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シロップ

透明な色が好きだ。

香水瓶を手のなかでゆっくり傾けて、女色の水面が揺れるのを一日中見ていられたらいい。

あんず飴を屋台の氷から取り出しても溶け落ちることなく、いつまでも夕空に透かしていられたらいい。

幼い子がつけるヘアゴムの樹脂の苺飾りを、キャンディみたいに口のなかで溶かせたらいい。

いつか背伸びしたバーでアイスクリームにかけたメロンのリキュールをアクリルに固めて、キーホルダーにできたらいい。

ラベンダーの入浴剤を溶かしたお風呂で、いつのまにかぶどうゼリーのホルマリン漬けになっていたらいい。


涙に色があればいい。

一人ひとりの色があって、涙が出たときの感情の動きが色の濃さに変わればいい。
色はそれぞれ違うのに、心のフィルターに通されて、決まってどれも澄んでいる。


あの人の涙は、きっと青。

柔らかそうな髪の毛をきれいな金に染めていて、自分からは何も話さないきみは、窓際でいつもどこか遠くの空を見ている。

彼の瞳は毎日たくさんの青色を吸い込んで、いまにも滴り落ちそうだ。
一生のうちのたった一粒でいいから、わたしにくれたりしないだろうか。

彼の瞳からこぼれた涙はしずく型にぎゅっと固まって、トルマリンみたいにつやつや光る。

鉱石よりも透明で、ガラス玉よりも薄く儚いそのかたまりを

テグスに結んでネックレスにして、ふとした拍子にどこかにぶつけてしまわないように、服の中に大事に隠して、いつも胸元にいてもらえたら、
なんていいだろう。

この私がもし、一瞬でも彼の瞳に映ることができたら、なんて

そんな事を考えてしまう私は欲張りで、汚くて
そこから落ちるうつくしい蜜を濁してしまうに決まっている。

彼の青をもらうことが出来たら、それだけで満足すぎるはずで、それ以上を望むことなんてできるはずがないのに

本当のほんとうは、心の奥底では

私のと彼のとが同時にこぼれて、空中で重なり合って

澄んでいた青がほんのり灰に濁されたものが、欲しくてたまらないのだ。






※2016年に「涙」をテーマに書いたエッセイの再編集です。


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うれしいです。好きです。
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ひらぴす

横国・人文┊︎キラキラ女子になりたくてしょうがない。ファッションメディア編集長┊︎メイクで見返すブログ中の人 ┊︎権力が欲しい!

ヒラピスの妄想

ある国立大の女子大生がたのしく書いた文。得られるものは、あまりないです。私の見ている景色に「ふ〜ん」と思うくらいです。
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