ヴィジョンとマスター

Command-Vision2-2

 次の対戦の為、私たちは再び町に移動する。
「次どんな相手だろうね」
「ああ、一応決まってるけど情報見る?」
「んー、そうね。見ておこうかな」
「!」
「えっ何?」
ヴィンテージは私を抱えて駆け出す。次の瞬間、私が立っていたところに来る大きな衝撃。真上から何かが降って来たことは分かったが、確認する暇もなくヴィンテージがその何かに足技を繰り出す。バチンと激しい音がして、次の衝撃が襲ってくる。目を開けると、彼は私を庇ってその何かに思いっきり殴られていた。
「ヴィンテージ!」
勢いを殺せず、ヴィンテージは私を抱えたまま地面に転がる。私が怪我をしないようにしながら。ヴィンテージの機体がピーピーと警告音を鳴らしている。襲来したモノは彼が立ち上がろうとする後ろで更に攻撃を加えようとする。いけない、このままじゃヴィンテージが壊れちゃう。私はとっさに後ろに落ちていた何かを掴んだ。バールのようなパイプのような鉄の棒だった。落ちてくる何かに向けて、私は思い切り棒を突き上げる。向こうはそれに気付いて、ギリギリのところで棒をかわし大きく後ろへ空転する。止まっていた息を整える私。やっと立ち上がろうとするヴィンテージ。それから、やっと認識出来たその何か――それはアンドロイドだった。
「”虫も殺せないような顔”してると思ってたんだがそうでもないらしいな!」
砂埃の向こうで彼は高々と嗤う。男性型……設定年齢は青年か成年だろう。マスターはまだ見当たらない。埃が落ち着いていく。現れたのは――ヴィンテージにそっくりなヴィジョンだった。
「……」
パーツが共通していれば似ることもある。ヴィンテージはそう言っていた。でも私の目の前に現れたのはヴィンテージそのものだった。同じ機体、同じ服、同じ声の別のアンドロイド。これは――。
「貴方、ヴァイオレットね」

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