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(10)分厚い紙の束が毎月届く

文芸誌が毎月届く。それは、内容を度外視してハード面の話だけすれば、「分厚い紙の束が毎月届く」ということだ。

群像は基本的に、発売日かその前日に自宅へ届くのだが、分厚すぎて郵便受けの差し込み口に入らないことがある。その場合は、雑誌の代わりに不在票が入れられているので、日本郵便のサイトにアクセスして再配達の依頼を出す。平日は基本的に仕事のため、郵便物を直接受け取れるのは土日祝しかない。偶然だが、再配達を頼んだ週末に限って大雨の日が多かった。郵便配達人が「群像」と書かれた封筒を片手に合羽姿で現れるたび、心から「ご苦労様です」という言葉が出る。郵便や物流は大変な仕事だ。
群像が届くようになってからは、毎月発売日になるとランチ休憩中に職場近くの大型書店に行くようになった。最新号の分厚さを事前にチェックするためだ。600ページ後半でこんなに分厚いなら、今月もまた再配達だな……。本屋の雑誌コーナーでそんなことを考えているのは、きっと僕ひとりだろう。
8月号はそれなりに分厚く、昼間に書店で見た際に「きっと再配達だろうな」と予想していた。だが、帰宅して郵便受けの蓋を開けてみると、群像の封筒がすっぽりと収まっているではないか! もしかするとこの数か月のうちに、配達人のスキルが向上したのかもしれない。残念ながら、群像を僕の郵便受けに入れる技術は、2023年しか使えないものなのだが……。

読書好きに共通の悩みといえば、紙書籍をいかに収納するかだ。僕も例に漏れず、室内を占める書籍の割合がどんどん増えていて困り果てている。
僕が住んでいるアパートの一室は、ロフト付きの1K。普段生活している洋室の棚に積ん読本を置き、既読の本はロフトの上に運んでいる。この部屋に住んで8年近くにもなるので、ロフトには読み終えた本を重ねた小さな塔があちこちに建っていて、足の踏み場もない。
積読本の数も多い。一、二年ほど前、試しに積読本の冊数を数えてみたら164冊あった。もちろんそれ以降も本を読んできたが、新たな本を積んでもいるから、積読の冊数はそれほど変わらないか、あるいは増えている。そこへ更に群像一年分が加わったのだ。再度言うが、群像はとにかく分厚い。正直、もう残っている収納空間がない。床へ直に置き始めるとなし崩し的に散らかってしまいそうなので、それには抗っているのだけど、本棚の中に入りきらず天板の上へ上へと積みあげられた書籍が倒壊する日もそう遠くはないだろう。
文芸誌を習慣的に購入している読書家は、収納問題をどのように解決しているのだろうか。ある程度読んだら処分したり、あるいは古本屋に売りに行くのか……。僕だってこれがもし、自分のお金で買った雑誌なら、躊躇なく処分できるのだ。しかし、この群像一年分は、日本で10人だけが当選した懸賞の賞品だ。せっかく当たった賞品を読んだ端から捨てたり売ったりするのはもったいない気がする。毎日時間をかけて通読しているので、どの号にもそれなりに思い入れがあり、簡単に手放すのは惜しい。
結局、ロフトに残された僅かな空地に、新たな塔が建設されたのだった。

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