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脳腫瘍と診断された話1

「脳に影が見える」


2021年5月上旬、予期していなかった結果をすんなりと受け入れることはできなかった。
その1ヶ月前、もともと10年以上頭痛に悩まされていた僕は「頭痛の原因が分かればいいなー」という簡単な気持ちから、人生で初めての頭痛外来を訪れた。
その病院は、初診の患者にはすぐに薬を出すのではなく、一度MRIを撮ってみましょうというのが基本的な方針で、僕も他の患者同様にMRIを撮ることになった(血液検査もされた)。
ちなみにMRIを撮る場合は、別で提携している検査センター(新宿、池袋など主要駅に点在している)へ自分で予約を取り、受けに行く必要がある。
正直1万円近くする検査費用は痛かったが、これで安心を買えるなら安いもんだと、今回はとことん調べてやろうと、そう意気込んで検査センターへ向かった。
その時は、なにか問題が見つかるなど思ってもいなかったのである。
しかし、その結果は僕の想定していたものとは大きく違った。

実のところ、心配が全く無かったわけではない。
もしかしたら脳動脈瘤くらいは見つかるかもしれない、とは思っていた。
脳動脈瘤…。
俳優の星野源さんもかかった病気、くも膜下出血を引き起こす、脳血管の風船だ。 
これが何らかの弾みで裂けることで脳内に血が溢れ、脳を圧迫、最悪、死に至る…。
なぜそんな予感がしていたかというと、10年ほど前に母親がくも膜下出血で倒れたことがあったからだ。
幸いにも後遺症もなく、今ではしっかり回復して仕事もしている。
そんな母も、くも膜下になる前から頭痛持ちで、よく寝込んでいた。
そんな母と同じように自分も頭痛持ちだったので、もしかしたら…という考えは、母が倒れて以来ずっとあった。
だが、違った。予想は外れた。

の左側の前頭葉に、白い影があった。

これは、いわゆる、脳腫瘍の可能性が高いのだという。
正直、受け止められなかった。
後々調べてみると、脳腫瘍になる確率は10万人に6人くらいとのこと。
そんな確率の病気に当たるくらいなら、宝くじでも当たって欲しいところだ。
自慢ではないがくじ運はそれほどよくない。
そんな自分が、こんな確率の脳腫瘍という病気になるなんて思えなかった。
だけど、診察室のモニターに表示された自分の脳には確実に、白い部分がある。
まだ確定というわけではないが、怪しいとのことだ。
僕は朝起きたときから頭痛があり、そこから夜までには消えることがよくあるが、それも脳腫瘍の症状と一致するらしい。
しかし正直、腫瘍の説明を聞いても、どこか他人事だった。
まさか自分がという思い。医者の思い過ごしなんじゃないか?確かに白い影はあるが、家系で脳腫瘍の人はいままでにいないはずだ…。

何にせよこの状況では確定できないということで、後日、精密検査で造影剤を使ったMRIを撮ることになった。
造影剤とは注射をうち、腫瘍をより見やすくするものらしい。
また検査か…。
必要なことなので仕方ないが、こんなことになるならば最初から造影剤を使って撮影してくれたら良かったのに…とも思った。そういうわけにもいかないんだろうけど。

余談だが、僕はMRIがあまり得意ではない。
若干の閉所恐怖症であるため、ふとしたときにパニックに陥りそうになる。
なので、基本目をつぶって、眠る。
しかし今回の検査センターのMRIは、撮影しながらなぜか微妙に土台が動くのだ。
そのせいで眠りから覚めてしまう。
うとうと→起きる→うとうと→起きる、を繰り返す。さらに造影剤ありの場合、撮影の途中で注射される。
かなりストレスが溜まるのである。

こうして、造影剤を使ったMRIを撮り、さらに診断してもらう。

「見間違いでした」とか「別の人の画像でした」とかあり得ないような言葉が出てこないものかと、意味の分からない期待をしていたが、医者からの言葉は変わらなかった。
僕の左脳には20㎜ほどの脳腫瘍が存在していた…。


その2へ続く。

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