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大事件

Untouchable:無敵の、手の届かない

そのコンビは名前の通り、無敵で手の届かない存在となりM-1グランプリを制した。M-1グランプリ2003の敗者復活戦で勝ち上がってきた勢いそのままに決勝トーナメントを突破して、翌年は前年も見ていることから真新しさが無く点数が伸びないという例年のブランクも無かったことのように673点という驚異的な点数で決勝トーナメントを勝ち上がった。今も673点という点数は超えられてないらしい。

M-1のネタでも有名なファストフードのネタだと、架空のもう一人との会話をネタに盛り込むところに新鮮味を感じた。山崎さんと架空の店員さんのやり取りの聞き間違いで笑いを生んだり、番号プレートじゃなく番号ジャケットを渡すというボケがあり、その後柴田さんが架空のお客さんを作り出し、「着てなきゃ出てこないんだよ!」とその架空のお客さんに言い返すツッコミで、観客は「あぁ、ジャケットについてイジられたんだ」と理解し、それが笑いにつながっていた。最近のテレビ露出も相まってボケの山崎さんが凄いように見えるが、実質はそのボケとツッコミの力関係はちょうど5:5なのがこのコンビの凄いところで、予想を超えるボケに対して予想を超えるツッコミで打ち返すのだ。先述した山崎さんと架空の店員さんとの会話の下りで、架空の店員さんがチーズバーガーをビートゥギャザーと言い間違えるボケに対して、「そんな事言ってねえよ」くらいのツッコミを想像するのだが、「見せてみろよ!この店のビートゥギャザー見せてみろよ!」とノリツッコミをする。「ボケがもう面白いのに、ツッコミがさらに面白いってなんだよ」と中学生の私は涙を流しながら笑った。
とにかくずっとずっと強かったし、面白かった。

Untouchable:手を触れてはならない、禁制の

何年か前、女性スキャンダルによるアンタッチャブル柴田さんの突然の休業により、2人の漫才を見ることは出来なくなった。私は、「まぁいつか復帰するだろうし、復帰したら漫才をするだろう。」と思っていた。甘い将来を見据えていた。ところが山崎さんは違っていた。今思えば、アンタッチャブルの将来を一番に考えていたのは山崎さんかもしれない。山崎さんは柴田さん復帰後もネタ番組などで漫才をすることはなく、漫才が見れなくなってから10年が経過した。その間に、柴田さんに復帰について切り込む番組があり、その柴田さんの回答で一喜一憂したりもした。でも山崎さんはテレビで、柴田さんはネタ番組でネタをする機会も増え、どこか「一人でそれぞれが活動できていけているし、こんなに長いこと組まないのは事務所の方針なども働いていて、もう2人の漫才を見ることはないのかな。」。そう思うようになっていた。

2019/11/29

その日は、金曜日で明日が休みな分、帰宅後は湯船につかったり、ビールを2本開けたり、だらだらと過ごしていた。そしていつも通り「全力タイムズ」と「ネタパレ」を見て寝る。そんないつもの金曜日だった。
「全力タイムズ」のゲストは芸人(ツッコミ枠)がアンタッチャブル柴田さんで、俳優(ボケ枠)が新木優子さん。
他番組のオマージュもする自由度の高さが好きで毎週のように見ていた。
この番組もある程度パターンはあって、前半はフリップを使ったニュース、後半は芸人さんのネタ見せコーナーの構成になっている。
今思えばこの日のための伏線だったのかとも思えるが、大体コンビの芸人さんが呼ばれていて後半には相方が呼び込まれるのだが、毎回違う人が呼び込まれて上手くいかないというところが笑いを生んでいた。
アンタッチャブル柴田さんも例によって、ザコシさんや小梅太夫さんなどが相方として出てきてありネタをめちゃくちゃにして終わる。
今回もそのコーナーに移ったあと、山崎さんとして呼び込まれたのは俳優の小手伸也さんで、その風貌が似ていることでまずひと笑いが生まれた。
今回もこのような掛け合いで声が小さいとかで上手くいかずに終わる流れか、逆に熱が入り過ぎて空回りする流れかある程度想像しながら見ていた。
案の定、漫才の途中で小手さんは狼狽し出し、セリフを忘れるという言い訳から喧嘩になって一度小手さんがはけてしまった。
そのあと、また呼び戻す流れになり、違う人が来るパターンかなと思い、小梅さんが出るのかなと思っていた。
有田さんが誰かを呼び込んだ時の柴田さんのリアクションで全てを悟った。
2人が画面に並んだ瞬間を見た時、一瞬で涙が出ていた。
そして、有田さんの番組で復帰したという事実に気付き、リチャードホールの栗井ムネ男のコント番組から有田さんとの師弟関係は知っていたため、感動したのを覚えている。手に持ったビール缶も震えていた。
有田さんも番組の演出上、冷静なキャスターという役になりきっているのだが、あの日の有田さんの声には、そんな役割も取っ払った、うれしさがにじみ出ているように聞こえた。
「それではアンタッチャブルさんの漫才です!!」。
テレビってやっぱり良いなと思えた瞬間だった。

復活へのシナリオ

復活してすぐコンビを組んで漫才をしてということは簡単だったと思う。でも、山崎さんはもっと先のことまで考えていた。
結果、不祥事を起こして、復活してから10年の期間が空いた。
でもその10年は、当時浴びるはずだった罵声や、当時抱かれるはずだった反感をゼロに減らした。
そして、完全に待ち望まれている状態でアンタッチャブルは復活した。
山崎さんの復活に向けたシナリオは、完璧だった。これが本当の復活なんだと知った。
もしかしたら、裏に有田さんの影があったかもしれない。
ロンブー淳さんが亮さんのために株式会社を立ち上げた記事が話題になっていたが、こんなに自分の人生を考えてくれる人という職業は非常に稀有なものだなと思い、同時に羨ましく思えた。

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