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【マッチレビュー】第99回天皇杯 準決勝 2024 2/14 千葉Jvs宇都宮

ロスター

千葉ジェッツ

宇都宮ブレックス

※ボックススコアを参照ください。

スタメン

千葉ジェッツ

宇都宮ブレックス

試合結果とボックスコア

1Q 千葉J 6-24 宇都宮

2Q 千葉J 29-45 宇都宮 (千葉J 23-21 宇都宮)

3Q 千葉J 55-58 宇都宮 (千葉J 26-13 宇都宮)

4Q 千葉J 78-72 宇都宮 (千葉J 23-14 宇都宮)

マッチプレビュー

千葉ジェッツ
■B1東地区3位(25勝14敗)
■OFFRTG(100ポゼッションでの平均得点)
 …115.0(B1全体4位)
■DFFRTG(100ポゼッションでの平均失点)
 …109.8(B1全体14位)
■備考
 直近は横浜BCに敗れるまで12連勝。レーティング的にはオフェンス型だが、ディフェンスにおけるローテーションのスピードは昨季ばりに速くなり、守備の練度は爆上げしている印象。
 シーズン途中加入のゼイビア・クックスがフィット。ディージェイ・ステフェンズのコンディション不良が心配される(実際欠場)が、スタメンのオンザコート3(ジョン・ムーニー、アイラ・ブラウン(帰化)、ゼイビア・クックス)の火力は宇都宮に匹敵。ウイングの層が厚いのでディスアドバンテージは感じさせない。

宇都宮ブレックス
B1東地区2位(32勝7敗)
■OFFRTG(100ポゼッションでの平均得点)
 …113.5(B1全体5位)
■DFFRTG(100ポゼッションでの平均失点)
 … 97.1.(B1首位)
■備考
 ギャビン・エドワーズ(帰化)を徐々に慣らすためか直近はベンチスタート。スタメンは竹内公輔を入れてフォトゥ、ニュービルのオンザコート2に、バックコートの構成は比江島、遠藤が基本。
 セカンドユニットでプレータイムが伸びているのは鵤、ジェレット、高島。プレータイムシェアの主軸は固めている印象。レーティングからも見られるように、リーグトップの守備力を誇る。

宇都宮の巧みなチームDF

固いマンツーマンディフェンスを軸に、開始から遠藤の3pt、竹内のバスケットカウントで0-6のランに成功した宇都宮。千葉Jのハンドラーのオンボールスクリーンに対してはファイトオーバー、もしくはスライドで対応しながら、ビッグマンのミスマッチを作られないディフェンスで、千葉Jに得点機会を与えない。

千葉Jの中核である富樫の3ptの対策としては、ショウディフェンスに出てシュートチェックの対応をしながら、ショウディフェンスに出たビッグマンが戻りのリカバーを徹底するなど、ミスマッチを作られないことを第一の優先にしつつ、同時にアウトサイドも封じる巧みなチームディフェンスを宇都宮が見せることになる。

1Qの主導権を掌握した宇都宮が、比江島、ニュービルのハンドリングを起点に0-16のランに成功するなど、立ち上がりで千葉Jを圧倒。大量ビハインドを喫した千葉Jは、富樫を中心にリムアタックから徐々に得点を決め始めるが、宇都宮も得点ペースは落とさず。リムランからのレイアップを決めきり、セカンドチャンスも押さえた宇都宮が6-24と大きくリードして2Qへ。

千葉Jが見せた宇都宮攻略の糸口

1Qで富樫、原を起点とするPnRが封じられた千葉Jは、オフェンスを修正。富樫をハンドラーとするオンボールスクリーンにおいては、PnRからのダイブを直接狙うことに固執せず、

①オンボールスクリーンでのPnR→②一度ウイングの位置へパスを出し→③リターンパスからスクリーナーのビッグマンへ

というように、PnRにウイングを中継するセットを加えることで宇都宮のディフェンスに対する攻略の糸口を見せ始める。一連の動きの中でムーニーとのハイローからクックスがゴール下シュートを決めれば、今度は富樫とのPnRから今度はウイングを介さず直接ムーニーへパスを送り、ボスハンドダンクを叩き込むことに。同じようにウイングを中継する形から、ブラウンが3ptを決めるなど、豊富なオフェンスの引き出しを武器に、徐々に試合のリズムを作ることになる。

ディフェンスにおいては千葉Jに攻略の糸口を作られつつある宇都宮だったが、オフェンスのペースは1Qから落とさず。ニュービルをハンドラーに据えて1on1で打開するセットと、コーナー、ウイング、トップオブザキーに等間隔に選手を配置するスタートから、ローポストのフォトゥがアタックで仕上げるセットを併用する宇都宮が、スペーシングの妙を見せ主導権は譲らず。宇都宮が16点をリードして試合を折り返すことに。

宇都宮を自らの土俵へ引き込んだ富樫

後半は、千葉Jが得意とするウイングからの3ptをブラウンが決めて先制。宇都宮もニュービルがジャンプシュートで返すが、ディフェンス力に勝る宇都宮に対し、千葉Jは時間と手数をかけないオフェンスを徹底する。1ポゼッションの中でショットクロックを十分に残しながら、クックスがコーナースリー、富樫がジャンパーを決めることで、宇都宮のハーフコートディフェンスに対応の隙を与えないテンポアップを見せる。

宇都宮としては意図せずではあるが、試合のテンポアップは加速していく。ニュービルがアタックした直後に、千葉Jは富樫がリムアタックでやり返すと、次のポゼッションにおいては、またしてもショットクロックを十分に残して富樫が3ptを沈めるなど、富樫が司令塔としてセレクトした"自らのポゼッションで時間と手数をかけない"ことにより、ハイテンポな展開に宇都宮を引きずり込むことで猛追。残り4分で2点差まで迫る事になる。

比江島が4ファールを喫するなど苦しい時間が続く宇都宮であったが、勝負所ではニュービルの1on1を起点にオフェンスを展開。ワンポゼッション差のせめぎ合いの中、リードチェンジは許さず。千葉Jは西村が3pt、宇都宮は遠藤のフリースロー、ニュービルのバスケットカウントを打ち合うなど、千葉Jが意図したハイテンポの中でも高いオフェンス力でペースに対応した宇都宮がリードを死守し、55-58の3点差で4Qに突入する。

打ち合いを受けて立つ

4Qはニュービルのファストブレークをプロテクトした原のディフェンスで勢いに乗った千葉Jが、西村とのPnRクックス→ムーニーのハイローの連携で先制し、1点差に迫る。宇都宮はエドワーズが3pt、千葉Jは金近が3ptを打ち合い、ビハインドは背負いながらも試合は完全に千葉Jの狙い通りのハイテンポの展開に。生命線となるディフェンスのローテーションスピードを上げた千葉Jは、残り7分の局面で富樫が3ptを沈めることで、千葉Jがとうとう逆転に成功することになる。

宇都宮も譲らず比江島のペネトレイトやジェレットのバスケットカウントなどで再びリードを奪うことに。タイムアウト明けには富樫、小川、西村の3ガードを構成した千葉Jが西村のフローターでポゼッションを決めきると、ディフェンスの局面においては、すかさずメンバーチェンジによりムーニー、クックス、ブラウンのオンザコート3に切り替えることで宇都宮のポゼッションをシャットアウト。千葉Jが再び同点に追いつき、拮抗したゲーム展開が続いていく。

宇都宮は比江島が5ファールを喫し苦しい展開となるが、古巣対決となったエドワーズが果敢なアタックで得たフリースローを2本揃え、残り3分の局面で前に出る。しかしながら、宇都宮を引き込んだ"自らの土俵"で負けられない千葉Jは、打ち合いを受けて立つことに。富樫がプルアップ3ptを決めて逆転すると、ムーニーが飛び込んだセカンドチャンスをクックスが仕上げることでリードを3点とする。宇都宮も直後のポゼッションで遠藤が3ptを決め、残り2分の局面で72-72の同点とするなど、両チーム共に譲らない。

タイムアウト明けに千葉Jは西村が3ptを決めてまたも一歩抜け出すと、宇都宮はタフショットが決まらず苦しい展開に。宇都宮を引きずり込んだ"ハイテンポなゲーム"という自らの土俵において、最後まで攻撃的スタイルを貫き、打ち合いを制した千葉Jが勝利。2年連続で天皇杯決勝へ歩を進めることとなった。

あとがき

リーグNo1のディフェンス力を持ち、リーグトップクラスのオフェンス力を兼ね備える宇都宮に対し、序盤に0-16ランを喫するなど苦しい立ち上がりとなった千葉J。2Qにオフェンスを修正し、後半にハイテンポに持ち込むなど、自らが勝利するための土俵に宇都宮を引きずり込んだことで、大逆転勝利を収める事となった。

1Qで6-24となった時点では、宇都宮のディフェンスを攻略する糸口は正直なところ見て取れなかったが、PnRからの展開、シュートの出口の設定を冷静に修正しながら、後半に意図してハイテンポな展開に持ち込み、勝筋を見逃さなかった千葉Jの試合巧者ぶりは、正にディフェンディングチャンピオンに相応しいものであった。

敗れはしたものの、リーグNo1のディフェンス力を見せつけ、千葉Jをノックアウト寸前まで宇都宮の戦いぶりもまた、特筆すべきものであると言えるだろう。Bリーグのレギュラーシーズン、チャンピオンシップで逆襲するため、この試合を糧とするのではないだろうか。

日本最高の大会である天皇杯。そのセミファイナルの名に恥じない素晴らしい試合を見せてくれた千葉ジェッツ、宇都宮ブレックス、両チームの健闘を称えたいと思う。

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