ホラー小説「予感」

バイトが終わり、240円のうどんを注文しする。プライスレスな味に感動することはない。感情を使わないと、中学生の時に決意した。それから今まで何年が経つのか。ささやかな思い込みが深く人生に影響を与える。いわゆる、厨二病というやつ。

家に帰ると、21時が過ぎる。娯楽に溢れかえっている街にうんざりしていた。自分の気力の無さにはもっとうんざりしていた。

そんな現実から目を背けるように、早過ぎる就寝の準備をする。洗面台の前まで行き、なんとなく開いていたニュースサイトに目をやった。

しかし、疲れた脳には少量の記事さえ処理できないので、すぐにスマホを閉じた。

歯ブラシをくわえた時、数秒動きが止まった。どこに焦点を合わすことなく、数秒前に記憶をさかのぼる。

そうしてようやく、ニュースに掲載されていた写真に対する嫌悪感に気づく。

不吉な物を払い除けるように歯を磨く。


しかしその黒い感情は、口をゆすいだ水を吐くたびに大きくなっていった。

どうしてもあの目が、あの姿が、記憶から消えなかった。

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