物理が生む文化の違い

気候・風土の違いから文化の違いが生まれる。そんな話の農業版。

以前ある園芸関係のメディアの方から取材の依頼があった時、面白いお話を色々聞くことができた。

出版社は大体東京に集中しているので、どうしても情報源は関東ものが中心になる。ノウハウ本、マニュアル本ならどんな分野でも一緒だろう。ところがこれが園芸の情報となるとちょっとした問題が起きる。何せ地域によって土が全然違う。

土が違えば当然そこにあった栽培方法も変わってくるから、東京近県でのやり方を載せても、他の地域から「その通りにできない!」というクレームが入るらしい。

関東は関東ローム層といって(教科書に載ってるやつだ)黒い、サラサラ、パラパラの軽い土が中心なのに対して、たとえば関西でよく見かける土は砕けた花崗岩質、真砂土で白くて重い。ある関東の人が関西の畑を見たときには駐車場みたいだって思ったそうだ。

この西と東の土の違い、作物を栽培する場合に色々問題を引き起こす。

たとえばトラクターで畑を耕すロータリー(一般的なトラクターの後ろについているパーツ)、中で何枚も並んだ爪がぐるぐる回転して土をかき回す仕組みになっているのだけれど、この爪の摩耗のはやさが西日本と東日本で数倍違うらしい。関東の土壌だと軽いのであまり減らないのに対して、関西の土壌だとすぐにすり減ってしまうそうだ。

畝の作り方も関西と関東で違う。関東の土で関西のやり方をすると、土が軽いから風で崩れてしまう。

そんな栽培上の問題があると、文化にも違いが出てくる。

分かりやすいのがネギで、関東だと白ネギを主に見かけると思うのだけど、関西だとネギといえば大体青ネギだ。うどん、そば、ラーメンだってまず青ネギだ。京野菜の九条ネギももちろん青ネギ。

白ネギを作るには、ネギを植えて、成長にしたがって土をかぶせていくということをする。土に埋まったところは緑にならず、白いままのびていく。だからあんな風になる。

でも関西だと土が重いから、この「土をかぶせていく」という作業がそう簡単には出来ない。だから白ネギの生産もゼロじゃないけど、ネギを作るとなるとまずは青ネギになる。

関東と関西との食文化の違いはよく話題になることだけど、ネギに関して言えば元をたどればこんな単純な自然環境の違いに行きつく。

知らないだけ、気づいてないだけでそういうことって多分他にもたくさんあるんだろう。


トップの写真は農場で現在収穫中の九条ネギです。

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古荘貴司

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