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086話:仮縫いのやり方(ZinRyuの場合)

仮縫いとは:

靴のビスポークでは、採寸した後に個々の足に合わせて木型を製作します。それゆえに、それだけ攻めて木型を削り込めるため、よりフィットし無駄のないフォルムを実現できます。

「仮縫い」とは、そのフィット感やフォルムを確認する工程です。通常は履く人が作り手と協力して、フィット感などをブラッシュアップしていきます。

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採寸 → 仮縫い →引き渡し時の調整

ZinRyuが普段行っている仮縫いの手順:

1)仮縫い靴を履く

10分ほど置いて、革のテンションをチェック。革が適度に足に密着しているか、局所的な締め付けがないか。見るところは色々ありますが、木型作成時に意図したフィット感かどうかを重点的に見ます。

ここで、注意点が必要なのはすぐに判断しないこと。革は人が履いてからしばらくすると、馴染む。とはよく言いますが、実は人間の足も革靴に対して馴染んでいきます。

よくフィットしたビスポーク靴の仮縫いを行ったあと、自分の既成靴を履けば、多少フィット感が緩くなっているのが確認できると思います。

これは感覚だけの問題ではなくて、多少足が縮んでいるため。

通常のビスポークメーカーは、これで終わりですが、ZinRyuの場合は続きがあります。

2)その場で木型を修正する

1)で得た感触をもとに、木型を修正していきます。

修正の方法として、2つあり、木型を小さくする方向で削りをかけること

もう一つは、革などを貼って、部分的に大きくすることです。そうすることで仮縫い靴を履いた情報を取り入れて、よりフィットするように木型をブラッシュアップしていきます。

3)その場で仮縫い靴を作り直す

その場で仮縫い靴を、作り直しています。

4) 1)−3)を納得いくまで繰り返す

過去最高、4回繰り返したことがあります。ちなみに1)の段階で意図したフィット感とあまりにもかけ離れている場合は、木型を製作し直すことにしています。

実は仮縫い靴はすぐに分解、再度釣りこみするために、簡易的な作りです。


なぜ、この方法なのか?:

理由は大きく分けて2点。

1)木型を削る上で最も必要なことは自身の感覚で、感覚が鮮明なうちに修正するのがいい靴にするための近道だから

木型を製作・修正する際に、私は数値より感覚を優先します。たしかに数値は変わることもないし、いつでも再現できますし、重要だと思われる方は多いのですが、あくまで局所的にしか捉えられません。

その点、手の感覚は足の柔らかさ、ハリ、カーブの曲率、多くの情報を鮮明にスキャンすることができます。履く人の足を手で感じ、手が導くままに木型を作成するのが、これまでの経験からいい靴を作るのに不可欠であると思っています。

2)修正は何度か行うことで大胆に木型の修正を攻めることができるから

修正をその場で何度か行えるようにすることで、木型を修正するときに大胆な仮説を立てて、より攻めることができます。

通常のメーカーのようにチェックだけで終わらせてしまうと、フィット感を確認できるのが完成時になるため、すこし安全サイドに修正の方向を振ってしまうケースがあります。

ですが、このやり方は「失敗したらやりなおせばいい」といったことが可能なため履く人、作る人双方が一緒に考えていきやすいのです。


スーツのビスポークでは、その場でバラして縫い直して再度フィッティングすることもあり、合理的な方法であると個人的に思っています。

靴作りをされる方のご参考になれば幸いです。

ZinRyuのツイッターはこちら。


気軽にカジュアルに履く方も作る方も革靴を楽しんでいただきたいので、有益な靴や革の情報を基本的には無償で公開していきたいと思います。 皆様のスキやサポートのおかげもあり、何とか続けてこれました。今後とも応援していただければ嬉しいです!何卒よろしくお願い致します!