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050話:JapanLeatherAward 2013

黒桟革の藍染を開発したお話。これはJapanLeatherAward2013に挑戦する為に開発していました。テーマは「とびっきりのスタンダード」

奇をてらわない、それでも(通常の)スタンダードとは違う。そんな相反することを求められている…

そんな難解ともいえる課題に対し、レディス靴部門で出品することにしました。(前回、応募した2012年はメンズの靴)制作したのはロングブーツ。

◆作品のコンセプト

雨との共生がテーマ。

通常のスタンダードである『足と脚にフィットする肌触りと使い心地』を踏襲。『雨で育つ美しさ』を新たな雨靴のスタンダードとして提案。

通常、雨の日に履いていく革靴となると、「劣化しない」「雨に強い」という今の靴の状態を極力損なわないための靴がほとんど。

でも、雨の日だから履きたくなる、雨のひに履けば履くほど美しくなる靴。雨と靴との関係をより良いものにしたい!そのためには本藍染黒桟革の開発が不可欠でした。

◆雨で育つ美しさが本藍染黒桟革にある

黒桟革の漆、それに本藍染。その2つの要素が「雨で育つ」を成立させます。

漆:
漆は水で磨かれるほど艶が冴える特徴があります。古い漆のお椀、古美術館で展示されているものもあり、それは途方もない回数、汁物に使われ水で洗われました。それでも、新品のものより輝きが増している。

本藍染:

使い古した藍染の剣道着なのですが、水で洗われるほど、味のある模様が浮かび上がってきます。藍染の靴は刻まれた履き皺から、唯一無二の色落ち模様が現れます。

雨に打たれるたびに日々美しく成長する。雨に耐える靴は欧州から生まれましたが、雨で成長する靴を日本発で出したかったのです。

◆結果は?

一歩のところで、グランプリ逃しました。プロの審査員にはグランプリ作品以上に高い評価を頂いたのですが、一般から選出された審査員、通りがかりの方の審査で及ばずでした。すべてのコメントと採点結果を載せます。

ちなみに受賞されたのはこちらの靴。

今思えば、自分が全力を尽くし練りあげた木型・シルエットに、技術の粋を尽くした新開発の本藍染黒桟革を掛け合わせれば、まず負けないと思っていたところに奢りがあったのかもしれません。

この結果が、木型・革研究に没頭しがちだったマインドを、少しだけ一般の履くひとに目を向けるきっかけになったのかもしれません。対象である靴・革は、人に寄り添ってこそ価値を持つのだと。

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