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TEDxKobe2022:回遊 参加記録

2015年から、TEDxKobeというプレゼンイベントにボランティアでスタッフとして参加させてもらっていたのですが、今年は色々ありましてスタッフは断念し、1参加者として参加させて頂きました!

前回の2019年の時はスピーカーチームのリーダーだったので、想いを込めて全スピーカーのトーク記録をこちらに書かせてもらったのですが、これをたまたまネットで見つけて読んでくれた福岡の高校生が、「面白そうだ」と思って神戸まで来て今回のボランティアに参加してくれるという、とても嬉しいことがありました。

なので、今年も記録を残しておきたいと思います。ただ今回はスタッフとしてではなく1参加者としてなので、もう少しライトに、そして忖度なく正直に自分が感じたことを書いていきたいと思います。
(また後日、動画が配信されたらそれも貼っておきたいと思います)

SHUさん(ハンドパン奏者)

最初に「ハンドパンという楽器を知っている方」という質問があり、元気よく手を挙げたのですが、その後「スチールパン」の話をされ、「正直、ハンドパンのことをスチールパンと勘違いしていたという方」という質問をされて、そちらにも元気よく手を挙げてしまいました。(笑)

ハンドパンの音はとても心地よく、会場のライトの雰囲気、映像も相まってとてもフワフワした、リラックスした気持ちになれる演奏でした。聴きながら、これは絶対に僕らがやっている活動「テントサウナイベント」に一緒に参加してもらって、この生演奏を聴いて「ととのう」を体感したい、みんなにしてもらいたい…!という気持ちが芽生えました。

というわけで、アフターパーティー時にSHUさんにお声がけさせてもらい、SHUさんもテントサウナに興味ある!ということで意気投合し、今度企画するイベントに参加して頂くことを約束しました。これだけでも、TEDxKobeに参加してよかったと思える成果でした(笑)


黒島慶子さん(醤油ソムリエール)

「醤油の良さを伝えたい」という想いで活動されている黒島さんのお話は、醤油の良さだけではなく、それを支える人たちに光を当て、素晴らしいものを残したいという想いを伝えて下さいました。

この手のお話は、ともすれば「日本の伝統的な技術を守りたい」という、センチメンタルでエモーショナルな話になりがちなのですが、黒島さんのお話の中で僕が心に引っかかったのは、「商品を買うということは、未来に何を残すのかを選ぶこと」という具体性のあるメッセージでした。

確かに、安いとかすぐに手に入るとか、そういう観点でモノを買いがちだなというのはその通りで、しかしその積み重ねが未来に何を残すのかを決めているのだ、ということは、わかっているようで意識していない事実でした。

そして、「日々の意思決定が未来を作って行く」というのは、商品だけではなく自分自身についても言えることだと思います。自分の意思決定について、もっと意識的に行わないといけないなと思わされるトークでした。


金谷一朗さん(STEAM編集長)

人間の脳は「知性」と「感性」の2つのタイプがある、という一般論から、かつての偉人が「思考」「直感」「感覚」「感情」の4つの機能があると説明した、というところに飛び、人間はどれか1つではなく4つ全ての機能を持っているのだ、という話をされていました。

平たく言うと、「人間の可能性を広げるためには、枠を取り払わなければいけない」ということ、だろうか…。お話そのもの、1つ1つのエピソードについては説得力があり、分かりやすかったのだが、最終的にこのトークをどのように消化すればいいのか、どう普段の生活に活かせばいいのか、というところまで僕は落とし込めなかった。そういう意味で、ちょっと悔しい。


西村周治さん(廃屋ジャンキー)

廃屋を改築して住み、また別の廃屋に引っ越して改築して住み、それを繰り返すうちに様々な人が集まり、廃屋を改築した村が生まれる、というとんでもないお話を披露してくださいました。

このトークを聞いた時、頭に浮かんだことが2つありました。
1つは坂口恭平さんの「独立国家のつくりかた」という本、もう1つは以前に僕が「発泡スチロールの家に泊まりに行く」という体験をした時にお会いした村上慧さんです。お2人とも、「土地は誰のものなのか」「なぜ生きているだけでお金がかかるのか」という疑問を投げかけており、そこからの脱却を図っているという点で似たものを感じます。そして僕は、どうやらこの手のお話がものすごく好きみたいです。(笑)

もう何を学ぶか、どう自分の生活に活かすか、ということはさておいて、とにかく面白いお話だった。(笑) 人間、何をやって生きていってもいいんだなと思わせてくれるトークで、「こうしなければならない」ということはないのかもしれないな、というように、視野や行動の可能性を広げてくれるお話だったと思います。


小田真人さん(ルールウォッチャー)

「多数決で決めるって正しいのか?」という子供のころに抱いた疑問を元に、成長の過程で様々な発見をし、それらが繋がって「これだ」と思える道に辿り着いたというストーリーは爽快なものでした。

「意思決定のもっと良い方法はないだろうか」というのは、僕も考えたことがあるのでこの疑問には素直に共感しました。しかしそこから、意思決定に至るプロセスを見守るという方法に辿り着き、それを実現してしまったという小田さんの情熱には敬意を覚えます。

トークとは直接関係ないところで、最近はロシアのこともあり「資本主義と民主主義の両輪は本当に人類にとって最良の統治方法なのか」という議論をしばしば見かけます。このルールウォッチャーという仕組みが、いつの日かその答えを出してくれるのかもしれないと、そんなことを感じます。

個人的には、この活動を会社としてやられているということなのですが、これってどうやって利益を得ているのか、マネタイズの方法という点がちょっと気になりましたw


豊永洵子さん(ダンサー)

いわゆるコンテンポラリーダンスというものでしょうか。テーマを全身で表現する、ということをされていたのですが、残念ながら私の席からはほとんど姿が見えなかったこと、そしてこの種のダンスに関してほとんど知見がなく、何をどう見ればいいのか、ということも分からず、ただ茫然としてしまいました。。(ごめんなさい)


久野華子さん(社会起業家)

ご自身の世界旅行の経験から、世界のいたるところにある「格差」を体感し、その疑問を解消するために、少し変わった人材派遣会社を立ち上げる、というお話でした。

「強い立場にいる人が、損をしてでも弱い立場の人に貢献することで、プラスの循環が生まれ、思わぬ利益を得ることができる」というロジックは、青くさくもとても希望に満ちたもので、世界のすべてがこのようだったらどんなにいいだろうか、という夢想を抱かせてくれます。

お話の中で、久野さんは「上司になる、先輩になる、取引先になるなど、誰もが強い立場になりうる。そんな時に、自分がその強い立場を利用して、弱い立場の人を雑に扱っていないか。そういう目で自分自身を見て欲しい」と言われていました。

「格差」という少し遠くのお話にも感じられうる物事を、身近な問題として感じさせてくれました。個人的には、会社で上司として部下に接するとき、喫茶店でオーナーとして従業員に接するとき、このような態度をしていないかどうかを振り返るよいきっかけになったと思います。


秋田大介さん(踊る公務員)

秋田さんは神戸市のある界隈ではとても有名な方で、私も個人的に存じ上げている方でした。本当に多方面に活動されている方なので、今日はどの話をするのだろうか…と思っていましたが、今回は被災地での支援活動から生まれた「アスミー」の活動を中心とした、「エンパシーを基にしたコミュニティ作り」というアイデアのお話でした。

コミュニティ作りや社会課題の解決を考える上でよく出てくるキーワードとして「自分ごと化」という言葉があります。その課題を、悩みを、どれだけ自分のものとして受け入れ、そして行動ができるか、というところが、これらの課題を解決する原動力になる、というものです。

誰かに何か大変なことが起きたときに、同情(シンパシー)を感じるだけではなく、相手の立場に立って考え、想像するという(エンパシー)が大事なんだ、というメッセージを伝えられていました。

個人的に、この話はその通りだと思っていて、もう1歩知りたかったのは「どうやったら、エンパシーを持って、自分ごと化することができる人を増やすことができるのか」という点です。これについてはまた、秋田さんとお話させて頂ける機会があればぜひ聞いてみたいと思っています。


首藤義敬さん(カオスクリエイター)

首藤さんは、「はっぴーの家ろっけん」という多世代型介護付きシェアハウスの代表をされている方で、肩書きの通り「カオス」な状況を作り出すプロの方でした。

1つの空間で、お葬式をしながら踊っている人がいる。おじいちゃんおばあちゃんが食事をしている横で子供が勉強し、若者が会議をしている。若者と子供とおばあちゃん、障害者、外国人が入り混じってテントサウナやスナックで遊んでいる。こんな見たことがない状態で、みんなが笑顔で過ごしている。写真を見ているだけで、涙が出てしまいそうになるプレゼンでした。

このプレゼンの中でとても印象に残ったワードは、「どーにもならないことを、どーでもいいことに」という、ポジティブな諦観でした。そしてそれを実現する一つの方法として「3つ以上の違和感が重なれば、どうでもよくなる」ということを言っておられました。これには「なるほど…!」とうならされました。

確かに、自分では対処ができないことがたくさん重なれば、逆に「どうでもいい」と思えるようになるというのは、実際にそういう経験をしたことがあるような気もするし、心理的にも納得できる話です。そしてこのアイデアのすごいところは、これを「能動的にやる」というところです。

世の中には、考えたってどうにもならないことはいくらでもあります。そんな時、1つ1つ考えてなんとか対応していこう、という道ももちろんありますが、それすら無理だとなったとき、むしろさらにどーにもならないことを増やして、その中でどう面白がれるかを考え、どーでもよくしてしまう。これはすごいアプローチだなと思いました。

ともすれば問題は解決していないのかもしれないが、そもそも問題なんていうものは人間の「心の持ちよう」であり、心がハッピーになれば、問題は解決していなくても解決していると言えるのかもしれない。そう思えば、どんなことが起こってもきっと大丈夫、と思えるような気がします。


イベントを終えて

ざっと感想を並べてきましたが、個人的にとても印象に残ったのは
 ・西村周治さん(廃屋ジャンキー)
 ・首藤義敬さん(カオスクリエイター)
のお2人の、アイデアというよりは「生き様」がとても心に残りました。首藤さんの「だらしなさを愛せ」、そして西村さんの「正解の反対にも意味はある」という言葉の通り、一見めちゃくちゃでなんだか間違っているように見えることでも、その中にそれぞれの宝があるんだなと思わせてくれ、生き方の幅を広げてくれるようなトークでした。


そしてもう1つ、今回個人的にチャレンジだったのは娘を連れてきたことです。前から連れてきたかったのだが、小学生だったこと、自分がスタッフなので会場でもずっとついていてあげられないということがあって躊躇していましたが、今回晴れて参加者として連れていくことができました。

ついでに、前回母も初参加して楽しかったと言っていたので、母も連れて行って親子3代での参加となりました。(笑)

まだ中学生で、自分が何になりたいのか、どう生きたいのかなんて全くわからないだろうし、(僕も全くわかっていなかった)日々の部活や勉強で手一杯な生活だと思うけど、それでも今日、様々な生き方をする人たちの話を聞いたこの体験が、いつかどこかで彼女の感性に良い影響を与えてくれたらなと願っています。

ちなみに母は最近「エッセイ」を書く趣味を見つけて教室に通っているようで、「いいネタが仕入れられた」とほくそ笑んでいました。そのエッセイも期待したいと思います。

スタッフのみなさん、登壇者のみなさん、おつかれさまでした!めちゃめちゃ楽しかったです!



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