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【易経名言】虎の尾を履むも人を咥わず【10䷉天澤履】

履虎尾。不咥人。亨。

虎の尾を履(ふ)む、人を咥(くら)わず、亨る。

「虎の尾を履む」とは極めて危険なことの喩えだが、出典である天沢履の辞には、分外の危険を冒しても虎に食われずに最後まで仕上げることができるとある。「履」とは草履の履で、「踏む・履む」という意味がある。何を踏むかというと「礼を履む」のである。分外の大業を為すという自覚があれば、力のある人(虎)に頭を下げ、謙虚に物事を学ぼうとする。その姿勢を貫けば、困難や危険を乗り越えていけるということだ。(12/10)

[出典:「易経」一日一言/竹村亞希子(致知出版社)]

前の小畜を上下反対にするとこの形になる。序卦伝には、もの畜(あつ)まれば礼がなければならね。だから履の卦が小畜に続く、という。序卦伝は履を礼と解するわけである。礼と履は同音(li)、礼は人の履行すべきものだから、礼を履と訓ずること、普通ではあるが、易の卦辞辞では、ただの履むである。
この卦は下が兌、上が乾。兌には沢とか説ぶ、和らぐの意がある。
は剛ばかりなので、最も剛強なるものの象徴。は剛強ののすぐ後ろにおる、虎の尾を履む象である。ただしは☱和らげ悦ばす徳があるから、虎に噛まれずにすむ。そこで卦名を履むとし、思うこと亨ると占断の辞を下す。繋辞伝によれば、易の興るのは、周の文王が暴君のもとに苦しんだ時に当たる。されば易の卦辞は危機感に満ちるという。この卦のイメージはまさにそれである(『周易折中』)。この卦を得た人、和らいだ態度で危機に対処すれば傷つかずにすむ。(p.125)

[出典:易/本田濟(朝日新聞出版)]

乾は天で上にありその在るべき所に在る。兌は沢で低いことが恒常の位置である。居るべきところに正しく居って取るべきところを正しく取る。君は君のように、臣は臣のように、上下尊卑の分をわきまえ正しくする。それが礼儀というものである。人が必ずわきまえて履み行わなくてはならない。それが礼儀である。内卦は少女(兌)弱々しくおとなしい。外卦は健やかで強く逞しい。強靭で速く歩く行く者(乾)のうしろを、力の弱い者(兌)がついて履んでゆく。逆なら易しいがこのシチュエーションは並の辛さではない。だからこれを行き難い象と見る。「言うは易く行うは難し」が礼であるという意味にもとれる。
強い人と一緒に行こうとするのは大変な努力をしなくてはならない。
そういう困難に臨んでも、常に和やかで温かい使命に殉ずるという悦びの心(兌)で励んでいくならば、高い地位にある者(乾)から決して危害を加えられることはない。これが『虎の尾を履む。人を咥わず。亨る』の境地である。

[出典:易学大講座/加藤大岳] 

易学参考文献


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