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地獄変 芥川龍之介

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みなさんは、「地獄」と聞いて、
何を思い浮かべるだろうか。

芥川龍之介は、

「最愛の娘が車の中で燃えている様を父親が凝視する。」

これを、
地獄として
この作品を書いた。

「イカれてる。」
それ以外の言葉が出てこない。

あらすじを
ざっくり書いていく。
―――――――――――――――――――――――――――――――
時は、平安時代。

絵師の良秀は、
絵の才能は本物で、
天才的な画家として知られていたが、
気難しい性格と
狂人じみた言動で
周囲からはよく思われていなかった。

そんな良秀にも、
たった1つ人間らしい、情愛のある所があった。
良秀には娘がいて、
その娘だけは、
まるで気違いのように、
可愛がっていたのだ。

大殿は、
その娘に惹かれ
気に入っていたのだが、
娘への愛ゆえに
良秀には、そのことが不服だった。

ある日、
良秀は、その大殿から
「地獄変」の屏風を描くように命じられた。

良秀は、
「実際に見たもの」しか描けない。

弟子を鎖で縛り付けたり、
ミミヅクに弟子をつつかせたりするなど、
噂に違わぬ
狂人じみたことをしながら
制作を進めた。

そうして、作品が順調に出来ていったのだが、
最後の一部分だけ、どうしても書けない。

そこで、良秀は
大殿にあることを頼みに言った。

「牛車が、空から落ちてくるところを描きたい。」

「その車の中には 、一人のあでやかな上﨟が 、猛火の中に黒髪を乱しながら 、悶え苦しんでゐるのでございまする 。顔は煙に烟びながら 、眉を顰めて 、空ざまに車蓋を仰いで居りませう。」(原文ママ)

上臈:大奥の女中の役職名のひとつ(wikipedia)

つまり
車の中で、
燃え盛っている女性の様を描きたいから、
それを用意してくれと頼んだのだ。

大殿は、それを承諾した。

2、3日後、
それが実際に行われることになった。

いざ火をつける。

良秀は、すぐに気づいた。
燃えているのが、
自分の娘だということを。
愛している娘だということを。

もちろん、良秀は
恐れと悲しみと驚きを感じた。

だが、次の瞬間、
娘が燃え盛るのを凝視し、嬉しそうに眺めていた。

そうして、
数日後に「地獄変」を描き上げた。

描き上げた翌日、良秀は自殺した。
―――――――――――――――――――――――――――――――

改めてやばい。やばすぎる。

芥川龍之介は、この作品を通じて
人間の二面性
を描きたかったのではないかと僕は思う。

どういうことか?

この作中には、良秀という名の猿も登場する。
この猿は、
良秀の娘と仲が良く、
娘が燃えている時も助けに行こうとする。

この猿によって、
芥川は、
「父親としての良秀の気持ち」
を描写したかったのだと思う。

実際に起こったことは、
最後まで絵師として行動した良秀で、
表面的に捉えると
最後まで良秀は、狂人だったということになる。

しかしだ。
良秀は、薄情な狂人じみた人間だが、
そんな良秀の心の中にも
娘を助けたい気持ちももちろんあるし、
娘のことを本当に愛しているのだ。

猿を使って、それを描写した。

父親としての良秀、
絵師としての良秀、
良秀のこの二面性

見事なまでに描き切っている。

本質は、
見ようとしなければ、
見えないのだ。

そんなことを考えさせられた。

読後には、
心がどんよりしてしまう作品だが、
人間の醜さ、二面性
表面的なものだけを見たのでは、
捉えきれない本質があるということ

そういうことを考えさせられる作品だと思った。

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Kindle版は無料なので、ぜひ読んでみてほしい。
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