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これからの時代のセラピストのキャリア形成

VUCA時代とは?


VUCA(ブーカ)時代という言葉をご存知でしょうか?

これはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の四つの言葉の頭文字を並べたものです。これは元々は軍事用語なのですが、今の世情を表現する言葉として至るところで使われています。

例えば新型コロナウイルスによるパンデミックやロシアのウクライナ侵攻、そして数ある大規模な自然災害などがその代表例として考えられています。

このようにあまりにも予測不可能なことが起こる世の中だと、一昔前のように未来から逆算して計画を立てる”コーゼーション”と呼ばれるスタイルでは、今の時代にはなかなか通用しなくなってしまいました。

代わりに柔軟な発想で随時軌道修正しつつ最善を目指すスタイルがあらゆる分野で求められています。これはセラピストやインストラクター、トレーナーなどいわゆる"Bodyworker"の世界でも同様です。

しかしながらBodyworkerの方々からは自分でプログラムを考えるのが不安だという声もよく耳にします。今ひとつ自分の知識や技術、見立てに自信が持てないというのがその理由のようです。

なので何かしらの資格を取得したりメソッドを習いに行ったりして、具体的なアプローチ方法を教えてもらってそれを忠実に守るというスタイルを実行している方も少なくない印象です。しかしながら自分のやっていることに自信が持てないと、次から次に講座をハシゴして新しいものを追求するようになりキリがなくなってしまいます。

そして何を学んでもマニュアルから離れられなくなってしまい、やがて不満を感じてまた新たなスキルを習得しにいくというサイクルに陥ってしまいがちです。

”型なし”と”型破り”

もちろん何もベースがない中でのいきなりの自己流は何事も考えものです。
やはり最初は何かしらの型を習得することが上達への近道です。その後、自分なりのスタイルにアレンジしていくのが理想的な流れではないでしょうか。

人が何かしらの動作に熟達していくには【定型的熟達】と【適応的熟達】の二つの過程を経ると心理学では考えられています。

【定型的熟達】とはマニュアルなどの型を覚える過程で【適応的熟達】とはそれをベースに自分らしいやり方にアレンジしていく過程です。この段階を経て熟達者への道を歩み続ける準備が整います。

また、古くからさまざまな芸事が盛んな日本にはその言語に”型無し”や”型破り”といった用語があります。

”型無し”というネガティブな意味を含む言葉がこの状態を指しています。
一方でしっかりと型を習得した上で自分なりにアレンジしていく姿は”型破り”と評され、こちらはポジティブな意味で使われます。

まずは一通りの型を習得してからそれを乗り越えていく”型破り”のスタイルが古くから良しとされていた歴史を垣間見ることができます。これは古今東西に通用する真理かも知れません。

熟達の道を歩むには?

ではいかにして型を破って独自のスタイルを築き上げていけば良いのでしょうか?

そのためにはまずは体系だった知識の習得と、それを自在に使いこなせる思考力の二つが何事においても必要不可欠です。

この二つは"How to"のように簡単に身につくものではなく習得に時間もかかるので大変ですが、ここをスキップしているとある程度成長した時にそれ以上の応用が効かなくなってしまいます。となると一見すると遠回りに見えますがやはり地道に学びを続けていく必要があります。ついつい"How to"を知れる即効性の高いものに惹かれがちになりますが、体系だった学習をせずにつまみ食いだけしていても、やがて全く応用が効かない状況に陥ってしまいます。

例えば何らかの不具合が生じた時に「生理学的に体にどのような反応が起きるているのか?」を理解できていると不具合が生じた際にその原因を推定して対策を講じることができます。また、世の中に溢れる雑多の情報の中から理にかなっているものとそうでないものの選別をすることのできる力も身につきます。

Bodyworkerの仕事のやりがいとは?

そして何より自分の得意技を磨いて、自分ならではの世界観やアプローチ方法でクライアントさんに向き合うことができるということ事実はそのまま仕事のやり甲斐につながるのではないでしょうか?

自分の世界観をしっかりと形作り、それを発信して必要としてくれる人に届けること、そして知識、技術を磨き自分を必要としてくれる人たちを実際にサポートできること、ここにこそ社会とつながる実感を持てる喜びの源泉があります。このように仕事ができれば自分ならではの価値を世の中に提供することができます。

クライアントさんに対してどこかの誰かが考えた技術でやるのか、自分の人生をぶつけて作り上げた技術で向き合うのかでは全く意味合いが変わってくるのではないでしょうか?誰でもできるような内容であればそもそも自分がやらなければいけない理由もなくなってしまうかもしれません。

セラピストによる技術のばらつきを避けないといけない大手のマッサージ店などでは逆に個性を出さずに同じことをやらないといけないかもしれませんが、個人で活動されている方は全く逆のことをしなければ集客も難しくなり、事業として継続させていくことは困難になるでしょう。

もちろん何らかのマニュアルを作ってそれを世の中に発信していく役割を担う人も必要でしょうが、自分独自の世界観を大切に自分なりの仕事のスタイルで活動していきたいと考える人達も大切な存在です。そして後者を目指す人の方が多数派ではないでしょうか。

これからのBodyworkerのキャリア形成に必要なもの

セラピスト、インストラクター、トレーナーに代表される”Bodyworker”と呼ばれる職種は世の中のニーズの高まりもあり、今では大変人気のあるものになっています。それは同時に周囲と同じことをしていては仕事を作ることができない厳しい現実が存在することも意味します。

こうした時代だからこと、しっかりと体系だった基礎医学の知識をベースに、更なる学びと経験を積み重ねていくことが大切だと思います。更にそこに自分ならではの世界観を掛け合わせていくことが誰しもに求められてくる時代になるのではないでしょうか。自分がやることの意味も積極的に作り出していかないといけません。

確固とした医学的な基礎知識と自分ならではの世界観、この二つがこれからのBodyworkerのキャリア形成には必要不可欠になると考えています。

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