「見た目」に縛られる女たち ーまえがきー

可愛くなりたい、細くなりたい、美しい顔が欲しい。この願望が常に私を支配する。『人は見た目が9割』という新書がヒットしたり、『人は見た目が100パーセント』というドラマが放映されたりと、人間関係における見た目の重要さはすでに建前抜きで一般に浸透しつつあるように見えるが、大体その中身は「周りの人によい印象を与えるために清潔感や言葉遣いやしぐさや服装といったノンバーバルコミュニケーションを大事にしましょう」という話であり、肩透かしを食らってしまう。

もちろん内面は表情や挙動といった外見ににじみ出る。それを含めて私たちが他人を判断するときの本音は「見た目が美しいか醜いか」それだけではないのか。そしてそれが顕著に表れるのが、男が女に視線を向けるときである。美を渇望する女性たちを客観的に見れば、「男にモテるため」と考えるのが自然ではないだろうか。女性は「選ばれる性」の性質を持つことはこれまでさんざん言われ続けてきたことであり、それを批判し世間に改めさせようと努力してきたフェミニストもたくさんいたわけだが、現在も女性はこの「選ばれたもの勝ち」の図式から抜け出すことはできていない。

どれだけ仕事で成功し社会的地位を得ようとも、容姿がよろしくない女は男たちから仕事の出来を褒められるどころか「色気のない女」と罵倒され(そもそも容姿が良くないと入社や出世において不利になる)、女からは「結婚できない女」という「負けの烙印」を押される傾向が続いているのは明白である。「モテるために生きてる!」をキャッチコピーに活動するタレント(自称・モテクリエイター)の菅本裕子がいま急激に若い女性の支持を集めているように、「この美への努力は男性に選ばれるためだ」と自覚的な女性は多い。しかし美を求め四苦八苦する女性たちが発信するSNSを観察していると、あまりにも悲痛な叫びが蔓延している。

女性にとっての美の目的は「男性に選ばれる」という単純なものだけではなく、女同士の関係や自意識が絡んだもっと根深くどろどろとした問題が潜んでいる気がするのである。私自身には、整形願望と痩せ願望が強くある。現在、私には無条件に褒めてくれる恋人がおり、社会的に見て「選ばれた」かのような立場にあるが、まったく心が満たされず、願望は強まるばかりである。では整形と痩せの先に、いったい何を見ているのだろうか。

そもそも、整形して痩せれば美が手に入るという思い込みはどこから来たのだろう。疑問を考えるにあたって複数の女性の事例を考察するために、テレビ番組や書籍のほかに3種類のSNSアカウントを扱いたい。化粧品やファッションやダイエットのような美容法の情報交換を行うために作られた「美容アカウント」、痩せたいあまり食欲をコントロールできなくなる摂食障害を患う女性が集う「摂食アカウント」、大金を費やし何度も整形を繰り返す女性の「整形アカウント」。彼女たちがここに紡ぐ言葉、そしてアカウント同士の交流の中に、女性と「美」との関係性のヒントが隠されているはずだ。いったい何を目的に美を求めているのか、どうして醜を厭うのか。そして、美しくなれば幸せになれるのか?それぞれの病を持つ女性たちの性質を観察し、比較し、その違いや共通点を洗い出すことで、考える。

女の武器は結局美貌?

マツコ・デラックスが『月曜から夜更かし』で男と女について語った動画がTwitterで2万6千回リツイートされ話題となった。下記はそのやり取りを文字に起こしたものだ。まずはこれを読んでほしい。

・・・

マツコ「世の男たちはブスか美人か分けるじゃない」

村上「まあー、そら男はそうなるよね」

マツコ「男はそうなるっておっしゃるけど、あなた、女の子が美しくなろうってしているのは全部男の目線がキッカケだからね。女の人同士ももちろんあるわよ。無いとは言わないけど、それだって、男というフィルターを通しての目線だからね。ほんとに純粋に女の子同士で、ってなったら、おそらく美人だったりおしゃれだったりこんなに男に媚びた方向には行ってない。ファッションだったり髪型だったりもっとみんなそれぞれがやりたいことがあるはずなのよ。でも怖くていけないのよ」

村上「でも中にはみんなと同じ風にしてない子の方がいいって男ももちろんいるからな」

マツコ「でもそんな数少ない男のために刈り上げる訳にいかないじゃない!男ばっかり見た目じゃない部分で自己主張するじゃない。男の方が財産持っててモテるし、女は財産持っていようがブスだったらモテないのよ!全っ部そこなのよ女の子って最後は!だからわかるのよ、ババアが抗って美魔女とかなんとか言ってんのも。」

村上「男としてはやで、お年召した方がそこまでやってたら、言いたいよ。いやちょっとー、きついっすわー!って。でもいうたらあかん雰囲気を醸し出してる部分もある」

マツコ「それはあなたたちが若い頃に、美人じゃなきゃだめ、美人ってのはこういうものだ、っていうのを刷り込んできた結果が惨状を産んでしまってる訳よ。だからそれはかわいそうだからやめてあげて。今まできれいになれ、こういう女になれ!って言ってて50になった瞬間にバケモノ扱いしたら!」

村上「それはわかるよ。じゃあ俺とかはどうしてったらいいのか、男が」

マツコ「ちゃんと男も、自分も成熟していく代わりにお母さんも愛せるようになってかないと。若い女と同じ姿の女房がそこにあると思ったら大間違いよ。ありがちじゃない、でも!男の人って自分はハゲ散らかしているくせにさ、女のことだけはアレコレ言うのよね!もう〜その前にお前がどうにかしろ!みたいな」

〜会場の女性、揃って頷く〜

村上「男が男じゃなくなるときってのはそういうときだと思うよ」

マツコ「それで女の人にもなんにも言わなきゃいいけど、自分はハゲ散らかしてクソジジイになってるくせに、女については言うじゃない!あれ図々しいよね。しょうがないんだよな、男は。長い歴史の中で男は権力、女は美貌。それが売りになって生きてきた長ーい歴史があるんだもん。男の最大の武器は権力でありお金よ。女の最大の武器は美貌よ。それを持ってれば社会的に強いと言われた時代があまりにも長すぎるから、どうこうならないよねすぐには。だから金と権力の無い親父は騒ぐなってことよ!」

〜会場、大拍手〜

・・・

ここまで男と女の見た目についてきれいごとを含まない会話を公共の場で聞いたことがあるだろうか。この会話が地上波で流されていたことに衝撃を受けた。男と女を俯瞰できるマツコ・デラックスだからこそ許される発言だろう。ここで語られた大きな問題は3つ。

1、男の武器は財産。女の武器は美貌。
2、女性の美の努力は元を辿れば男の目線のため
3、状況を変えるには男が変わる必要がある

この論文では、最終的にこれらに応答することを目標とする。そのために、まずは美に関する例を見ていきたい。


第1回へつづく


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ひらぴす

横国・人文┊︎キラキラ女子になりたくてしょうがない。ファッションメディア編集長┊︎メイクで見返すブログ中の人 ┊︎権力が欲しい!

女と若さ、美とわたし。

「女は存在しない。」 精神分析学者ラカンは言いました。 じゃあ、わたしってなんなの? ……いないのかもね。はじめから。
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