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「ドクターX」で放ったThis is a pen!!~俳優マジンガー大久保を想う

「キューバの医者の設定で何かしゃべらなきゃいけないということで、思わず『This is a pen!』って言ったら現場が固まってしまい、スタッフに怒られちゃった(爆)」

これは第5期の最終回での出来事だ。マジンガー氏は事務所の仕事として同番組のエキストラ出演を重ねてきた。その関係で、当作にも出演することとなったようだ。別に彼に悪気はない。本能のままにやらかすのが彼の流儀だ。

かつてバラエティ番組で再現映像に出演した際、仏教か神道かという話で神道の祭祀をする役になった。そこでわからない彼はスタッフに尋ねて太陽が絡むとアドバイスを受けると、

「そうか!太陽といえばサンバルカン‼‼これを歌おう」

もちろん再現映像で音声が消されていたのは言うまでもない。

筆者自身は付き合いは薄かった。それでも会うととてもほがらかな笑顔が印象的で、彼は絶対誰かの悪口を言わない。詐欺で騙されても愚痴もこぼしていない。そんな印象だ。

彼との接点は彼の数十年来の友人がいて、その方々と知遇を得たときに初めて会った。とにかく彼の話は面白い。もし彼が目指す方向が芸人だったら少しはブレイクしたであろう。ただ、彼は俳優の道を選んだ。一度目の会社はさんざんだったが、2番目の会社ではよく番組のエキストラとして多くの有名番組に出演していた。

2019年11月21日の夜だった。埼玉県警I警察署より1本の電話が入っていた。折り返し連絡をすると、それはマジンガー大久保氏が自宅で死去していたと連絡があったのだ。

実はI警察署とは縁があった。大久保氏が最初に入った芸能事務所で作った借金が巡り巡ってサラ金業者に流れた。この借金自体もその事務所との契約で、出演料から天引きするという約束だった。ただ、口約束だったので記録はない。もちろんその事務所経由でエキストラの仕事はしていたのと出演料が貰えなかったことも加味して借金返済に充てられていたと思ったようだ。

ところが、50万の借金は無返済だった。遺されていた記録も怪しかったが、その借用証が2度債権者を変えるうちに180万に膨れ上がり、いつの間にか裁判となり、満額払う破目となったのだ。ただ、その裁判の通知がどうも怪しい。何故なら乱雑であまりゴミを捨てない彼の家から友人たちが捜索したところ、その不在通知が1通しか出てこなかったからだ。もちろんそれまでにその会社からの督促などはない。裁判終結後から執拗に取り立てがあったことと、何故かその会社は本人も知らなかった、亡父の遺産相続で譲り受けた土地の所有を知っていたのだ。相談を受けた私は即座に「ハメられた」と理解し、件のI警察署に伺い一緒に同席したという顛末だ。

彼の実家は大分県中津市。墓石屋の息子だった。青年になって志を懐き東京へ出て、警備会社等でアルバイトをしながら芸能界を目指していた。エキストラながら有名作品にも多く出演していた。また、趣味でもコスプレを愛し、芸名からもわかる通り、マジンガーZをこよなく愛していた。そうした仲間からは有名人で、舞台で歌う彼の姿は輝いていた。

https://www.youtube.com/watch?v=RsmAhPq3wVA

彼と最後に会ったのは亡くなった2019年の8月。元気そうに見えたが糖尿の持病があったというから孤独死だったのかとも思う。彼のツイッターを見ると最後にリツイートした9月7日が最後だ。もしかするとその数日後には鬼籍に入っていたのかも知れない。
【追記】2022年11月1日、下池永の共同墓地にある大久保家の墓碑に命日は10月25日と刻まれており、少なくともこの日まで存命であったことが確認されました。

https://twitter.com/majjingerookubo/with_replies

このままだと彼の名前が消えてしまうことも残念と思い、彼のことを知ってもらいたいと筆を執った。合掌。


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