あなたには帰る家がある、ドラマ化

拙著「あなたには帰る家がある」が地上波で連続ドラマになります。
発表から二カ月、TBSが大々的に宣伝を打ってくださったので、
読者の皆様にもお知らせが行き渡ったことと思われます。

改めて申しますが……、びっくりしますよね!
私が一番びっくりしています。
だって書いたの25年前ですよ。
25年って四半世紀ですよ。
(四半世紀以上前から自分が小説書いていることにも驚きますけど)
それもTBSの伝統ある金曜ドラマですよ。
この前まで「アンナチュラル」をやってた枠ですよ。
制作の方々もキャストの方々も主題歌の方も、これ以上はないというくらい超豪華。
なんで私の大昔の本が、何の前触れもなくこんな煌びやかなことになるのか。
びっくりしすぎて、は~生きてるとこんなことがあるんですね~と
なんだか他人事のように思います。
あ、でも他人事ではないので、本当はすごくすごく嬉しいです。

なんでいま、特に活躍感もない古い作家の古い本が? という疑問は、
私にも実は答えがわからないので、それぞれご想像なさってくださいませ。
触りやすかったっていうのはあるかもしれませんね。
でも触って頂けてよかったと思っています。

さて、「あなたには帰る家がある」を書いたのは、
少女小説から一般文芸に移行後、
小説の単行本としては四作目で、まだまったくの無名の頃でした。
依頼原稿ではなく持ち込みです。
雑誌の仕事がないため原稿料もなく、
もちろん食べられなくてアルバイトをして生活していました。

そしてこの本でブレイクした、ということもなく、
そのままあと五年くらいは貧乏なままでした。
よく順風満帆だったと誤解されるのですが、私は「恋愛中毒」までは全然売れなかった。
その恋愛中毒だって初版は淋しいものでした。
そんな話で申し訳ありませんが、やはりこの本の思い出というと、
「頑張ったけど売れなかったな!」ということに尽きるので。
取材費なんかもちろん出ませんから、取材もすべて知り合いに頼み込み、
ご厚意で話を聞かせてもらいました。
あとは図書館で本を借りて勉強したりです。
30歳の私、よく頑張った!
そのときのご褒美を55歳で貰うとは驚きです。
原作料、30歳の私に仕送りしたいです。

しょぼいことばかり言いましたが、
実は私は映像化にはとても恵まれていまして、
「パイナップルの彼方」が単発ドラマに、
「ブルーもしくはブルー」と「恋愛中毒」が連続ドラマになっています。
「あなたには帰る家がある」も一度単発ドラマになっているのですが、
私には教えてもらえない大人の事情で、完成したのにオンエアされませんでした。
(数年後にBSで放送されたそうです)
そして、「群青の夜の羽毛布」は映画化されています。
その映画では若き日の玉木宏さんがヒロインの恋人役で出演されていました。
最近では短編集「プラナリア」に収録されている「どこかではないここ」がテレビアニメ化され、
木村多江さんがヒロインを演じてくださいました。
こう書いてみると、いろいろと感慨深いです。

映像化は、もう新刊でなくなった既存の本を再び沢山の方に手に取って頂けるチャンスなので、
大変にありがたいことです。
それは本当です。
でも「ブルーもしくはブルー」や「恋愛中毒」のとき、
私は嬉しい反面、オンエアを見て「これは違う……」と思ったことも事実です。
というのは、やはり小説って、細かいところも妥協なく、
長時間かけてひとつの世界観を緻密に練り上げてゆくもの。
たとえばですが、私が類型的にならないように作り込んだ複雑な人物造形や読後感を、
みんな笑顔の前向きハッピーエンド、みたいにされてしまうのはどうなの……、
という気持ちも正直持ったりしました。

でも今思うと、そんなふうにかき乱されたのは、私のほうが未熟だったのでしょう。
作品を出版してもらったら、もうそれは子供を成人させたようなもの。
映像化に対してそんなふうに思うのは、
大人になって自立した我が子の人生に口を出すようなものだったと最近思うようになりました。

特に「あなたには帰る家がある」は子供どころか、孫のようなものです。
もう本当に何も言うことはなくて、
ただただ立派になってとハンカチで涙をぬぐいつつ、
テレビの人たち本当にありがとうございます! と柱の陰から見守る気持ちです。

というわけで、今回、脚本も読んでいません。
(企画段階で頂いた、とても丁寧なプロットは読ませて頂きました)
いち視聴者として、現代的な装いになった「あなたには帰る家がある」を心から楽しみに、
毎週末、テレビの前に座りたいと思っております。

どうぞ皆様も、ドラマ、楽しんでくださいね!

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山本文緒

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