”ありがとう!”が、テーマのコンサートに行ってきました💖

先週の木曜日、つまり、3月30日の木曜日、久しぶりに夜のコンサートに出かけました。

先週は、日曜日にもコンサートがあって(それは午後2時からのものでしたが)、文字通り私には<コンサート・ウイーク>! しかも、どちらも千葉県でのものだったわけで、地元のオーケストラ・千葉交響楽団にとってもそうだったわけです。

この背景には、2022年度でホームホールが2つも閉館するという異常事態があるんですね。音楽監督であり、私の最愛のマエストロでもある山下一史さんは、コンサートのMCを務める中で、「2つも同時期に、ホームホールが閉館するなんて・・・、誰かに意地悪されているんじゃないかとすら、思えましたよ」と、嘆きを漏らされていました。

ソリストとして、あるいは、小規模の室内楽ならまだしも、オーケストラのコンサートとなると、本番はもちろんですが、リハーサルの場所も確保が大変です。最低でも20人以上は演奏家がいますし、オーケストラにはない楽器との共演となると、その楽器の配置の場所も必要です。防音設備もあって、音響もいい広い施設なんて、そうそうありはしませんからね。

「オーケストラには、ホールも楽器ですから」

その言葉に、山下さんの新年度への複雑な心境も垣間見した気がしました。あからさまな表現は避けておられたのでしょうが、26日のコンサートではMCもなしで、ほとんど言葉を発することがなかったマエストロ、思いの丈を爆発させるように、おしゃべりが止まりません。

コンサートは、チャイコフスキーの歌劇「エフネギー・オネーギン」から「ポロネーズ」の演奏で始まりました。これは、7年前の山下さんの就任記念コンサートのオープニングでもありました。コンサートの数日前に、千葉響のスタッフの投稿がFacebookにあり、この曲でこの日のコンサートを始めたかったのだ、という企画担当の方の声を紹介していました。この曲から、山下&千葉響の歴史は始まったのだから、と。

コンサートは「千葉響春のオーケストラ祭りーーありがとうコンサート」と銘打っていました。いろんな意味を込めた感謝を表すコンサートだということですね。

優雅に奏でられる演奏を聴きながら、美しく着飾った貴婦人たちがしなやかに踊るシーンを連想しました。実際舞踏会のシーンで演奏されるんですが、冒頭の金管楽器の響きが好まれるようで、しばしばコンサートのオープニングに設定されています。高らかに響き渡る音色が、コンサートの始まりを告げるには最適だということなのでしょう。

私自身のイメージでは、もう少し早いテンポの作品のように思っていたりしていたのですが、30日のコンサートで「あ、このくらいじゃないと、ドレスを着た人たち、踊れないよね」と、すとんと腑に落ちたのでした。

この演奏が終わった後、山下さんのMCが始まりました。クラウドファンディングを立ち上げ、見事購入できた5弦のコントラバスの紹介です。
何故、こうしたことをしてまで、千葉響に5弦のコントラバスが必要なのか。その理由を、実際に音色を聴かせて(コントラバス奏者の方が演奏するのですね)、具体的に説明してくださいました。同じ低音部を担当するチェロとの違いをも示しながら(これも、チェロ奏者の方が演奏するんですね)、「山下&千葉響が得意とする、ドイツの音楽家の作品を演奏するには、どうしても5弦のコントラバスが持つ、一番低い音域が必要なんですね」との言葉には、説得力がありました。
私など、楽譜も読めませんし、楽器のことも全然わかりません。なので、こうして音色を聴かせていただくのが、一番わかりやすいです。千葉響は、私が聴く限り、低音の魅力が強いオーケストラでもあります。そこを補強できたのは、良かったな、と思います。
このお話の後、首席コントラバス奏者の方が聴かせてくださったのは、サン=サーンスの「動物の謝肉祭」から「象」。コントラバスとピアノだけの演奏は、ユーモラスな雰囲気もありながら、コントラバスの低音が象のあのどっしりとした存在感を表していました。この時の楽器は4弦のコントラバスでしたけれどね。

そうして、前半の2曲の演奏。マーラーの交響曲第5番から第4楽章「アダージェット」と、メインのベートーヴェンの第5番「運命」。

山下&千葉響でマーラーを聴くのは初めてでした。また、山下さん指揮のマーラーで、いささか残念だった演奏を聴いたこともある私、若干心配もしたのですが、杞憂でした。山下さんが信頼するコンサートマスターの神谷未穂さんが、激務にもめげずご登場でしたし、万全の体制を敷いておられましたからね。やはり、指揮者とオーケストラに強い信頼関係があれば、どんな難曲でも挑戦できるのでしょう。

ハープと弦楽器での、上質なシルクのような演奏を聴きながら、「これなら、もう第5番全曲、聴かせていただける日も近いですね」と、マエストロの背中に心の中で、語り掛けたことです。マーラーはあまり詳しくありませんが、第1番の「巨人」や第2番の「復活」などは、私が好きな作品です。そうした大曲も、いずれは千葉で聴けそうですね。

ベートーヴェンの5番を、山下&千葉響で聴くのは、これで3度目のはずですが、安定感抜群でした。この作品の場合、どうしても冒頭の「じゃじゃじゃじゃ~ン♬」の繰り返しが有名なので、そこに注目が集まる傾向が強いのですが、私は最近自分の関心が変わってきたことに気づきました。名演であれば、むしろ後半の、生き生きした楽章の演奏が印象に残るようになったんですね。もちろん、この時も、そうでした。

後半は、クラウドファンディングで、千葉響との共演の権利を購入された4人の方々が登場。皆さん本当に達者で、これには驚きました。それに、本当に楽しそうに演奏してらっしゃるのも、素敵でしたね。夢を実現させた歓びを表現されていたのでしょう。それが客席にも伝わってきて、リラックスした明るい雰囲気に包まれていたのは、楽しかった。肩の凝らない時間をコンサートに作るのも、良いなぁと感じたものです。

コンサートの締めくくりは、スメタナの「ヴルタヴァ(モルダウ)」。上流からの小さな水の流れが、次第に太い流れになり、やがて大きな河に合流していく様を表現したものですが、もともと水の表現が巧みな千葉響。その美質を再認識しました。
ただ、これだけの演奏ができるのに、私がこの7年聴きたいと願っているシューマンの交響曲の「ライン」が、何故聴けないのかと、いささかもやもやもしたのです。こうした不満は、アンケートに書きなぐりましたがね(;^ω^)

山下さんは、このコンサート、ほとんどステージにいらっしゃいました。たいてい、一息入れるためもあってか、何度か舞台袖に引っ込まれるのですがそれが今回なかったです(もちろん、休憩はありましたけれどね)。いろんなコーナーもあったし、もともとの予定では2時間のコンサートでしたから、ご自身が動く時間を節約されるためでもあったのでしょう。

でも、山下さんの熱弁もあって、アンコールのドヴォルザークの「スラブ舞曲 第1番」の演奏が終わって、カーテンコールも終わって、時計を観たら、なんと! 40分の延長になっていました(;^ω^)会場の千葉県文化会館は、これが最後のコンサートですし、山下さんもやっと春休みに入られるのでしょう。
「今日は、暴れるぞ!」と、決めていらしたのかもしれません。ファンにとっては、なかなかお得なコンサートだった気がします。

会場を出ると、きれいな半月が出ていました。桜も頑張ってくれていたので、暖かくて美しい月夜のもと、名演の余韻を楽しみながら、帰途に着きました。
会場の文化会館は、これから2年3か月の大規模改修に入るのだそうです。さて、その時、どんなホールになっていて、山下&千葉響はどんな名演を聴かせてくれるのか。そんなことも考えたことです。

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