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7月10日~15日 第21巻 『男の隠れ家』

7月10日

「落語ファンの中に車のナンバープレートを「ね-1365」にしている人いるかもしれない」という落語好きにしか分からないツイートをしたら、山本さんから「当たっちゃうから、交通安全的にダメそう(笑)」という落語好きとして100点満点のリプライが来て嬉しい。

もう外はめちゃくちゃ暑くて、営業職とか外回りがある仕事は絶対できないな、と思う。Spotifyに立川談志のにっかん飛切落語会の音源が急に配信されていたので、「たがや」を聞き流しながら仕事。「不快感を自分で解決するのを文化って言うんだ。できてるもので解決するのを文明って言うの」と談志が言う。不快感を自分の手で解決するのが文化、既存のもので解決するのが文明。

帰宅後、溜まってた日記を書いてnoteを更新。ちょっと何か観ようと思って『逆光』を途中まで観たけど、睡魔がやってきたので中断して寝る。

7月11日

なんだかぼーっとした一日で、ぼーっと「高校生不可」と書くべきところをうっかり「高校生もOK」って書いてたので、慌てて修正。今日はダメな日だなこりゃ。フワちゃんのオールナイトニッポン0の公開生放送回を聴く。トンツカタン森本が企画成立させ屋の本領を発揮していてよかった。

西田さんが明日で23歳の誕生日だそうで、僕は23歳のときに何をやっていたかなと思ったら、「観客の困難」を書いたり「不在映画」のあれこれを書いたりしていて、それが2015年だったので、翌年からの安田短歌のときって俺、24歳だったのか、と改めて驚く。もうずいぶん昔のようにも、ついこの前のように感じる。あれこれ思いつきをつたなくてもじゃんじゃか残していくようなフットワークも、そもそもいい感じの閃きも、もうかなり失われてしまった感じがある。二十代前半の頃から比べて、どれだけ考えていることの嵩を増やせているかと考えるとゾッとする。

夜、J:COMオンデマンドで「あんのリリック」という俳句ドラマの前編を流し見していた。やっぱり広瀬すずはいい俳優。荒川良々が朴訥なお父さんなのもいい感じ。劇中の俳句もよかったな。

7月12日

仕事でフリーで使えるイラスト素材を検索していたら、「コントで笑う人たち」と題されたイラストがあって、その中で観客が見ているコントのボケが「蕎麦屋の出前が蕎麦をたくさん持ってきちゃう」だったのが地味に面白い。こういう、フリー素材のイラストに何が描かれているかに、どこでも使える素材を作っている顔が見えない誰かの息遣いというかセンスが垣間見えるのが好き。

色々仕事が立て込んでヘロヘロで帰宅。中断していた『逆光』の続きを観た。夏の尾道が美しい。今日のタイミングでこの映画を見ると、胸にきゅっとした痛みがよぎるな。

7月13日

もうすっかり夏で暑い暑い。だるいなりに仕事をこなす。最近なんだか一週間が長いというか、水曜の時点で「え、木曜の感覚なんだけど…今週まだ仕事2日間あるの…?」となるので、木曜に仕事をしていると狐につままれた気分。

夜、ちょっとお手伝いしたものがおおよその形になったのが共有されてきて、「お~」となりながら見返す。日付変わる前に就寝。

7月14日

今日はそんなに仕事が忙しくないので、来たものをちょこちょこ返しながら一日やり過ごす。わかしょ文庫さんの「美しきもの見し人」が更新されていて、今回も名文。前回、異様なほどにある人について語っていたわかしょさんが、今回は「知人」をあくまで「知人」に留める抑制のすさまじさ。亡くなった人の思い出を言葉にするにつれ、その人の複雑な諸要素が、ノイジーな部分が、削られて濾過されてキレイな結晶のようなものになってしまう、ということを、しかしやはり言葉にしなければならないときの緊迫感も諦念も言葉に織り込まれている。「わたしにできることはせいぜいそれくらいしかなかったし、とてもではないがなにもせずにはいられなかった。」という(これはあえてなのか文章の表記統一の結果なのか分からないが)平仮名だけで構成された一文が目に入ったときに、感情の波をかぶったようでちょっと涙腺にきたのだが、今ぼくはオフィスのPCで仕事用の画面と半々にブラウザを開きながら読んでいるところだったので、泣かなかった。最近読んでいる群像では、たまに亡くなった作家などの追悼特集が組まれて、そこに追悼文を様々な人が書くわけだが、追悼文を仕事として書くとき人は、亡くなった人を「きれいな結晶」にしてしまう作業についてどう考えているのだろうか、と思ったりした。

定時に帰れたので、渋谷らくごのYouTube中継を見た。トップバッターのつる子さんが、小道具持ち込みまくり、途中で歌まで歌う新作落語「JOMO」。初見の人にとっちゃ「落語ってこんなことしていいの!?」感が満載。続く市童さんが青菜で、一気に江戸の夏の雰囲気。市童さんは声がよくて聞き心地抜群。植木屋が屋敷を出た時の演技で外の暑さを表現したり、演じ方も細やかでもっと観たくなった。小痴楽師匠は提灯屋。若い連中がワイワイやっているのは小痴楽師匠によく合う噺。若干時間オーバーぎみだったけど、トリの太福さんもたっぷり。サウナでの出来事を浪曲にして、熱波師のタオルの動きをテーブルかけで表現するなどダイナミックで楽しい。初見の人に対して演芸の間口を広げてくれるようなバラエティー豊かな会になってたので、YouTube中継するにはちょうどよかったのでは。

7月15日

朝、早く目が覚めたので、録画していたドラマ類などをあれこれ観る。「ハヤブサ消防団」の一話が消火活動シーンや子どもの頃を思い出すシーンで凝ったワンカット撮影をやっていて見ごたえがあった。怪しい人物がどんどん出てきたり、ラストには水から死体がボーンと飛び出してたりと、こういうミステリードラマの掴みとしてはいい感じ。

移動中に鬼平を読む。密偵となった泥亀の七蔵から、盗賊・玉村の弥吉の目撃情報が入った。さっそく弥吉が出入りしている家を見張り始める火付盗賊改方。すると、その家から五十歳前後と思われる怪しい侍が出てきた。盗みの協力者かと思いきや、町をうろうろ散歩しているだけの様子の侍を、平蔵は不審に思うが……、という話。実はこの侍の正体は、吉野家という小間物屋の主・清兵衛。店のことは地道に切り盛りしているものの、養子のため浪費癖が激しくわがままな妻には強く言えず、肩身の狭い暮らしをしていた。七蔵とは賭碁で出会って仲良くなり、その正体が盗人だということは知らない。辛さを吐露した末に「侍になって、肩で風を切って歩いてみたい」と話す清兵衛に同情した七蔵は、隠れ家と変装道具を用意して、清兵衛の変身願望を叶えてやったのだった。悩みを吐露できる友人を初めて得た話、として、かわいらしいエピソードではあるのだけど、七蔵が最後に清兵衛の心を過ごしでも晴らしてやるために、吉野家に忍び込んで寝ている清兵衛の妻を丸坊主にしてしまうのは、いたずらとしてはやり過ぎだと思うが……。これもまた、想定読者層であろう中年サラリーマンに溜飲を下げさせる狙いの話かな。

荻窪のTitle。『代わりに読む人1 創刊号』の創刊号を購入し原画展も眺める。そのままあるいて西荻窪のfuzkueに行き、シャンディガフとチーズケーキ。Titleで配布されてた「雑誌『代わりに読む人』ができるまで」を読み、創刊号の冒頭もちょっと読んで、そのあとは群像の掲載作をいくつか読み進める。ちょっと眠くてうとうとする時間もあったが2時間過ぎたあたりでちょっと目が覚めてきたので、レモンスカッシュを頼んでもう一時間読書。帰りにポイントカードももらった。払った料金ではなく、読書した時間に応じてポイントがもらえるところに、fuzkueのポリシーの徹底を感じる。

帰宅後、LINEでちょっと大学時代の仲間と通話。『君たちはどう生きるか』を観たらしくネタばれしない限りで感想を聞いたりする。

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