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10月最後のコンサートは、なかなか刺激的だった!

先週の土曜日、山下一史率いる千葉交響楽団の定期演奏会に参加してきました。

今月は、最愛のマエストロ・山下一史大車輪の活躍です。何しろ、毎週コンサートがあったんです。しかも10月第一週は、9月30日(土)・10月1日(日)のツアーが千葉であったうえに、同じ週の木曜日には、東京の初台の東京オペラシティで、「アジア・オーケストラウイーク」への参加公演があるという過密スケジュールです。

リハーサルも加えると、休む暇もなかったはずです。残念だった10月1日のコンサートでの、山下さんの疲労の影は無理もなかったですね。この3つのコンサートは、すべて千葉響とのものでしたから、なかなか両者濃密な時間を過ごされたことでしょう。

私は、10月第2週の東京藝大でのコンサートこそ、都合がつきませんでしたが(相方が京都旅行だったので、家を空けられなかったのですね)、10月1日のコンサートをスタートにして、仙台フィルとの定期演奏会も含めて、先週の千葉響の定期演奏会で4つ、出かけることができました。

もちろん、同じ曲の演奏はなかったわけですから、行くたびにいろんな表情のマエストロとオーケストラを観ることになりました。ただ、一貫していたのは、山下一史という音楽家は、どういう状況であれ、強い音楽への情熱と愛情を持ち、音楽の素晴らしさをオーケストラとともに聴き手に伝え続ける方なんだな、ということ。

いろんな考え方はあると思いますが、音楽にご自分を捧げている方というのは、やはり人への深い愛情をお持ちです。音楽を通して、人への愛情を表現する方法を選ばれた方なんだな。そういう感慨をも持ちました。

今回の千葉響の定期演奏会では、足掛け8年このオーケストラのシェフを務めてらっしゃる山下さんの、楽団員への深いまなざしを感じる要素もありました。

山下さんは、コンサートではよくお話をされる方です。定期演奏会でも、必ずプレトークをなさいます(今回、沖縄からわざわざ聴きに来てくれた友人がいたのですが、その彼女が”おおーーー! 山下さん、お話になるの?!”と、驚いていました。彼女はプロのヴァイオリニストなので、いろいろご存知なんです)。その話しぶりや表情などから、私は仕上がり具合を探ってみたりします。

今回の定期演奏会の”目玉”は、前半のメインのアンドレ・ジョリヴェの「打楽器と管弦楽のための協奏曲」。タイトルに”打楽器の~”とある通り、打楽器奏者がソリストの作品なんです。

17種類もの打楽器を、一人で演奏するんです。舞台前方にずらりと並んだ様々な打楽器たちの風景は、なかなか壮観でした。

千葉響の打楽器奏者は、齋藤綾乃さんという小柄で愛らしい女性。私は、彼女の演奏が大好きで、いずれしっかり彼女の活躍を聴きたいと願っていたので、今回の抜擢は本当にうれしかったんです。打楽器自体、大好きですしね。

山下さんは、プレトークで齋藤さんをソリストにした理由について、こうおっしゃっていました。

「千葉響は、定期演奏会が2回しかない。だから、作品によっては、打楽器が登場しないこともある。そうすると、齋藤の出番は1回減るわけですね。彼女の演奏家としての優秀さや人間性の豊かさを知る私は、音楽監督として、本当に心苦しかった。だから、今回存分に演奏してもらいたいと思って、彼女をソリストにしました」

足掛け8年。山下さんは、千葉響の楽団員の方々に神経を配りつつ、ともにレヴェルアップしてきたのだと、改めて痛感したことです。

さて、その齋藤さんのジョリヴェ。いやもう、素晴らしい演奏でした。山下さんの思いに存分に応えると同時に、彼女自身の様々な思いも込められているのであろう気迫充分の熱演でした。

虹色の衣装をまとって、楽器の群れの中を流れるように動く彼女は、妖精のようです。軽快なリズムもあれば、激しいロック調の響きもありました。笑顔で楽器を演奏しているときもあれば、いささか厳しい表情でドラムをたたいていたりもしました。

そうかと思えばコミカルな要素でもあったり、シャンソンのような風情もあったり・・・・。くるくる変わる彼女の表情と打楽器の音が連動しているようにも、聴こえてきて、それはそれは楽しい時間だったのです。

この齋藤さんの熱演を支えて居たのが、指揮の山下さんであり、コンサートマスターの神谷未穂さん率いる千葉響だったわけです。齋藤さんは、楽団員ですから、やはり外部から招かれたソリストとは息の合い方が違います。山下さんも「3日間、じっくりともに音を作り上げる時間があるのは、ありがたかった」と、おっしゃっていましたっけね。

ことに、管楽器セクションの音色が、半端ではなかった。齋藤さんが打つ楽器の音色に呼応して、豊かな響きを醸し出しているように私は聴きました。それは、齋藤さんとそれぞれの演奏者との楽しい会話にも聴こえてきました。

会場の構造上、弦楽器の響きがいつもほどではなかったのは残念でしたが(同行の友人によれば、”ここはデッドだから、弦楽器には厳しいなぁ”ということのようです)、それでも、作品の魅力を伝えることには成功していましたね。

このジョリヴェの作品の前には、ラヴェルの組曲「クープランの墓」の演奏があり、この日のそもそものメインはベートーヴェンの交響曲4番。それぞれにいい味出していたのですが、それらはまたどこかで触れようかなと思っています。

でも、4つのコンサート、追いかけてみて・・・。いやはや、プロの音楽家って、本当にタフじゃないと務まらんのだなぁ、って、痛感しましたね。私は、ただ聴きに行くために追いかけただけなのに、コンサートの翌日、もうぐったりしてました。演奏家は演奏しなきゃならんのですもん。

それに評論家(あるいは批評家)も、大変だわ、こりゃ。プロの音楽評論家がひと月にいくつくらいコンサート聴くのか知りませんが、好き嫌い言うとれんもんなぁ。好きを仕事にするのは、やりがいはあるけれど、消耗もするよなぁ。私なんぞは、本当に自分が愛している対象しか聴かないでいいんだから、気楽なもんですが、それでも4つでおなかいっぱいだわ。でも、いつか、山下さんが指揮するコンサート、コンプリート出来るときが来るといいなぁ、と、懲りずに思ったりしているファンです(^^;

なかなか充実の10月でした。来月も2つは聴きます。素人ですが、やはり、山下さんのファンではあるようですね。

今週は後半に夏日の予想もあるようです。皆様、くれぐれもご自愛くださいませm(__)m💕💛


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