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久しぶりに、音楽から衝撃を受けてきました♬

先週の節分の土曜日の午後、原宿にある、アコスタジオというホールで、「ルクレール・ボクー~ルクレールと周辺の作曲家 2024」と題したコンサートを聴いて来ました。

これは、私が大ファンのチェンバロ奏者・加久間朋子さんが、ヴァイオリニストの川原千真(かわはらちま)さんとともに、数年前から開催しているシリーズコンサートです。フレンチバロックの大家、ジャン=マリー・ルクレールのヴァイオリンソナタの全曲演奏を志して、始められたもので、今回が7回目になります。

何年前だったのか、今パンフレットが見つからないので、正確にはわからないのですが、汐留にあるホールで、お二人の演奏を聴いたのが、私にはスタートでした。それまで私がルクレールに抱いていた「何を聴いても同じの、退屈な作曲家」というイメージを、ものの見事にひっくり返してくださったんですね。

演奏家がどれほどの愛情をもって、作曲家の作品に向き合っているか。その熱量のあまりの違いを、見せつけられたものでした。

この時、大好きな加久間さんがご出演だったので出かけたのでしたが、いやはや、本物のすごさを体感したものです。

「え? え? これ何、何? ルクレール?! うそでしょーーーー!!!」

あの時の私は、まさしくムンクの「叫び」のあの人そのものの顔をしていたはずです。

そうして今回。私は、またもやあの時の経験にも似た鮮烈な衝撃を受けたのでした。

この時演奏されたのは、アンコールを入れて7曲。そのうち、ルクレールの作品が4曲で、あとは、フランソワ・クープランというやはりフランスのバロック時代の大家的な作曲家の作品が2曲。あとは、エリザベト=クロード・ジャケ・ド・ラ・ゲールという、女性作曲家の作品が1曲。

タイトルにある「ボクー」は、フランス語で「とても」などを意味します。英語だとveryが近いですかね。なので、おそらくは「ルクレール三昧」とでも訳して、問題ないのでしょう。

ただ、加久間さんにせよ、川原さんにせよ、ルクレールだけでは、フレンチバロックの魅力が伝わらないとお考えのようで、彼の生きた時代の前後に位置する作曲家の作品を取り上げてらっしゃるようです。

このシリーズコンサートでは、オープニングでは、大体(私の印象だと)生き生きとした雰囲気を持つ、明るい様相の作品を持ってこられます。おそらくは、聴き手への歓迎の意味もあるんじゃないかな、などと思うのですが、ともあれ、このオープニングで聴き手を一気に惹き込んでしまうんですね。

今回のルクレール作品もそうでした。生き生きとした強い音色を持つ川原さんの音色に、チェンバロの加久間さんが絶妙な呼吸で応えられます。その様からは、一足先に会場に春が来たような、温かさと華やかさがあふれていました。

この後、加久間さんのソロ演奏がありました。フランソワ・クープランの「クラヴサン(チェンバロをフランス語で呼ぶと、こうなるのだそうです)組曲」。クープランにはチェンバロのための作品がたくさんあるそうですが、今回は組曲の第4巻からのセレクトを4曲聴かせてくださいました。

流麗にして華麗。聴く者の心をひきつけてやまない輝きと柔らかさ。加えて、エネルギッシュでもあり、強さを含みこんだ優しさもあります。私の愛してやまないチェンバロの響きが、そこに在りました。

この後に続く演奏に、私は折からの寒暖差疲れも手伝って、うっとりしてきました。心地よい演奏に心身が緩んできたんでしょう。しかもこの日も、例によってホール探しで歩き回りましたから、いささかくたびれてもいたようです。

そういう私を、本プログラムラストのルクレールの作品の演奏が、たたき起こしたんです。

冒頭の一音がホールに鳴り響いたとき、何事かと思いました。舞台には加久間さんと川原さんのお二人しかいないのに、聴こえてくる音色は、その倍の人数いるかのような、強さと広がりがあったからです。私は素人ですので、楽器の奏法などは全然わかりません。おそらくヴァイオリンの弦の押さえ方などで、そうした強い音が出るのでしょう。しかも、加久間さんの音色の強さも「え?」と、自分の耳を疑うほどなんです。

チェンバロは弦楽器と同じ仕組みで音を出します。つまりピアノと同じ鍵盤楽器でありながら、弦をはじいて音を出すんです。なので、柔らかくて優しい音が出ます。

ですが、この時の加久間さんのチェンバロの音色は、ピアノかと思うほど強かった。私は、最初の一音の激しさにすっかり打たれて、眼が覚めてしまいました。同時に、目の前で繰り広げられている熱演のすさまじさに唖然として、ただただ、聞き惚れるばかりでした。

「ル、ルクレールって、ルクレールって・・・・・(>_<)」

内心そう繰り返しながら、以前加久間さんから伺った言葉をも思い出していました。

「ルクレールって、本当にいろんな顔を持っているんですよ。面白いんですよ!」

いささかわかったつもりになっていた素人の鼻柱を、見事にへし折ってくれたのでした(^^;

いやぁ、音楽って、面白い!!!

その面白さ・奥深さの一端を、信頼している演奏家に教えていただける至福をも味わったのでした。♬一つ読めない素人の私だからこそ、演奏家への信頼は不可欠です。そのことを、改めて痛感したのでした。

終演後、久しぶりに加久間さんにご挨拶ができました。その時、今年中にもう一回、コンサートがあるかどうか伺うと、今年は無理とのこと。来年3月の開催を予定してらっしゃるそうです。このコンサートも、あと2回です。千秋楽まで、追いかけることを誓いつつ、帰途に着きました。


予報通り、午後から雪になった関東です。被災地の雪は、今回はそれほどでもないとのこと。今夜は相当冷え込むでしょう。皆様、くれぐれもご自愛くださいませm(__)m💕💛

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