと思って下さい。どちらも重要なのは明白ですよね。 

 文章力とは 
 小説の文章は「描写」「セリフ」「説明」の3つから成っています。 
 作文や小論文は「事実の説明」と「作者の意見」だけですよね。なので、特に「描写」と「セリフ」に力を入れて勉強するようにしましょう。この二つは学校では教えてくれませんので、この講座でしっかり身に付けて下さい。

 ストーリー力とは
 「発想」「構成」「仮のあらすじを考える」「仮のあらすじに沿って物語を細分化する」などです。

 まずは「発想」です。どんな話なのかを決めます。なるべく他の人が書いていないような分野を開拓するべきです。今、流行っているような話を書いても、編集者の目に留まることはないでしょう。
 『新人賞』の意味を考えて下さい。何か新しさを感じさせるような作品に与えられる賞です。「今はこれが人気なのか。そうすると、次に来るのは、これかな」と未来を予想して物語を作るように心掛けましょう。
 初心者は基本を学ぶことに力を入れるべきですが、中級者になったら、まだ他の人が書いていないような分野を開拓すること(つまり、発想)にも力を入れるべきです。

 小説やマンガを読んでいて「ああ、自分も同じような話を作品にしたいと思っていたのに、先にやられた。しかも自分より上手い」と、悔しい思いをしたことはないでしょうか。特に、アニメとかを見ていると、私は、よくそう思うのですが、皆さんはどうですか?
 いいアイデアを思いついたら、すぐに小説にできるように、日頃から『文章力』と『ストーリー力』を鍛えておきましょう。
  
 アニメや映画などを見ていると、話が時系列に進んでいくわけではないことに気づくと思います。現在のシーンに、過去のシーンが出てきたりしますよね。シナリオ用語ですが、長いモノだと「回想」一瞬だと「フラッシュ」と呼びます。
 物語をどこから語り始めるのか、次は、どのシーンを書くのか、最後はどこで終わるか、などを決めるのが「構成」です。この「構成」を上手く使えるようになると、読者を「あっ!」と言わせたり、感動させたりすることができます。

 ストーリーは「細かいシーン」が集まって出来ています。さらに、そのシーンも、ひとつのカット、さらに、ひとつの「セリフ」や「動作」に分けることができます。
 ドラマやアニメなどを見ているときに面白いと感じたり、感動するのは、登場人物のひとつの「セリフ」とか「動作」ですよね。この細部をいかに上手く書けるかで、作者の力量を計ることができます。「小説の神は細部に宿る」と言いますが、まさに、そうだと思います。

 「仮のあらすじ」って何だ、と思った人がいると思います。
 『新人賞』(特に長編物の場合)に応募するときに「あらすじ」を付けて下さい、と書いてある場合があります。
 この場合の「あらすじ」とは、小説をすべて書き終えてから書くモノです。作品のストーリーを正確に、最初から結末まで、しっかり書かなければなりません。 これも採点に含まれますので手を抜かないで書きましょう。

 それに対して「仮のあらすじ」とは、物語を書く前に、こんな感じの話を書きたいと、前もって作った仮のストーリーです。ですので、箇条書きやメモ程度でも構いません。
 本文を書いていく内に「仮のあらすじ」から話が逸れてしまうことがあります。その場合は、より面白い方へと進めましょう。
 何の手がかりもなく小説を書き始めるのは不安ですよね。登場人物の設定、時代、場所などの決めた後、大体、こんな風に物語が進んでいくということをラフに決めておきます。これが「仮のあらすじ」です。

 『みんなの小説講座』では「仮のあらすじ」は、こちらで用意しています。 人物設定、時代設定なども決めています。つまり、同じ話を私と一緒に書いて行く訳です。
 そして、私が書いた作品と自分が書いた作品と読み比べて、自分で自分の弱点を見つける。次に書くときは、この点に注意して書くようにする。これを繰り返すことで自然と書き方が身につくはずです。
 この講座は一年間続けるつもりです。毎月、同じ作品の続きを書いていきます。

 小説講座の講師に添削してもらうと、提出した課題がボロクソにけなされて返ってくるので、初心者は絶望感に打ちひしがれてしまいます。でも、自分で採点するとなると気が楽ですよね。
 自分に足りないモノ、負けている点などを見つけて強化するようにして下さい。

 ただ、小説には正解がありません。同じあらすじから作品を書いても、作者によって文章、セリフ、細かいシーンなども違ってくるのが当然です。細かな部分が違っても問題ではありません。小説として、上手く、面白く書けているかどうかです。
 
 ですので、このレベル以上で書かなければいけないのだと思って下さい。私の書いた作品が一定の基準となる感じです。
 自分の方が上だな、アキツ フミヤなんて大したことない、と感じるようになったら卒業です。そのレベルになったら、恋愛小説、推理小説、歴史小説小説、SF小説など、自分の書きたい作品をどんどん書いて『新人賞』に応募してみましょう。
 ライバルは星の数ほどいます。一度の失敗でダメだと諦めずに何度でも挑戦しましょう。

 次の点に注意して書きましょう

 ・読者の頭の中に鮮明な映像が浮かぶような「描写」
 ・読者の心に響くような「セリフ」
 ・読者が、状況をよく理解できる「説明」 

 ここで、みなさんが抱く疑問に答えようと思います。

 (質問)
 なぜ、中学生・高校生から小説を書く勉強を始める必要があるのですか? 小説なんて社会人にならないと書けないのでは。

 (答え)
 小説の『新人賞』には年齢制限があるからです。元文芸雑誌の編集者だった人の話によると、30代後半から40歳が限界だということでした。
 スポーツや楽器の演奏もそうですが、子供の内から練習を始めなければ、プロのレベルに達するのは無理ですよね。
 40歳くらいだと、20年近く小説を書いているはずですよね。それだと、もうその人の書き方が完成していて修正しようがない、と編集者に思われているようです。つまり、伸びしろがないということです。

 マンガ家は10代か20代でデビューしていますよね。高校を中退してマンガ家になる人も多くいます。小説も同じで、人より早く勉強を始めて、若い内にデビューしなければチャンスを逸してしまいます。

 出版社は才能のある「若者」を求めています。小説の読者層は10代から20代前半が最も厚いので、読者と同じ年代の人を作家として優先的に採用しています。
 今、売れているベテランの作家さんたちも、デビューは20代だという人が多いですよね。そんな人たちも、デビュー作は大した事ない場合がほとんどです。
 ただ、何かその人にしか書けないような独特の世界観や文体を持っていて、それを編集者が見出し、人気作家に育てる。こんな感じで小説家は誕生します。
 
 マンガ雑誌では、編集者が育てたマンガ家がヒット作を生めば、編集者も出世するようになってますよね。文芸雑誌の場合も同じことが言えます。編集者も、お互い競争しているので、自分が担当している作家に売れる作品を書いてもらおうと協力を惜しみません。

 出版社が、お金と手間をかけて『新人賞』を開催するのも、若くてユニークな発想ができる人材を見つけるためです。さらに、新人を売れっ子作家に育てるには何年もかかるので、なるべく若い人を採用しようとしてるのです。 
 
 では、40歳以上の人はどうすればいいのかというと、ネット上に自作の小説を発表すればいいと思います。特に、この『note』では販売もできますので、お金を稼ぐチャンスです。若者にウケる面白い作品を書けば、副業としては十分な収入になると思います。
 ただし、この講座を一年間受講し、基礎的な書き方を身に付けてからにして下さい。

 私の失敗談をお話します。
 社会人になって、だいぶ経ってから、最初は脚本家を養成する講座を受講しました。
 初めて書いた作品が最終選考に残り、賞状をもらったので、プロの脚本家になれるかもと思い、こちらの勉強に何年も費やしてしまいました。

 挫折して、次に始めたのが映像翻訳家という仕事です。アメリカのドラマやドキュメンタリーを翻訳して字幕を入れる仕事です。
 この仕事を長年やっていると、やはり自分でも作品を書きたくなりました。そして、ようやく、39歳で小説を書く講座を受講しました。
 脚本の勉強と海外ドラマの翻訳とで「セリフ」と「ストーリー作り」には自信がありましたが「描写」は、ちゃんと勉強した方がいいと思ったからです。

 ただ、私の受講した講座が上級者向けのクラスだったために、最初は講師の言っていることが、よく理解できませんでした。当初は手探り状態で課題を書いて提出していました。
 テキストや課題も純文学の作品ばかりで、ストーリー物など書かせてもえらません。課題も自分(または自分の分身)を主人公にした話を書かなければなりません。  
 純文学は苦手で、あまり読んでなかったので、どう書いていいのか分からず苦労しました。

 当然の事ですが、毎回、原稿がボロクソにけなされて返ってきました。ここで、いかに小説を書くのが難しいか思い知りました。脚本では褒めてもらって自信を持っていたのですが、小説では惨敗続きで落ち込みました。
 何とか頑張って合格点をもらえるようになったのは、講座が終わりに差し掛かった頃です。

 さらに、講師の話の内容を完全に理解して、ちゃんとした小説を書けるようになるまで、何年もかかってしまいました。年齢的にも小説家としてデビューするには遅過ぎます。

 高校生くらいから小説を書く講座を受講して勉強を始めていれば、と残念で仕方ありません。私が「中高生から小説を書く勉強を始めて、大学を卒業するまでにはデビューしましょう」というのは、これが理由です。
 ただ、これだとハードルが高すぎますよね。なので「20代でデビュー」これを目標に頑張って下さい。

 そんな訳で、私はプロの作家ではありません。小説を読むのと書くのが好きな、ただのおっさんです。あえて名乗るなら小説の書き方研究家ですね。どうすれば、いい小説を書けるようになるか、どんな作品がいい小説なのかを長年、研究してきました。
 紙の本を出版したこともありません。でも、以前、ブログに自分の小説を連載していました。それが好評だったので、今後『note』での販売も考えています。

 そして、もうひとつ残念に思うのは、初心者向けのやさしい小説講座がないことです。私が受講した小説講座では、講師はプロの純文学作家、文芸評論家、元編集者などで、講義内容もかなり高度なモノばかりでした。初心者には難し過ぎて、ついていけませんでした。途中で辞める人が多くいたほどです。

 基礎から学べる講座があればいいのにと思い『みんなの小説講座』を立ち上げることにしました。
 課題を与えられ、それに沿ったストーリーを自分で考えて、小説にする。この学習法は、初めて小説を書く人には難しいと思います。小説には正解がないのですが、せめて、手本となるモノがあった方がいいと感じました。

 小説やライトノベルの『新人賞』は多くあり、毎回、受賞者が華々しくデビューしていますよね。それも、高校生とか大学生とかがです。さらに、それらの作品はアニメ化されて、世界中で大ヒットしています。
 そんな状況を見て、自分も小説・ラノベを書いてみたいと思った人は多くいると思います。でも、どうやって書いていいのか分からない人がほとんどでしょう。私も、そうだったのでよく分かります。

 残念なことに、小説の書き方をやさしく解説した本や動画がありません。あるのは小説を書く際の心構えとか、簡単なアドバイスを書いた本などですよね。 
 初心者がそれを読んだところで、あまり役に立たないと思います。教えて欲しいのは、実際に、どんな文章で、どう話を展開していけばいいのかですよね。

 そこで、この講座では、私も「ダメな例文」の書き直しをします。私が書いた作品と、皆さんが書いた作品とを読み比べることによって、自分の欠点を見つけて克服していきましょう。この方法なら初心者でも理解しやすいと思います。

 小説を書く自信がある人もない人も、とりあえず一年間、この講座を受講して基礎を身に付けて下さい。この講座は、世界一やさしい小説講座だと自信を持って言えます。
 ストーリーは、すでに作ってあるので、それに沿って話を細分化していけばいいだけです。手本となる作品も掲載しています。

 一年間、受講して、もう少し頑張れば『新人賞』が獲れそうだと思ったら、さらに勉強を続けてみましょう。他の小説講座を受講するのもいいと思います。基礎ができているので、高度な内容の講座にもついていけると思います。

 プロになるのは無理だと思っても、ここで勉強したことを軸に、他の分野への進出を考えるのはどうでしょう。たとえば、ドラマ・映画・アニメ・RPGの脚本家などを目指すのもありです。小説家志望から脚本家志望へ転向するのは可能ですが、逆は無理です。

 マンガ家になる場合、絵が苦手な人は原作者として、絵の得意な人と組むという方法もあります。この講座でストーリーの作り方を学んだので、自分にしかできない発想で、面白い話を考え出す能力は上達しているはずです。
 また、マンガ家志望の人も、ストーリーを作るのは得意なはずですから、基礎さえ学べば小説も書けると思います。

 社会人や定年退職した人も、自分の経験を基に小説を書いてみてはいかがでしょう。『note』なら販売もできます。売れる売れないの問題ではなく、自分が生きた証となるような作品を書いて下さい。

 (質問)
 小説は難しそうだから、簡単そうなライトノベルを書きたいのですが。

 (答え)
 ライトノベルは、小説で中級者以上になってから挑戦するようにしましょう。  
 ラノベの方が簡単だと勘違いしている人が多くいますが、大間違いです。小説では5行で描写する場面を1行で書かなければなりません。これって、かなりのテクニックと語彙力が必要だとは思いませんか。
 ラノベはスラスラ読めますが、書いている方は、かなり慎重に言葉を選びながら書いています。決してラノベの方が楽に書ける訳ではありません。

 今、ラノベで活躍している作家さんたちは、元は小説を書いていたプロです。そんな人たちが小説だけでは食べていけないので、ペンネームを変えて、ライトノベルにも大挙して進出してきました。
 その結果、名作も多く出て、どんどんアニメ化されるようになって、ラノベの人気が爆発していますよね。今、最も競争率が高い分野はラノベではないでしょうか。
 上に書いた『新人賞』の応募者数を見て下さい。ラノベの方が桁違いに多いのが分かると思います。応募者が4467名なのに対して『一次選考』通過者は、わずか190名しかいません。
 ちゃんと小説の書き方を勉強した人なら『一次選考』は通過できるはずです。

 「文章力」と「ストーリー力」を小説で鍛え上げたプロ作家が、ラノベには大勢います。そんな作家たちと競うには、やはり、小説を基礎から勉強して、実力を付けなければ勝負になりません。 
 小説の基礎も知らずに書いた作品をラノベの『新人賞』に応募し続けても、一生、入選することはないでしょう。

 (質問)
 文芸雑誌の『新人賞』って、どうやって決めているのですか?

 (選考過程)

 一次選考
 主に新人作家が、アルバイトとして選考を行っています。
 いわゆる「下読み」と呼ばれる人たちが担当し、編集者はまだ参加しません。
 『一次選考』で落ちたということは「あなたの作品は、まだ小説にもなっていません」という意味です。
 応募作品の大半は『一次選考』を通過できないのが現状です。

 二次選考
 ここからは編集者が選考を行います。
 『一次選考』を通過した作品の内『二次選考』を通過できるのは、編集者の目にかなった作品のみです。
 『新人賞』を獲れなくても『最終選考』に残ることができれば、編集者の指導を受けてデビューできたという人が多くいます。
 中級者は『最終選考』に残れるように頑張って下さい。
 
 最終選考(入選作決定)
 有名な作家さんたちが『最終選考』に残った数本の作品から、話し合いで入選作を選出します。入賞作が2作品だったり、入賞作なしの場合もあります。

 文芸雑誌が行う『新人賞』には「長編物」と「短編物」があります。
 上に書いた「オール読み物」新人賞は短編。「江戸川乱歩賞」は長編で、推理小説の賞です。

 紙の文芸雑誌の『新人賞』は、こんな感じで行われます。
 なお、ネット専用の文芸サイトやライトノベルも同じだと思って下さい。
 『新人賞』を受賞してデビューするのは、どれもかなりの難関ですので、小説の書き方を基礎から勉強して、実力をつけてから挑戦するようにしましょう。

 (質問)
 『みんなの小説講座』では、どんな方法で学ぶのですか? 

 (答え)
 ここでは『ダメな例文』を小説の文章に書き直すことで「文章力」と「ストーリー力」を鍛えます。
 つまり、私と一緒に書いていくと方法です。毎月『ダメな例文』(まだ小説にもなっていないような文章)を書き直して、ちゃんとした小説にしていきます。

 「文章力」は、もちろん「ストーリー力」も鍛えます。あらすじは、すでに作ってありますが、小説にするには、それをもっと細かく、ひとつのシーン、ひとつのカット、さらに、ひとつの動作、ひとつのセリフまでに分解して書かなければなりません。
 ここで、その作品が面白いどうかが決まってくるので、もっと良い表現やセリフはないか、何度でも書き直しを行って下さい。書いては書き直す、この作業を繰り返すことで「文章力」と「ストーリー力」のレベルアップを図りましょう。

 それから、皆さんが書いた作品は消去せずに保存しておいて下さい。この講座を受講した後、読み返してみましょう。一年で自分が確実に成長していることに気づくはずです。
 
 この講座では『クロノス王戦記』というファンタジー小説の書き直しをします。
ファンタジー小説にした理由は、下準備なしに書けるのと、学生は書きやすいのではと思ったからです。

 推理小説を書く場合、何か斬新なトリックを考えなければいけないですよね。これに時間を取られていては、小説を書く勉強になりません。何も思いつかなければ、いつまで経っても書くことができませんよね。

 歴史小説だと、その時代のことを事細かく調べなければ書けません。
 ここは小説の書き方を学ぶ講座ですので、今の段階では、トリックとか時代考証に時間を費やすより『文章力』と『ストーリー力』を向上させることに力を入れましょう。

 ファンタジー小説ですが、小説を書くための例文なので、現実的なストーリーにします。魔法使い、超能力者、ドラゴン、エルフなどは出てきません。正確に言えば、ファンタジーの要素を取り入れた時代小説となります。
 中世を舞台に、クロノスという名の王子が、敵の王子と戦うという話です。また、敵であるラムジンという名の王子の視点からも書きます。
 つまり「三人称複数視点」です。ファナス王国のクロノスとレバーン帝国のラムジンの二人の視点から、同じ話を交互に語ります。

(質問)
 私は推理小説にしか興味ないし、推理小説以外は書きたくないのですが。 

(答え)
 今の段階は、基本的な書き方を身につけることに重点を置いて下さい。自分が書きたい作品を書くのは基礎が身についてからです。
 この課題は「文章力」と「ストーリー力」を向上させるための例文に過ぎません。この講座を一年受講して、書き方の基礎を学べば、推理小説でもSF小説でも恋愛小説でも、何でも書けるようになると思います。

 それから、プロの小説家を目指すなら、他のジャンルの作品も読む必要があります。たとえば、純文学はストーリーに重点を置いていないので、初心者には理解しにくいですが「文章力」に関しては優れた作品が多いので、読んで参考にしましょう。

 では、課題です。この『ダメな例文』(まだ小説にもなっていない文章)を書き直して、ちゃとした小説の文章にしてみましょう。
 この講座では、毎月、課題を出します。自分で書き直した文章と私が書いた文章と比較して、自分で評価して下さい。

 初めて小説を書く人だと、手も足も出ないと思います。そんな人は、先に、私が書いた作品に目を通して、参考にしながら書いても構いません。これはテストではなく、小説の書き方を学ぶ講座です。自分のレベルアップにつながる方法でトライして下さい。
 それでも書けない人は『ダメな例文』と『書き直しの一例』をよく読み比べてみることから始めましょう。あわてる必要はありません。中高生なら、大学卒業までには、まだ年月がありますよね。少しずつ確実に上達するように頑張って下さい。
 最終的な目標は、20代で作家デビューすることです。

 まず、小説を書く習慣を身に付けましょう。「週末にだけ書くのではなく、毎日、わずかな時間でもいいので書くように」これは、小説講座を受講したとき、講師から言われた言葉です。
 スポーツや楽器の演奏をしている人は「3日も練習をさぼると、カンを取り戻すのが大変だ」と言います。小説を書くのも、まったく同じです。

 それでは「課題」です。

 次の『ダメな例文』を小説の文章に書き直しなさい。

 「ダメな例文」

 18歳になったばかりのクロノス王がアメーネ城に到着したとき、城内は混乱の極みにあった。
 この城も敵勢力の手に落ちているかも知れない。そう考えたクロノスは、城の堀の外、雪の中に伏せた状態で、城内の様子を伺っていた。
 
 城内から言い争う声が聞こえてきた。城主のギロンと守備隊長らしい。
「守備隊長のお前が逃げたら、この城は誰が守るのだ」
 ギロンが言った。
「強大なレバーン帝国と戦っても勝ち目はない。この際、レバーン帝国と同盟を結び、長年の敵であるセシス王国と戦おう」
 そう主張する守備隊長。

「それは間違いだ。我がファナス王国は自由で平等な社会を謳歌してきた。レバーン帝国の属国になれば、それこそ終わりだ」
「敵は15万の大軍だぞ。ここには3000人しかいない。どうやって戦うというのだ」
「クロノス様は必ず、ここに来られる。援軍を連れてな」
「来るものか。あんなガキ、とっくに他国に逃げ出しているぞ。それに、俺はクロノスが王だとは認めてはいない」
「必ず来られる。私はクロノス様の教育係だった。国民を見捨てるようなお方ではない」

「よく聞け、ギロン。敵はセシス王国だ。ひと月前の戦いで、前王と多くの仲間を亡くした。誰もが復讐に燃えている。前王の弟のマローン公は、レバーン帝国と組んでセシス王国を討つ構えだ。俺たちも、その軍に合流する」
「敵はレバーン帝国だぞ。マローン公の考えは間違っている。クロノス様が到着するまで我らだけで耐えてみせようぞ」
「クロノスなどあてにするな。東隣のローハル法王領の兵士も、戦わずに我が国へと逃げてきた。レバーンは強敵だ。戦うより仲間になろう」
「早まるな。レバーン帝国の属国になったら、この国の未来はない」

「もういい、話にならん。俺は、これからレバーン軍に合流する。お前はここで討ち死にするがいい」
 そう言うと、守備隊長は部下を引き連れて、城を出ようとしていた。
 クロノスは、城から逃亡しようとした守備隊長を弓隊に命じて殺させる。
 
「おお、これはクロノス様、お待ちしておりました」
 クロノスが雪の中から姿を表すと、ギロンが走り寄ってきた。
「この男は裏切り者だ。仕方なく殺した」
「ここへ来られることを信じておりましたぞ。さあ、中へ」
 ギロンが城の中を案内した。城の中は、敵に侵入された場合に備えて、様々な防御策が施されていた。

 クロノスは、ギロンの部屋で暖を取りながら作戦を打ち明けた。
「セスシ王国と手を結んだ。レバーンの大軍に立ち向かうには他に手はない」
「何ですと! よりによって長年の宿敵であるセシス王国と」
 川を挟んだ西隣のセシス王国との戦いで、クロノスは父と兄二人を亡くしていた。ほんの、ひと月前のことだ。父の死により、急遽、第三王子であるクロノスが王位に就くことになった。

 優秀な兄が二人もいるので、クロノスは王になることは考えてもいなかった。 
 クロノスは王宮を出て、王立アカデミーで貿易商人になるための勉強をしていた。 
 ファナス王国は、東西貿易で栄えた西側諸国の中で最も豊かな国だった。そのため、この国では、貿易商人の地位が高く、貴族にも劣らないほどだった。
 クロノスも、来月には完成したばかりの大型船で海外へと旅立つ予定だった。

 父と兄二人が戦死したとの一報を聞いて、クロノスはショックを受けた。あの強い父が戦死するなど考えられない。今にも、セシス軍が攻め込んで来るようで恐怖に震えていた。
 貴族のタフス卿に強引に戴冠式に連れ出されたクロノスだが、何も考えられないほど怯えていた。今にもセシス軍がファナス国に攻め込んで来るような気がした。どうせ、皆、死ぬのだろう。王となった自分が、真っ先に殺されるに違いない。

「国民は、強い王を望んでいます。あなたが王位に就かないかぎり、セシス軍に攻め込まれます。それに、マローン公が王位を狙っています。あの方に先を越されたら、あなたの命もないでしょう」
 タフス卿は、そう主張した。
「俺は貿易商になるつもりです。王になどなる気はありません。来週には船で海外へと乗り出す予定です」
「諦めて下さい。あなたはもう、この国の王です」
 そう言われて、クロノスは絶望感に打ちひしがれた。

 そのとき、クロノスは、二人の兄の未亡人と子供たちがいるのに気づいた。夫を亡くして悲しみにくれているはずなのに、毅然とした態度で自分の戴冠式を見守ってくれている。その姿を見て、クロノスの心に変化が現れた。
 そうだ。自分はもう学生ではなく、王になったのだ。彼らはもちろん、全国民を守る義務がある。

 王としての自覚が芽生え始めた。
「何としてもセシス軍を国内に入れるな。西の砦に住民を集め、夜はかがり火を灯し、昼間は我がファナスの旗を高く掲げよ」
 クロノスは、強い王を演じることを決心した。

 セシス軍が国境から退いて安心したのも束の間、今度は遥か東方から大国レバーン帝国が使者を送ってきた。レバーン帝国からの親書には、ファナス王国はレバーン帝国の支配下に入り、何事も帝国の指示に従うように、とあった。
 クロノスは、自由で文化的なファナス王国を守るために戦うことを決意する。ただ、強大なレバーン帝国と戦うにはファナス一国だけでは無理だ。そこで、長年敵対してきた西隣のセシス王国と軍事協定を結び、共に戦うことを考えた。

「セシス王国に商人を装い潜入することに成功した。俺自身でミリア王女と会った」
「ミリア王女は、あなたのお父上を殺した憎き敵ですよ。まだ一か月しか経っていないのに危険すぎます」
「心配ない。一夜を共にしたが、この通り、無事、戻って来られた。ミリア王女は戦略家として優秀だ」
 クロノスは、セシス王国のミノア王女と会い、恋に落ちた。
「王が死ねば、この国も滅びます。どうか危険なマネだけはなさらないよう」
「分かった。レバーンとの戦いに勝利できたら、セシス王国も我が領土にしよう。友好的な方法でな」
「ほほう、それはそれは。クロノス様が先に陥落されましたか」
「我がファナスだけでは相手にならない。西側諸国が結束する必要がある。セシスの軍事力も必要だ」
 あわてた口調でクロノスが言った。

「長年の敵と組むとは複雑な気持ちですが、仕方がありませんな」
「この城を突破されたら、我が国は滅びる。死ぬ気で守り抜け」
「この城は、長い年月をかけて地下を要塞化しています。ご心配なく。そうだ。我が二人の息子、ロペとシアをお供につけましょう」
「おお、ロペか、懐かしい。子供の頃は一緒に遊んだ。シアというのは?」
「施設から養子にした息子です。頭も良く、剣の腕前もいい」
「では、よろしく頼む」
 戦いのときが迫る。

(以上、ダメな例文)

 さて、もし、この課題作をこのまま文芸雑誌の『新人賞』に応募したとすれば、最初の一行で、下読みの人が「ボツ!」と判定するでしょう。
 「城内は混乱の極みにあった」などと書いても、読者はイメージできません。実際にどうなっているのか具体的に「描写」する必要があります。
 上手く「描写」するには、これがアニメ化、映画化されたときに、どんな絵になるのだろうと思い浮かべながら書くといいと思います。

 この例文は、小説ではなく、ただのメモですよね。内容に乏しく、文章も説明だらけで、ひどい状態です。ダメな部分を挙げていきます。

 ・「描写」が、ほとんどない。
 小説の文章は「描写」「説明」「セリフ」からなっていることは説明しました。その中でも、プロと素人の差が最も出るのが「描写」ではないでしょうか。
 「描写」が上手くできないと、小説家にはなれません。ラノベだと、さらに簡潔で的確な「描写」が求められます。

 マンガ・アニメなどには絵がありますよね。でも、小説は文字だけで人物、風景、心理などを表さなければなりません。読者は文字を読みながら、頭の中で、それらを映像化しています。その手がかりとなるのが「描写」です。
 「描写」が下手だと、読者は物語の中へ入っていくことができずに、つまらないと感じてしまいます。

 ・「セリフ」も特徴がなく、その人物が言ったようには聞こえません。
 セリフは、その人物ならではの口調で書くようにしましょう。例文のセリフは、ただ、状況を「説明」しているだけです。 
 
 ・全然、迫力がない。
 この文章だと、緊迫した雰囲気が伝わってこないですよね。全体的に迫力も緊張感もありません。
 小国のファナス王国に、今にも大国のレバーン帝国が攻め込もうとしています。新米の王であるクロノスは、どう戦えばいいのか、すぐに決断して行動しなければなりません。
 
 ・主人公に魅力がない。
 若きクロノス王の描き方が不十分で、ちっとも魅力的に思えません。これでは読者が感情移入できないので、たとえクロノスが、この後、大活躍したとしても、面白いと感じられないでしょう。
 特に、弱虫のクロノスが、強い王になろうと決心する場面は、もっと丁寧に「描写」すべきでしょう。

 キャラを立てるために、自分で様々なエピソードを考えて書いてみましょう。私が書いたモノと違っても構いません。主人公が魅力的に思えるような話を書けていればOKです。

 ・内容がない。スートリー不足
 もっと話を膨らませて、読者の心をつかむように書きましょう。話を練りに練って、ストーリーの細部までしっかり描く。ここに小説家の技量の差がでます。

 この課題作は『三人称複数視点』となっています。次回は敵であるレバーン帝国のラムジンの立場からもストーリーを描きます。二人の王が、死力を尽くして戦う波乱の展開となるでしょう。読者は、そんなストーリーを期待しているので、作家は、ちゃんと答えなければなりません。

 では、この「ダメな例文」をちゃんとした小説の文章に書き直すことから始めて下さい。登場人物の設定とストーリーが、大体同じであれば自由に書き直しても構いません。もっと、いろんなエピソードを自分で考えて加えましょう。

 「クロノス王戦記」とは、どんな話?

 「書き出し」は、いきなり緊迫した場面から始めましょう。最初の一行目から読者の心を鷲掴みにして、その世界に引きずり込まないと続きを読んでもらえません。
 初心者は「書き出し」に余計なことを書きがちです。最初の一行から、緊迫したシーン(またはセリフ)を書いて、読者の注意を引くようにしましょう。

 「クロノス王戦記」のあらすじ

 ファナス王国は、東西交易で栄えた西側諸国でも最も豊かな国です。そのため、この国では貿易商人は地位が高く、憧れの職業となっています。
 王国は、国土の七割が山岳地帯で、農業には適していません。しかし、南北に連なる山脈を東から西に横断するにはファナス王国を通るしかありせん。このため小国にも関わらず、西側諸国では最も豊な国となっていて、国民は自由で文化的な生活を謳歌しています。
 東門(ドラゴンゲート)と西門(ライオンゲート)は強固な城壁で守られ、人や物の出入りを監視しています。その東門を守るためにアメーネ城があります。

 第三王子のクロノスは、貿易商人になるために王立アカデミーで勉強中の学生でした。
 しかし、18歳になったばかりのある日、事態は一変します。長年、国境争いをしている西隣のセシス王国との戦いで、国王である父と兄二人を一気に亡くしてしまいます。

 優秀な兄が二人もいるため、クロノスは王になるつもりはありませんでした。貿易商人として世界中を旅して、珍しい物を探すつもりでした。外洋に出ることのできる大型船が完成して、まだ見ぬ外国を訪れることを夢見ていました。
 しかし、王が不在では隣国のセシス王国に攻め込まれてしまうと、貴族のタフス卿に説得され、仕方なく王位に就きます。

 元々、気が弱く、争いごとが嫌いなクロノスでしたが、戦死した兄二人の遺族の毅然とした姿を見て、自分が弱気になったら国が滅びてしまうと覚悟を決めます。国民を守るために強い王を演じることにします。
 主人公が心変わりをする重要な場面ですので、ここはしっかり描く必要があります。

 セシス軍が国境から退いたとの報告で一息ついたとき、今度は、はるか東方から遊牧民族のレバーン帝国が、15万の大軍で攻めてきました。中東の国々は戦火に包まれ、東隣のローハル法王領の領主と兵士たちも戦うことなく避難してきました。
 レバーン軍は、ファナス王国の東端にあるアメーネ城の近くまで迫っています。ここで食い止めなければ、自国はもちろん西側諸国は全滅するでしょう。

 ファナス王国の王に即位したばかりのクロノスは、重大な危機に立ち向かうことになります。
 しかし、将軍たちの多くは、クロノスが王になったことを認めていません。内部分裂の危機もはらんでいます。
 亡くなった前王の弟、つまりクロノスの叔父に当たる人物(マローン公)は、レバーン帝国と手を組んで、長年の宿敵であるセシス王国を攻め滅ぼそうと画策しています。もし、そうなった場合、セシス王国には勝利できるでしょうが、ファナス王国は大国レバーン帝国の支配下に入って、圧政に苦しむことになります。

 そうなることだけは避けたいクロノスが、どう国をまとめてレバーン帝国と戦うのかが、話のキモとなってきます。
 クロノスは、長年の宿敵である西隣のセシス王国に単身乗り込んで、ミリア王女と面会し、軍事同盟を結ぶことに成功します。
 そして、今度は東門にあるアメーネ城に行き、混乱状態にある城を平定させます。

 この話の時代は、あえて、はっきりと設定していません。でも、武器が刀や弓ということから、まだ鉄砲は発明されていない時代のようです。
 場所も、一応、アジア、中東、西側諸国などが出てきますが、小説でのお約束「小説のある場所は現実とは異なる次元」ですので、現実の地理とは異なっています。

 モンゴル帝国が勢力を拡大した13世紀を想定して、即席で話を作ってみました。 この時代、日本にも元寇として知られていますが、ヨーロッパ諸国もモンゴル軍と戦って大敗しています。世界史の授業で習ったと思いますが、ワールシュタットの戦い(1241年)が有名ですよね。
 この時代のことをネットで調べたり、想像力を発揮してストーリーを作ってみましょう。小説を書く講座ですので、現実には存在しないような武器などを登場させても構いません。 

 実は、翌月、レバーン帝国の王子ラムジン(25歳)の視点からも物語を語ります。つまり、この小説は『三人称の複数視点』となり、二人の立場から交互にストーリーを語っていきます。
 この場合、どちらも優秀な王にしなければなりません。クロノスもライバルであるラムジンも、同じくらい魅力のある人物として描きましょう。
 二人の有能な王が知恵を絞って、壮絶な戦いを繰り広げる物語にしたいと思っています。
 ただし、現実的な話にして下さい。魔法・超能力などは出てきません。純粋なファンタジー作品ではありませんので注意しましょう。 

 「文章力」と「ストーリー力」を鍛えるための書き直し作業です。納得のいくまで何度でも書き直しをしましょう。

 この講座では、皆さんが書いた作品を他人が読んで批評することはないので、初心者でも恥ずかしい想いをすることはありません。自分から積極的に書き方を学ぶという姿勢で臨んで下さい。
 最初は上手く書けないと思いますが、それでも構いません。今の段階では、小説を書くことを習慣にしましょう。毎日、勉強や仕事の合間に、息抜きとして小説を書く時間を作って下さい。

 では、書いてみましょう。期間は一か月、字数制限は特に指定していません。この内容だと、かなり長くなると思いますが、練習ですので「描写」と「セリフ」に重点を置いて、自由に書いて構いません。
 
 この後、私が書いた作品を掲載します。私との勝負ですが、自分の作品の点数は自分で付けるようにして下さい。
 自分で書いた文章を何度も読み返して、どこが悪いのかを見極める力を養って下さい。書いては書き直す、これを繰り返していれば、少しずつですが確実に上達していくはずです。
 早い話、自分が『新人賞』の『一次選考』の審査員レベルになればいい訳です。

 審査する点
 ・「書き出し」で読者の興味を引くことができているか。
 『新人賞』の『一次選考』を担当する若手の作家さんの話では、応募作の最初の3ページを読んで、このまま最後まで読むか、ボツにするかを決めているそうです。 
 ひとりで100本ほどの応募作を短期間で審査しなければならないので、全部の作品を最後まで読むなんてことはしません。
 『一次選考』を突破できるのは100本の内、3本~5本だそうです。

 ・登場人物が魅力的に描かれているか。読者が主人公に感情移入できるように書きましょう。

 ・ストーリーが破綻していないか。複雑な話だとストーリーが途中で変になってしまうことがあります。何度も読み返して確認しましょう。

 ・「構成」は上手く機能しているか。
 話を時系列に進める必要はありません。マンガ、アニメ、ドラマ、映画などでは、過去、現在、未来が入り組んだ構成になって描かれていますよね。これって結構、話を面白くするのに効果的です。

 ・最後に面白いかどうかです。自分が書いた小説に、読者がお金を払って読んでくれて、満足してくれるかどうか。プロにとっては、これが最も大事なことだと思います。

 この講座は、月額500円です。その代わり、それ以上の価値があり、役に立ったと思えるような講座にします。
 では始めて下さい。

 この後、私が書いた「書き直しの一例」を掲載します。
 ここからは有料(490円)となっています。

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書き直しの一例

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¥ 490

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