幻灯片1

月間ユーザー数1億人!!中国版『ニコニコ動画』のビリビリ動画とは?

2018年3月28日、月間ユーザー数約1億人(2018年12月現在)の「bilibili動画」(以下「ビリビリ」に省略)は、アメリカのナスダックで上場を果たしました。

2009年6月に設立された、アニメなどサブカル層を中心としたユーザー向けの弾幕型動画サイトであるビリビリの特徴として、ユーザーの90%以上が30歳未満と、非常に若いプラットフォームであること、アニメやコスプレといった日本のサブカルコンテンツが好きな10代~20代の若者が、集中的に集まっていることが挙げられます。

こんな風に、非常にユニークなユーザー属性を抱えるビリビリですが、月間ユーザー数は、2014年から計68%の成長率を遂げ、リリースして9年経った今もなお、ユーザー数、年間30−40%増の成長率を維持し続けています。

もともと、ニコ動のパクリサイト、オタク系動画サイトと揶揄されていたビリビリが、振り返ると、月間ユーザー数約1億人、3000億円でナスダック上場と、元祖弾幕型動画サイトのニコニコ動画の4倍の時価総額規模まで成長したのです。

本Noteでは、ビリビリの成長の秘密を、ひも解いていきたいと思います。

画像1


1.動画サイトの王道:広告収益+有料会員

中国国家广电总局の調査によると、2018年時点にて、中国の動画サイトの総利用者数は計6億人に達し、8,000億円の市場規模に及ぶと言われています。

現在の、中国国内動画市場における主なプレイヤーは、このようになっています。

・腾讯视频(テンセント動画)
・爱奇艺(アイチーイー)
・YOUKU(ヨークー)

画像2

(左から、テンセント動画、アイチーイー、ヨークー)

こちらのプラットフォームの特徴として、

①ユーザー自身がコンテンツを作って投稿・閲覧をするYouTube的な用途

②バラエティやドラマ、映画等幅広い範囲で版権を獲得してユーザーに届けるNetflix的な用途

この2つが組み合わさっていることが挙げられます。さらに、自社でもバラエティー番組などの独自コンテンツの開発に積極的に取り組んでおり、そのクオリティは、年々進化しています。

画像3

(2018年に放映されたアイチーイーの自社制作時代劇。非常に高いクオリティーと、中国国内で大流行)

また、彼らのビジネスモデルは、【有料会員からの月会費収入】と【企業からの広告収入】によって形成されています。魅力的なコンテンツを自社プラットフォームに用意することで、多くの無料ユーザー会員を引きつけ、後に広告カットなどの特典を付加した有料会員(月額200−300円)にコンバージョンさせていきます。同時に、動画の前に、広告を流すことで、企業からの広告収入も得ています。YouTubeと同じ、動画メディアの王道の収益モデルですね。

ただ、中国系動画サイトのユニークな点として、動画前の広告の長さが、60~120秒もあることが挙げられます。もう、長い。めちゃめちゃ長い。笑 更に、スキップできない!笑 

こうなったら、ヘビーユーザーになってしまったら最後、もう有料会員になるしかないという、とても振り切った施策になっております…。(筆者も、図らずしも、上記3サイト、すべて有料会員契約をしてしまっていることに、書きながら気づいてしまいました、、、涙)


2.ビリビリは動画サイト業界の反逆児。独特なコミュニティーを形成し、文化の育成をとことん貫く

画像4

しかし、ビリビリは動画サイト業界のトレンドとは正反対に、ユーザーが動画を見るには、広告を一切流さない、という方針なのです。

さらに、新規ユーザーが会員になるには、他サイトのように課金するだけで入れるようにするのではなく、高いハードルを設置し、容易にプラットフォームのコミュニティーに入れるのを防いでいます。

高いハードルというのは、具体的にいうと、正式な新規会員になるには、以下2つのどちらかの方法が必要となります。

① 既存の会員に招待をされること。
② 数10問のサブカルに関する質問に答え、テストに合格すること。

既存の会員が友人にいなく、②を選択せざるを得ない場合、平均1時間かかると言われるテストに、真剣に望まなければいけません。そのテストの中身は、「雾雨魔理沙的口癖是??(霧雨魔理沙の口癖は??ちなみに答えは:DA☆ZE)」や「为动画《魔法少女小圆》中佐仓杏子一角配音的声优是?(マジカノの佐倉杏子を演じた声優は?ちなみに答えは野中藍)」といった、死ぬほど、マニアックな問題が問われます・・・!!

余談ですが、日本のアニメを、毎シーズン2つ必ずチェックしていた筆者でも、2年前に回答した際は、百度(中国の主な検索エンジン)やグーグル、友人に聞くなど、全ての手段を屈指し、2時間掛けてようやくテストを合格することができたのです・・・!涙

画像5

(ビリビリの公式キャラクター:22と33)

そして、当たり前ですが、テストに合格できなければ、入会はできません。勉強してから、再度受け直す必要があります。(笑)

敢えて、このようなハードルを設けることで、通常はユーザーがプラットフォームを選ぶのに対して、ビリビリは逆に自社の文化に適したユーザーを、厳しく選別しているのです。そうすることによって、サイト内のユーザーの質を担保し、投稿される文章や動画の質を間接的にコントロールしているのです。

このように、ビリビリは従来の「ユーザーの拡大と、営利追求のみを行う動画サイト」を超えて、新たな文化やコミュニティーを大切にする動画サイトとしての地位を築き上げることに成功しました。そして、サブカル好きなユーザーが、安心して、交流する居場所を作り上げたのです。

余談ですが、そんなビリビリの貢献も手伝って、中国サブカル市場はニッチを超えて、およそ50億円の市場規模を持つ、非常に注目される市場にまで育つことができたのです。(2017年時点)


3.他の中国系動画サイトに類をみない、ビリビリの斬新な収益構造

画像6

(ビリビリのトップ画面)

中国の動画サイトの定石として、まずは魅力的な既存コンテンツの版権を購入し、それを自社プラットフォームに置くことでユーザーを獲得します。そのような事情もあり、中国の動画サイトは、総コストの60~70%が、版権の購買費用で占められていると言われています。近年、中国では動画プラットフォームの増加によって、良質なコンテンツの獲得に対する競争が高まり、版権費用が高騰の一途を辿っています。そこで、広告をメインの収入源にするよりも、ビリビリは、アプリゲームを開発・運営することで収益を獲得するビジネスモデルに、舵を切りました。

現在、ビリビリの80%の利益はゲーム関連の事業から、産み出されているのです。

画像7

(ビリビリが製作した大ヒットゲームアプリ「Fate Grand Order」)

ビリビリがゲーム事業に焦点を当てた理由として、下記2点が挙げられます。

①差し込み広告のように、ユーザー体験を損ねることがないから

②プラットフォームのユーザー層とゲームのユーザー層の相性が良く、動画とゲーム事業間でシナジー効果を生み出すと睨んだから

自社ゲームの宣伝として、自社のプラットフォームで、活躍しているインフルエンサーに、ゲーム実況のコンテンツを提供してもらいます。そこで、自社と契約しているインフルエンサーの知名度の引き上げと共に、ターゲットとなるユーザーにゲームをPRし、ゲームユーザーを獲得するのです。

もちろん、あまりにも露骨なゲームの宣伝では、ユーザーから嫌悪感を抱かれるリスクがあります。プラットフォーム内でサブカルが好きなコミュニティーを形成し、自社ならではのピュアな文化を作り上げることが、ビリビリの長期的な目標であるため、リスクを取ってまで過度な商業主義に走るよりも、自らの文化を守ることに優先順位を置くという価値観を、貫きました。それ故に、直接ゲームの内容を宣伝するというよりも、インフルエンサーたちが、皆でわいわい楽しくプレイしているところを動画に入れたりすることで、「広告らしくない広告」を実現させました。

ユーザー体験を損ねることなく、収益化させるよう、非常にきめ細かく気を配っているのです。

画像8

(ビリビリのサイト内において自社ゲーム「Fate Grand Order」のPR
コンテンツ一覧)


4.ビリビリの今後の課題と展望

2018年3月にナスダックに上場してから間もなく、ビリビリはテンセントと戦略提携を結びました。テンセントといえば、時価総額世界9位の強大IT企業であり、近年、中国国産のコンテンツ、特にアニメに関して、様々な投資を行ってきました。

今までのビリビリの方向性としては、ユーザー体験を優先するために、広告を最小限に抑え、ゲーム事業の収益比重を敢えて大きく取ってきました。

一方で、2018年3月以降、中国国内では、アプリゲームに対する政府の規制が徐々に強くなっており、ゲーム業界はかつてない厳しい状況が続いています。

そのような現状から、ビリビリ経営陣は、今後はゲームに収入源を依存するのは、大きなリスクになると判断しました。

そこで、短期的にはテンセントと協業し、版権をシェアすることでコスト削減をしながら、事業の多角化および収入源の分散化を進めることが、今後、ビリビリが更なる拡大・発展を遂げるための必要不可欠なキーファクターとなります。

一方で、ビリビリの個性でありながらも、商業化において足かせにならざるを得ないのが、ユーザー層が非常に若い(90%以上が30歳以下)という点です。ユーザー層が若すぎると、課金がしにくく、広告案件として採用できるジャンルも限られてくるからです。

よって、例えば、同じように若いユーザーがメインのプラットフォームとして認知されているTik Tokも同様の問題を抱えていましたが、ユーザーの年齢層の引き上げに、非常に力を入れています。

その結果、2018年2月では18−24歳が一番のメインユーザー層でしたが、半年後の2018年10月には、24−30歳の層が一番のメインとなり、短期間で大きなリフトアップに成功しています。

しかし、ビリビリは、サブカルメインというプラットフォームのカルチャーの性質上、TikTokよりも、ユーザー層の拡大や平均年齢の引き上げは容易ではないでしょう。非常に根本的な、根深い課題なのです。

その課題を如何にクリアして、強固で安定的な収益ポートフォリオを築けるか。

引き続き、ビリビリの今後に注目していきたいと思います。


サポートいただけたら、スライディング土下座で、お礼を言いに行きますーーー!!!(涙)