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名演のエネルギー、いただいてきました 💕💛

先日の勤労感謝の日に、千葉県の君津市にある、君津文化市民ホールまで、山下一史さん指揮する、千葉交響楽団の演奏会を聴きに行きました。

当日は、朝から大雨。私は傘を持つのが嫌いですが、まさか、ずぶぬれになって、ホールにも行けません。途中、電車やらバスやらに乗るんですしね。観念して、傘を差しつつ、出かけました。

前日から、ラジオなどで「真冬並みの寒さ」と、随分脅されていました。寒いのが苦手な私、せっかく小旅行して、風邪ひいたら、台無しです。それで、ヒートテックをしっかり上下に着こんで、いざ、出発! 
それが良かったのかどうかは、わかりません。歩くからかもしれないですが、寒さどころか、大汗かいて、いささか大変でした。

けれども、こんな厄介さは、ホールで、実際の演奏を聴いたら、吹き飛んでしまいました。

今回は、千葉響のコンサートマスター・神谷未穂さんがソリスト。
山下さんは、千葉響の音楽監督になられてから、掲げてらっしゃるスローガンが2つあるんです。

一つが「おらが街のオーケストラ」。千葉県唯一のプロオーケストラ・千葉響が、千葉県民に愛される存在になること。
もう一つは、「楽団員すべてがヒーロー!」。すべての楽団員が、一人のプロの演奏家としても、世界に羽ばたけるだけの力量を持っていることを、世界に示すこと。

就任当初こそ、外部からのゲストを呼んで、共演させていたのですが、ここ2~3年は、楽団員をソリストに据えて、千葉響のチームワークの良さを引き出せる形にしてらっしゃいます。その中でも、神谷さんは、山下さんが、コンサートマスターとしても、また、ヴァイオリニストとしても、全幅の信頼を寄せていらっしゃることは、素人の私にも明白です。神谷さんが、千葉響でソリストを務められるのは、今回が3度目で、一番多いことからも、よくわかります。名実ともに、千葉響の看板なわけです。2つ目のスローガンの象徴みたいな方ですね。

今回の君津のホールは、山下さんが千葉響のシェフになられた当初から、毎年必ず、千葉響を呼んでいます。山下さんのファンなのか、千葉響をもともと応援しているホールなのかは私にはわかりませんが(山下さんがシェフになられるまで、私は千葉響にほとんど関心がなかったので)、その甲斐あってか、客席もすごく雰囲気が良いんです。演奏前に、山下さんのプレトークがありますが、そのお話への集中力と反応が半端じゃありません。まぁ、これまでの6年間で、良い演奏を続けてこられた成果でもあるのでしょうけれど。

こういう状況ですので、私自身、かなり期待しておりました。そして、その期待をはるかに上回る名演を聴けたのでした。

神谷さんをソリストに据えての作品は、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。かなり有名な曲ですから、詳しくない方でも、耳にされれば、「ああ、あれか!」となると思います(ずいぶん昔に、「オーケストラ!」という外国映画が、異例のロングランになったことがありました。あの映画の目玉がこれです)。

私自身、大好きなヴァイオリンのコンチェルトですが、実は、山下さんと千葉響の組み合わせでの名演、まだ、聴いてなかったんです。山下さんと仙台フィルハーモニー管弦楽団とでは、CDになっている名演があって、私の愛聴盤の1枚です。ただ、演奏家にこだわる私ですし、世間で評価が高いからと言って、私に響くとは限りません。随分失望したことがあるから、そういうのですが、今回は大ファンでもある神谷さんですから、心配はしていませんでした。

オーケストラの疾走感あふれる導入部。その勢いを聴いているだけで、ワクワクしました。ただ、ソリストとオーケストラとのバランスが悪いと、この導入部での成功が帳消しになってしまいます。神谷さんの入り方を、注意深く見守りました。
神谷さんが、オーケストラを良く聴いてらっしゃるのがわかります。やがて、おもむろにヴァイオリンを構えて、弓を引きました。若干、弱い感じがしたので、心配したのですが、すぐに深みのある、強い音になって、オーケストラを鼓舞するようになりました。

以前の千葉響なら、神谷さんの迫力に押されていただろうと思います。けれど、コンビを組んで7年目の秋です。ともに、レヴェルアップしてきた同志なんですよね。神谷さんの音に、オーケストラが生き生きと反応していくのが、はっきりわかりました。山下さんの指揮を介して、ソリストとオーケストラが、対等にわたり合っての、”音の会話”が成立しているのを聴きとった時、私は泣きそうになっていました。

5年前、ソリストに完全に制圧されて、引き立て役になっていたオーケストラと同じとは到底思えません。目の前の素晴らしいチャイコフスキーを聴きながら、「よくぞ、ここまで・・・・・!」と、まぁ、保護者のような気分になっていたようです。

何しろ、全部で3つある楽章の完成度が、恐ろしく高かった。一楽章聴いたら、一曲楽しんだ気分になりました(チャイコフスキーのこの作品の第1楽章は、そういう気分にさせるもの持ってますが)。つまり、大きな作品とはいえ、”一粒で3度おいしい”ってな感じです。

しかも、神谷さんの音の切れ味は、演奏が進むにつれて、どんどんヒートアップしていきます。協奏曲というジャンルには、どういう楽器であれ、その楽器の独奏部分(カデンツァと呼んでいるようですが)があります。チャイコフスキーのこの作品の場合は、第一楽章に2回、そうした部分がありますが、いやもう、その音色のすさまじさと言ったら! 火花が激しく散って、聴いている私には、やけどしそうな熱さまで感じられました。

衣装が、黒を主体としながらも、赤のラインが斜めに走っているデザインのドレス。それを着て、ヴァイオリンを弾く神谷さんは、「アマゾネスだわ、こりゃあ・・・・・」と、うなるほどの圧倒的な存在感です。もう、ひたすらマスクの中で、「かっけーーーーー!!」と叫びつつ、ガッツポーズしていた私です。

エネルギッシュな中に、柔らかさやしなやかさもある神谷さんの演奏に、オーケストラが良く応えていましたし、山下さんも満足そうに指揮してらっしゃいました。

見出し画像のように、舞台では音に乗せたエネルギーが、熱く強く循環して、炎のようにすらなって、客席に届いてきました。外は大雨でしたが、ホールの中では、夏を思わせる空気が満ちていたんですね。

相方の567で、疲れもストレスも溜まっていましたが、このチャイコフスキーで、すっかり解消されたようです。

演奏が終わったら、万雷の拍手! 禁止されてはいたのですが、「ブラヴォーーー!」の声もかかりました。どなたかが、黙っていられなかったのでしょう(私は、もういいと思うんですけれどね)。演奏家の方々が、嬉しそうに拍手を受けて、お辞儀をされているのが、印象的でした。

この日のメインは、ドヴォルザークの8番のシンフォニー。ですが、長くなったので、今宵はここまでにしとうございますm(__)m

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