華僑心理学 No.5 なぜ、中国ではLINEが使えないのか

こんにちは、こうみくです!

先日、中国に旅行に来た友人から「中国に旅行に来たら、LINEが使えなかった!Googleも使えない!不便!あり得ない!」と、大変ご立腹のメールをもらいました。


ご存知の通り、中国では、通称Great Fire Wallと呼ばれる情報規制を行っております。そのために、LINEやGoogleだけではなく、世界で流行しているWebサービスのほとんどが使えません。

●中国で使えないWebサービス一覧(2018年9月現在):
Google、Yahoo、Twitter、Facebook、Instagram、LINE、Youtube、Slack

これらのサービスが使えないとなると、海外からきた旅行客やビジネスマンには当然、非常に不便と不評です。中には、こんな意見もあります。


そして、「ここまで情報規制をするなんて、北朝鮮のようだ!思想統制だ!」という声もあります。

そんな世界中からの反発を買ってまでも、中国政府が外資インターネット企業を厳しく規制した理由について、今日は解説していきたいと思います。


(1)外資WEBサービスを規制する意図 その1:政治的批判の拡散を防ぐため


中国は日本のように、言論の自由が認められていません。そのために、いくつかの政治的批判を連想させる特定のワードに関しては、検索しても、不自然なほど情報が出てこないといった情報規制を行っています。また、インターネット全般で検閲をしており、SNSなどに政治的批判を書き込むと、瞬く間に消されたり、最悪逮捕されたりすることもあります。2010年にGoogleが中国本土から撤退を余儀なくされたのも、中国政府から検閲を要請されたことを、Google社が自社の理念に反するとの理由で拒否したからでした。

「言論の自由も許さないなんて、中国政府は器が小さいな~」

日本に住む我々からすると、このように感じる方々も多いかもしれません。


一方で、中国には、そうせざるをえない事情があるのです。
たとえば、日本では安倍政権に対する不満を叫んだところで、クーデターや内戦が起きるといった事態にまで発展する可能性は、ほぼありえません。一方で、単一民族の日本と違って、人口総勢14億人、内1割が少数民族で占める中国では、政権に対する不満が一度着火すると、大規模な独立運動といった、収集がつかない大ごとになるリスクがあります

そのような事情もあって、中国政府としては、国内の政治的不満の声を拾いやすい&拡散させやすいインターネットに対しては、必ずコントロール下に置きたい、という考えがあります。

この点、政治的批判の拡散を防ぐために、インターネットに規制を掛けようとしている国は中国だけではありません。近年、アフリカの幾つの国々では、政府批判を規制するために、インターネットの利用に税を課すという法案が出てきているのです。

つい最近も、2018年9月16日にベナン共和国の政府が告知なしに急遽SNS税の実施を決行し、国内で大混乱が起こりました。(そして、国民の大ブーイングを受けて、3日後に撤回しました。)

①インターネット自体に課税する → 国民全体の使用頻度を引き下げる → 規制
②外資のWEBサービスを規制 → 国産のWEBサービスの利用を促し、監視 → 規制

という2つの手段の内、中国政府が②を選んだ理由は、インターネット産業そのものに、経済効果や新たなビジネスの可能性が眠っていると認識しているからです。

そのことについて、次の章で詳しくお話ししていきたいと思います。


(2)外資WEBサービスを規制する意図 その2:自国産業を育てるため

現在、中国のインターネット企業といえば、BATと呼ばれる中国の3大巨塔が挙げられます。

B:Baidu :   検索エンジン、中国版Google
A:Alibaba: EC、中国版Amazon
T : Tencent:     SNS、中国版Facebook&LINE


これらの企業は、徐々に国際市場に出てきているものの、中国国内マーケットを主戦場としているため、日本に住む皆さんは、あまり馴染みがないかもしれません。しかし、その規模感を見てみると、如何に巨大なのか、お分かりいただけるかと思います。

特に、中国版Facebook & LINEであるメッセージアプリWechatを展開するTencent社は、2018年1月に一時Facebookの時価総額を追い抜いたと、大変話題になりました。

現在、Wechatは11億人のユーザーを抱えており、顧客データと連動したQRコードによるスマホ決済サービスを展開しています。ジャック・マー率いるAlibaba社も、同様のスマホ支払いサービスを展開しており、中国全土で爆発的に拡大しています。

このスマホ決済サービスは、技術力、規模感、普及率のどれをとっても世界トップレベルであり、「フィンテックのペイメント領域と言えば、中国」と言わしめる基盤を築きました

前章でも示したように、単純な情報規制を行いたいのであれば、インターネットやSNSの利用に課税する、もしくは完全に禁止する等、他にも手段はありました。その中で、中国政府があえて、インターネットの利用自体を制限せずに、GoogleやFacebook、Amazonといった外資企業を厳しく規制するという手段を選んだ理由は、世界で通用する自国の企業を育てる上げるためなのです。

そして、見落とされがちですが、実はインターネット産業だけではなく、通信、金融といったインフラ産業全般において、中国政府は外資の参入を厳しく制限しています。その理由としては、社会の根幹を担うインフラは、一度普及してしまうと、経済の伸びと共に勢いを伸ばす一方で、あとから止めることが出来なくなるからです。

例えば、日本に住む我々は、FaecbookやTwitterがない、mixiだけの世界には戻れないと思います。同様に、今さらAmazonがない、楽天だけの日常にも戻れないでしょう。今後、ECは、オフラインショッピングの代替手段を超えて、消費のインフラとして更に普及していくはずです。それに伴って、日本の小売市場におけるAmazonのプレゼンスも伸びる一方でしょう。すると、日本の小売市場をめぐる資金は、Amazonという外資企業を通して、どんどん外国に流れてしまう構造となります

14億人もの人口を抱える中国は、マーケットの大きさが自国の一番の魅力です。それにも関わらず、市場を開放して自由競争を可能にしてしまったら最後、外資系企業に自国市場を牛耳られてしまうことを、政府が予見したのです。言い換えると、数年前、まだ自国の企業が育つ前に、FacebookやGoogleといった外資の大企業の参入を許してしまうと、自国の発達途上の企業が競争に勝てず、彼らの芽を早々と摘いでしまうでしょう。そうならないために、政府は特にインフラ産業では、外資系企業に厳しい規制を掛けたのです。「時間が掛かっても、自国のインフラ産業を、丁寧に、育て上げていこう」という戦略を選んだのです。

その結果、中国ではITインフラを担う企業、金融インフラを担う企業、エネルギーインフラ企業が、それぞれ世界の時価総額ランキングにランクインするまで育ちました。

社会の血液となるインフラ事業においては、例え、一時的に国民に不便を強いることになっても、国際社会に鎖国と笑われて反感を買っても、時間が掛かっても、自国の企業を優遇して、丁寧に育てていく。そのような中国政府の確固たる意志が、外資規制の実行に至った、もっとも大きな理由なのです。


(3)外資WEBサービスを規制する意図 その3:アメリカに対する強いライバル意識


そして、上記2つの理由とは別に、感情的な理由もあると、筆者は考えています。

まず、中国はアメリカに対して強い憧れを抱いています。お金持ちはこぞって、子息をアメリカに留学に出したがりますし、ハワイやサイパンは、皆が憧れる旅行先です。ここまでは、日本とも通ずる感覚なのではないでしょうか。

一方で、「アメリカは素晴らしい。そして、日本も素晴らしい」という日本人の感覚に対し、中国人は、「アメリカは素晴らしい。でも、いつか絶対に追い越してやる」という、非常に強いライバル心を持っています。

〇中国のスマホメーカー(Huawei、Oppo、小米):
「アメリカのアップル素晴らしい、美しいスマートフォンを作った。我々も、模倣からスタートして、いずれ、彼らに匹敵するような商品を作れるように頑張ろう」

〇中国のEC(アリババ):
「AmazonもEbayも素晴らしい。中国は、彼らのようなサービスを展開しようとしても物流も支払いもユーザーのモラルも追いついていない。では、ビジネスモデルを変えて、追いつく方法を考えよう」

〇中国の一般市民:
「アメリカは教育が最先端だ。子どもたちを留学に出して、そのノウハウを学ばせて、中国に持ち返させよう」

このように、今はまだ勝てないが、いつか、絶対に追い抜いてやる、アメリカには絶対に屈しないという中国の強いライバル心が、アメリカ発のIT企業に対する風当たりの強さに影響していると感じています。


(4)日本が中国に抱くライバル心を、中国人は理解できない

中国がアメリカに強いライバル心を抱いているのと同様に、日本は中国に対して強いライバル心を抱いています。

先日、2018年9月3日に、習近平国家主席が中国・アフリカ協力フォーラムで、「今後3年間において、中国はアフリカ大陸に対して、合計6兆6000億円の経済援助を行う」という発表をしたとき、筆者の周りのアフリカ関連の仕事をしている多くの日本人から、中国に対して脅威を感じる声が上がりました。

「アフリカにおける、中国のプレゼンスがさらに強くなるんじゃないか…」

「日本も存在感を出せるように、ますます頑張らないと…」

この事実を、中国人の友人に言うと、大変驚かれます。

「アフリカの多くの国々は、英語とフランス語を公用語にしているように、欧米勢のプレゼンスが圧倒的に強い。彼らに対して、日本と中国は同じアジア勢であり、同じ挑戦者の立場。それなのに、なぜ日本は、欧米ではなく隣国の我々に対してライバル心を燃やしているのだろうか?

そこで、少し言いにくいけれども、日本と中国を一括りに語られることに抵抗感がある日本人が多い、と筆者が伝えると、

「アジア人から見ると、フランス人とドイツ人は、ほとんど見分けつかない。それと同じように、アフリカ人から見れば、中国人と日本人は見分けがつかないのは当たり前。抵抗あろうがあるまいが、地域として、アジアという一括りで語られるのも至極当然じゃないか」

と、引き続き、不思議そうに返されます。更に、日本から見ると、アメリカは精神的距離が近いためにライバル心を抱きにくいと伝えても、あまり理解されません。これは、中国人の伝統的な中華思想の中に「地理的距離が近ければ近いほど、価値観や仲間意識も強いはず」という価値観があるため、日本が隣国である自分たち(中国)よりも、アメリカの方に精神的距離が近いと感じるという感覚が、ピンときにくいからです。

このように、中国はアメリカに強烈なライバル意識を持っている一方、中国は日本に対して「同じ、アジアの仲間の一員」という感覚をもっています

今年のワールドカップでも、この感覚を強烈に実感しました。

中国チームは、早々に予選敗退しましたが、北京市内のバーでは、日本戦がある日には、日本ユニフォームを着る若者で、連日溢れかえっていました。そして、Youkuと呼ばれる中国最大の動画サイト(Youtube的な存在)では、「日本はアジアの星だ、頑張れ!!」、「俺らの仇を取ってくれ!」といったコメントが殺到しました。

日本の勝利に対して、全中国が、狂喜乱舞したのです。


<本日のまとめ>

中国がアメリカ発のインターネット企業を規制する理由は、下記3点。

1.政治的な批判の拡散を防ぐため。

2.時間をかけてでも、未成熟な自国企業を育てるため。

3.アメリカに対する強いライバル意識があるため。

中国がアメリカに対してライバル心を抱いているように、日本は中国に対してライバル心を抱いている。一方で、中国人は日本をアジアの仲間の一員と感じており、互いの認識に相違あり。

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