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『旧市町村日誌』37 なりたい大人、ありたい自分 文・写真 仁科勝介(かつお)

3月22日に東京で開かれた「18歳の成人式」のあと、すぐに鹿児島へ戻って旅を再開する予定だったけれど、東京で必須の予定が一週間後にできて、あと一週間をどうやって過ごすか、考えることになった。

 そして、東京ではなくて、辞めてから4年間一度も挨拶に行けていなかった、地元の写真館を訪れた。地元に帰った理由もそれぐらいしかなかった。4年間、一度も挨拶に行けなかったのはかくかくしかじかだが、要するに、後味の悪い辞め方だった。これまで地元に帰ったときも、写真館の近くには足が進まなかった。それを忘れるために東京で過ごしていた部分もあった。それでも小骨は小骨なので、刺さったままチクチクしていた。

 それが、ここ数ヶ月いくつか心の揺らぎがあって、初めて変わらなきゃいけないタイミングだと感じられた。変わっても良いんだ、と信じられるようになった、という方が合っているかもしれない。伏線みたいに目の前に現れた出来事に従うことに、カッコ悪さもプライドも感じなかった。それに、もしここで変われなかったら、このままだとも思った。

 写真館に挨拶へ伺った時間は小一時間ぐらいで、対面で向き合って、目を見てきちんと話ができて、心の おりが涙になって、たくさん流れ出たように思う。悪い涙じゃない。次に進むための涙がいっぱい出た。


で、18歳の成人式の話に戻ると、「大人になるって何だろう?」という問いかけがあった。自分の弱さと向き合うこと、夢を信じて進むこと、経済的に自立すること……と、これも十人十色の答えがあるだろう。そして、この話題が出たとき、自分はまだはっきりと浮かぶ答えが出なかった。

 それが今、自分なりに多少は考えを持てるようになった。それはただ、自分にとってのありたい自分に近づけるように、がんばってみること。「なりたい」という希望から、「ありたい」という着地へ進むこと。失敗があれば反省をして、恥をかけばそれを踏み台にして、また一歩、その先へ向かうことを繰り返すこと。もちろん、ペースは無理なくでいい。ただ、その繰り返しが、ちょっとずつ、大人への道になっていく気がした。ここ数日、ちょっとだけ自分も変われたような気がしたから。ほんの水一滴ぐらいだけど。

 自分との対話はいつだってできる。自分が自分に嘘をついているかもわかる。そのわかっているという、逃げられない苦しさが苦しいし、ひるがえって生きがいにも感じられる。



仁科勝介(かつお)
1996年生まれ、岡山県倉敷市出身。広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
2023年4月から旧市町村一周の旅に出る。



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