第九回 福沢諭吉『人生の楽事』要約

(1)人間にはみな何かしらの楽しみがある

それは趣味であったり、金を溜め込むことであったり、なにか大きな野望であったり。ひとそれぞれですね。

(2)わたしにとっての楽しみは物理学だったのです

もともと儒学を勉強していたのですが、西洋の学問、とくに物理学にはハマっちまいましてね。しかし、経済環境の具合で思うように研究することができなかったのです。それからもずーっと未練はありましたが。

(3)物理っておもしろいんですよ

物理にはまだまだ解明されていない謎が多くあるんです。知れば知るほど疑問が出てきてね。この探究の幸せに比べれば、金持ちになって裕福な暮らしをする、なんてのは、オモチャみたいなもんですな。

(4)日本も科学をリードしていく時代に

日本に西洋の学問が入ってきたのはつい最近のことですが、
もともとベースがあったから、もう追いついている印象ですね。
これからは日本も先頭で旗を振っていける時代ですよ。

(5)問題は学者が貧しいことです

わたしの頃から変わっていない問題としては、学問に専念しづらい環境だ、ということです。高尚で抽象的なものを追求しようとすれば、どうしたって頭は生活から離れていないといけません。

(6)政府はアテにならん

ではその資金をどっから引っ張ってくるか?
政府?あんな俗っぽい連中は鼻から頼りになりません。
かといって投資家を募ろうにも、「利益」を考え始めると、
研究そのものが歪んでしまうおそれがある...。
研究というものは実用的でないものでもよいのです。
むしろ、そういう高尚で深遠なものにこそ自由に研究できるサポートが必要なのですが。

(7)「放し飼い」が学者にとって理想な環境

要らんプレッシャーをかける必要はありません。学者という人種は楽しみで研究をやっているのですから。ほったらかしておいても、持ち前の探究心でどこまでも行くでしょうよ。

(8)以上はわたしの妄想なのであるが!

失礼、現実的ではないわたしの理想を述べました。じつはこのことは親しい友人にしか話したことがないのですよ。言ってもしゃあないことですからね。
しかし、慶應義塾の若い皆さんがこういう理想郷で学問に専念できたらならば、わたしとしてはたいへん嬉しいのです。

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