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わたしと高知県

今年(2023年)春からはじまる朝ドラ『らんまん』は、「日本の植物学の父」と呼ばれる植物学者・牧野富太郎(1862 - 1957)をモデルにしたドラマである。牧野富太郎は高知県で生まれ、学歴がないにもかかわらず、ほとんど独学で植物分類学を究めた植物学者として知られている。「雑草という名の草はない」の名言でも知られている。何年か前に彼の「自叙伝」を読んだが(「青空文庫」でも読める)それこそ波瀾万丈の生涯を送った人物で、一般的に地味な科学者の人生とは異なり、ドラマのネタとして大いに受けるように思う。このドラマをきっかけに高知県の観光収入は上昇するにちがいない。余計なことだが、高知県と言えば土佐藩、土佐藩と言えば坂本龍馬しか思い浮かばないの人たちに対しては、何らかの効果があるかもしれない。
 
ちょっと脱線するが、今年の大河ドラマ『どうする家康』は、家康が生まれ育った愛知県や静岡県が最初の舞台になっている。最近のNHKはドラマの売り込みに熱心で、民放に勝るとも劣らないPR合戦を繰り広げている。それ自体に対して文句を言うつもりはないが、主役を務める松本潤がどうしたこうしたということまで「ニュース」の中で取り上げるのは、さすがにいかがなものかと思う。「どうしたNHK」! こうしたことを続けていると「どうするNHK」的な批判が加速するような気がする。
 
閑話休題、わたしは高知県に行ったことはない。それどころか、四国に足を踏み入れたのも人生でたった1回(1日)だけ。二十代の頃、親戚が住んでいた山口県の周防大島に遊びに行った。そのとき周防大島からフェリーに乗って愛媛県の松山まで行ったことがある。日帰りだったので、松山城と市内をちょっと見ただけで道後温泉さえ行かなかった。
 
それでも意外と高知県とは縁がある。牧野富太郎に興味を持ったのもその一つ。わたしが敬愛してやまない物理学者・寺田寅彦(1878 - 1935)は生まれこそ東京だが、幼くして高知県に転居し、熊本の旧制第五高等学校に入学するまで高知で過ごした。高知県立文学館には「寺田寅彦記念室」もあるとのこと。彼の随筆はほとんど読んでいるはずだが、高知のことを意識して読んだことはないのでわからないけれど、ひょっとしたら高知での思い出話も載っていたかもしれない。そのうちまた読み直してみよう。ついでに書き加えておくと、寺田寅彦は夏目漱石と縁が深いので、漱石が教鞭を執っていた松山や愛媛県とは何らかの関係があるかもしれない。
 
わたしは中年の域に達してから大学に再入学し、さらにその後、大学院(その大学とは別の大学院)に進学した。そのことはnoteのどこかで何度か触れていたように思う。昨日の投稿「「諦め」こそわが人生」でも書いたように、個人経営の学習塾に勤めていた。そこで子どもたちを教えていると、自分ももっとしっかり勉強しておけばよかったと後悔する気持ちもうまれてきた。ちょうどその頃、自分の人生に決定的な影響を与えた一冊の本と出逢った。タイトルは『生命学への招待』 本の内容については一言二言で書けそうにないのであえて省くが、こんな研究をしてみたいと強く思った。その二つのことが主な理由となって、再び大学を受験しようと決めた。もちろん実際に受験するまで、いろいろ逡巡もしたが、こころの根っ子は揺らがなかった。
 
さて、その『生命学への招待』だが、著者は森岡正博(1958 - )さんという当時新進気鋭の哲学者(倫理学者)で、この本は森岡さんの単著デビュー作だった。哲学者といっても古色蒼然とした哲学を語る人ではなく、自らの言葉で自らの「哲学」(学問)を構想しようとする意欲に溢れているように見えた。森岡さんは高知県で生まれ、物理学を学ぼうと東大に進学するも、哲学や倫理学に転向。この経歴にも惹かれた。それ以後、森岡さんの著書は、少なくとも単著はすべて買って読んできた。すべて理解できたとは言いがたいが、いつも刺激を受けてきた。ほとんどファン心理に近い。ここでも高知県との縁が結ばれている。
 
もう一つ思い出話を書いておこう。大学院修士課程に在籍していたとき、別の研究室に所属していた同級生(もちろん同級生といってもずっと年下)の女子学生が、カツオのタタキを食べるパーティーを開いてくれた(画像はそのパーティーのときもの)。いうまでもなく彼女は高知県の出身で、カツオのタタキは彼女の実家から直送されてきたもの。彼女の実家が漁師というわけではなかったように思うが、本場のカツオのタタキを堪能した。正直なところ、わたしは魚料理が苦手で、それまでカツオのタタキもあまり食べたことがなかった。ところがこのカツオのタタキときたら、得も言われぬ美味しさで、それ以来カツオのタタキが好物の一つになった。とはいえ、本場のカツオのタタキなど簡単に手に入ることはないし、本場物でなくとも、昨今の物価高などでなかなか口にできないのが現状だ。
 
雑草の話ではじまりカツオの話まできたところで「わたしと高知県」は終わりとしよう。今後、実際に高知県を訪れるのはむずかしいだろうが、新種の植物を探して山野を駆け巡り、夕食にカツオのタタキを食べる夢でも見られたら幸せというものだ。
 
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