旅先では、その土地の氏神様にご挨拶しておくのが礼儀らしいという話。

旅先に限ることはないとも思うんですけれどね。
先日、我孫子市にある手賀沼に行った話を書いた際、「その土地の氏神様には、ご挨拶しておくほうが、道中安心です」ということを書きました。それで、ふと、5年前の旅先のことを思い出したので、書いてみようと思います。

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5年前の10月。私は京都・奈良に行きました。この頃は、費用の節約もあって、遠方に行くときは、必ず夜行バスを使っていました。体力あったなぁ、と思います。

10月の京都と奈良と聴けば、少し詳しい方なら観光旅行をイメージされるはずです。なんたって、或る意味王道ですもんね。

けれど、この時の私の旅の目的は、実はBeginのライヴへの参加が一番でした。え? と、思った方いらっしゃるかもしれません。私が音楽と言えば、まずはクラシックだったりするわけですから。
Beginの音楽、割に好きですが、ファンじゃありません。それに聞きたければ、関東で聴けましたもん、あの頃。それじゃあ、何故? ということになるのは当然です。
実は、この時のBeginのコンサートは、オーケストラとのコラボレーション。そう申し上げれば、勘の鋭い方は苦笑なさるでしょう。そうなんです。指揮が、山下一史さんだったからなんですね。今ならば、山下さん指揮のコンサート、かなりあるのですが、5年前はまだ、少なかったんです。

ただ。それが私を突き動かしたのは事実ですが、深いところでは、奈良に行きたかったんですよね。それで、夜行バスでまず早朝奈良に行って、目的地に直行。その夜は、京都に泊まって、翌日若干市内観光。そのあと午後のBeginのコンサートを楽しんだのでした。

閑話休題。

奈良に行きたかったのは、訪れたい神社がいくつかあったためです。ただ、時間の制約もありますし、参拝したい神社はあちこちに分散していました。悩んだ末、ともかく奈良の地に足を踏み入れることが大事と思って、吉野川に行くことにしたんです。当時も、あれこれ悩みを抱えていた私ですので、清流の流れの音に身を任せて、リセットしたかったんです。

時間の使い方が大事ですから、事前にネットで調べて、旅程を作成しました。南関東で、充実した交通網を当然として生活していると、旅に出たとき、とんでもないことになります。もともとは、香川の出身なので、地方の交通網の脆弱さは知っているつもりなんですが、慣れは怖いんですよね。車をつかえませんから(免許持ってないんです)、行き当たりばったりで動くと、痛い目に合うこともあります(土地勘があるなら、また違ってくるでしょうけれどね)。

この時は、事前の準備の甲斐あって、無事吉野川のある地域にまで、着けました。奈良県の吉野。近鉄線の「大和上市」駅で降りて、街が運営するバスを使って、「宮瀧」というところで降りるのが一番いいです。
ここまでは、きわめて順調だったんですね。
バス停には近隣の案内板があって、それを観て、河のそばに行こうとしました。が。川辺に降りられそうな道が見当たりません。吉野川があるところは、農村地域で、山もあり、のどかな風情の土地です。道なりに歩いてゆきますが、川辺が近そうで遠い。かなり歩きましたが、降りられる道が見つからないんです。
この道中、何度か「桜木神社」の看板を目にしました。この辺りの氏神様のようです。けれど、この時、私は吉野川の川辺に降りることに夢中になって、ご挨拶のことなどまったく念頭になかったのです。
朝早くから、ろくに食事もとっていなかった私は、だんだんくたびれてきました。なんだか、迷路にはまってしまったような、そういう感じだったのです。
そのうち、パトカーが走ってきました。道中地域の方々と思われる人に出会って、元気に挨拶はしたのですが、知らない人がうろうろしている、という通報があったようです。
ふと、何度目かに「桜木神社」の看板を目にしたとき、気づきました。
「これは、氏神様にご挨拶しなかったせいだ」
それで、慌てて、看板が示す方向に向かって、桜木神社に、非礼のお詫びとご挨拶に伺ったのでした。
桜木神社は、山のそばにあって、豊かな樹々に囲まれた、愛らしい神社です。社殿に行くには、河(おそらく吉野川の支流)の上の橋と階段を上る必要があります。あまり訪れる人がいない時期だったのか、人気のない閑散とした空気でしたが、何故か気持ちの良い空間でした。
神社の本殿で、鈴を鳴らしてお賽銭を入れて、ご挨拶とお詫びをしました(いわゆる二礼二拍一礼はしましたよ)。

神社を出て、改めて吉野川の川辺におりたいと思った私は、それまで歩いていた反対側の道を歩いてみることにしました。すると、その途中に、交番があって、おまわりさんが立っています。それで、私は、「吉野川の川辺におりたいんですが、どう行けばいいですか?」と聴いてみたのです。

さっきパトカーに乗っていらした方かどうかはわかりませんが、私のこの質問を聴くと、一気に安心したような表情になったこと、覚えています。そのせいか、気さくに道案内してくださいました。それまで、1時間余り歩きまわって疲れていたのですが、どうやら氏神様は、私の謝罪を受け入れてくださったようです。やっとの思いでたどり着いた吉野川は、水の流れる音も心地よくて、川辺の大きな石に腰かけて、随分長い間、ぼーーーーっとしていました。駅に戻るバスの時間さえ気にならなければ、半日でもそこにいたかったです。

この経験から、私は、初めて訪れる場所で、神社に出会うと、出来る限りご挨拶するようにしています。すると、たいてい困ったことに出会わないように感じています。まぁ、これは”個人の感想”ですから、信じられない方は、スルーしてくださいませね。

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現実逃避も兼ねての日本シリーズも、終わっちゃいました。今年はなかなかすごかったですけれどね。とうとう、10月もあと一日。皆様、くれぐれもご自愛くださいませ💕

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