若者を営業研修プログラムで飛び込み営業に送り出し、飛び込み先の時間を奪う害悪研修会社

以前事務所に詰めて働いていたころ、ご多分に漏れずしばしば営業マンがやってきた。冷凍のまずそうなお菓子、どう考えても高い浄水器、事業スケールと全く合わない巨大なコピー機のリース。。。まあそれは向こうも仕事なので、どっかでお互い様であり、あまりに空気を読まずにずけずけとこない限りは普通ににこやかに応対していた。(このような、誰も喜ばない仕事にいやいや従事する人とそうやってノルマを押し付けて搾取する会社という構図で成立しているような事業がどんどん解体され、社会全体でもっと適材適所の再配置が進めばいいのに、などといつもぼんやりと考えている。)

ただし、これだけは許せないというものがある。最初に断っておくが、一番ムカつく相手はそういうプログラム、指示を出した研修会社だ。フリーターや学生、既卒向けに無料で受けられる研修をうたっている。私はそのようなところに行く必要などないと思うし、以前研修の内容がブラックだとか、紹介された就職先がブラックだったとか、そのような噂に事欠かない。

若者の社会参加支援に少しでもかかわっていた人間として、このようなやり方は看過できない。

「ビジネスマナーや心がけについて書かれたいい本です。2冊で800円です。買ってください」

彼は来社するなりそう言った。もうこの時点で全く話にならない。彼が持ってきたのは、フリーペーパーくらいの安っぽいコート紙の冊子で、なんかの自己啓発セミナーとかの会員が買わされてそうなアレだ。そういう研修を選んだ彼のセンスはともかくとして、普通にやっている会社をアポなし訪問して「社会人マナーの基本」みたいなテーマの、それもぺらっぺらの冊子を一冊400円も出して買えなど、失礼も甚だしい。実に失礼極まりない。大事なことなので強調しました。

このようなものを買うような予算はないと伝えると、「2冊で600円にします。なんとか買ってもらえませんか」。どうも、そういうノルマがあるのだろう。
「そんなにあっさり値引きするなら、もともとそのくらいの価値しかないってあなた認めたようなものじゃないですか」

「本当にいいことが書いてあると思うんです。」
「例えばあなたはどういうところがいいと思ったんですか?」
「敬語とか、マナーとか、そういうところです」
「なるほど。で、おそらくあなたよりベテランであろう人が集まる場所でそういうものが求められていると思いますか?それとも私たちに基本的なマナーが備わっていないと思うのですか?」
「いや、そういうことはないですが、、、」
「そういうことなのでこれが1円だったとしても私は買いません。無料でもいりません。あなたは研修で回っているそうですが、売れたんですかこれ?」
「いえ、まだ」
「売れるものが何かを一生懸命考えていいものを揃えてから売りに行くのが順番じゃないかと思いますよ。」
「はあ」

「お名刺をいただけませんか」

なぜ?である。飛び込みで突然やってきて、人の時間を奪ってくそみたいな冊子を売りつけようとして名刺をよこせという。気の毒といえば気の毒なので、私は肩書のついていないのんき極まりないほうの名刺を彼に渡した。
「せっかく来たので渡しますけど、これ一枚にもお金かかってるんですよ。そのお金はうちのお客様から頂いたお金なんですよ。それがどういうことかがわかりますか」
今思うとめんどくさい奴だと思うが、これはどうしても彼に伝えたかった。

本当は社長とかの名刺が欲しいのだろうが、私は社長でもない。ググると、その研修のノルマとして社長の名刺を何十枚、というのもあるようだ。
おそらく、役に立たない冊子を売ろうとするのも含め、そのような無理な課題を設定することで「困難な状況でも営業ができるようになる」みたいなことを期待しているのだろう。しかし言わせてくれ。それは不要なものを相手に売りつける練習にしかならないのではないか。

なんで私がそれを手伝ってやらないといけないのだ。ほかにやることあるのに。

自分たちの都合のために他人や他社の時間という有限なリソースを奪うことに期待するような研修プログラムなど程度が低い。そんなものに付き合わされるこちらに何かしら謝礼でもないと割に合わない。たとえば、ちゃんと営業先のニーズを読んで、需要があり品質のいいものなりアイデアなりを持ってきたら、面白いプログラムだと思うが、そういう建設的な提案は一つもない。本人も売れないと思っているようなものを売ってこいと言われて売り歩くだけ。そんな研修で学んでも、消耗品のような営業マンしか育たないのではないかと思う。もしいまだに飛び込み営業と称してくだらないものを売ろうとするプログラムが残っているのだとしたら、残念である。

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